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私の辞書に授業料という文字はあっても浪費という文字は無い。
これっぽっちも無駄遣いの自覚が無い。ちっとも反省しない。愛の言い訳コーナー、それが 私的素敵頁。
シリーズ化している鉄カメラと銀塩フィルム。前回のカラーネガフィルム現像に引き続き、今回はモノクロ現像です。
自称、積極性ものわすれ外来。自分に不都合なことを積極的に忘れますが、近年はトシのせいか大事なことや基本的なことも意欲的に消去します。
備忘録のつもりですが、これから始めたい方の参考になればコレ幸い。
黒白ネガフィルムの現像ではフィルムのメーカーや感度(ISO)が変わると現像時間が変わるのがポイント。
カラーネガフィルム現像みたいにどんなフィルムでも温度固定なら現像時間は同じというわけにはいかんのです。
※ 各種現像液・定着液等の作り方は商品パッケージに記載どおりで良いのですが、道具類も含めてこまかいコトは補足編のページで説明しています。
● 白黒フィルム現像の概要
さて、モノクロネガフィルムの現像方法です。ざっくりいえば、
但し、現像を始める前に水洗いする人もいたりして、茶の湯のごとく流派や人によって手順や作法が異なります。
水洗い前後のオプション作業をリンスと呼んだり仕上げと呼ぶ人達もいます。アレンジ版も多数存在します。
ここではワタクシ独自の鶴虎裏千家流でいきます(ほぼ最後までリールに巻いたまま作業する)。
まずは全体の流れをわかりやすくするために、定番ともいわれるフィルムと現像液と温度で説明します。
他社の薬液類については補足編を参照されたし。
フィルム:コダック社 トライエックス400TX (白黒ネガフィルム 感度ISO400)
現像液:コダック社 D-76 1:1希釈 20度で使用
停止液:アドックス社 アドストップ 1:19希釈(無くてもよい。水道水だけでも代用可)
定着液:デジタルトゥルース社 エコプロ ニュートラルフィクサー 1:4希釈
水洗促進剤:富士フィルム社 QW 1袋+2L希釈(無くてもよい。30分水洗がモッタイナイ場合に使う)
水滴防止剤:富士フィルム社 ドライウエル キャップ一杯+2L希釈 (無くてもよい。スポンジでも可)
(0)準備:容器や道具を揃え、現像液、停止液、定着液などを調合しておく
(1)撮影済みのフィルムをダークバッグでリールに巻いて現像タンクに入れる
(2)洗面所のシンクに水を張り氷またはお湯で20度にする。現像液をボトルごと20分浸ける。
(3)現像液を現像タンクに注ぎ撹拌する。9分45秒で現像液をボトルに戻す。
以降は20度に保つ必要は無い。
(4)停止液を現像タンクに注ぎ30秒から1分間 軽く撹拌。停止液をボトルに戻す。
(5)定着液を現像タンクに注ぐ。たまにかきまぜる。5分で定着液をボトルに戻す。
(6)現像タンクからフィルムを出してリールのまま1分から2分程度シンクで水を溜めて流しながら洗う。
(7)水洗促進剤にリールのまま30秒から1分浸す。水洗促進剤をボトルに戻す。
(8)フィルムをリールのまま3分から5分間 シンクで水洗い。
(9)シンクの水の中でリールを分解し、フィルムを取り出して水滴防止剤に30秒から1分浸す
(10)水滴防止剤から引き上げ、拭かずにフィルムクリップで挟んで吊り下げ半日乾かす
※ もちろん暗室は不要です。ダークバッグだけで充分です。
● 現像のくわしい手順と説明:鶴虎裏千家流
(1)撮影済みのフィルムをリールに巻いて現像タンクに入れる
フィルムが露光しないようにダークバッグ(チェンジバッグ)内でフィルムをリールに入れる。できれば部屋の灯りも薄暗くしておく。
現像前に水で洗う前浴は不要。
しかし、可能な限りフィルムの現像ムラを防ぎチリやホコリを洗い出して現像タンクとリールを20度になじませる目的なら、やってみるもヨシ。
現像タンクがプラスチック製の場合は、静電気でチリやホコリがたくさん付着するのでブロワーでこまめに吹き飛ばしておく。
フィルムの先端の片ベロは真っ直ぐに切ってからリールに挿していくほうがトラブル防止になる。
白い樹脂製のリールはオートリールと呼ばれ、フィルムの端をリールの入り口に挿しておき、リールの片方を3cmぐらい前後に往復させれば、フィルムは勝手にリールの奥へ奥へと入っていくスグレモノ。
※ 慣れないうちはテストフィルムで練習する。それは流派を問わず鉄則
※ 樹脂製オートリールでフィルム詰まりや咬んでしまう場合の対処法は、補足編またはカラーネガ現像記事を参照
※ 120フィルムは裏紙とフィルムを接着してあるテープを注意深く剥がすべし(またはハサミでカット)
※ 16mmフィルムや特殊な場合はカメラごとダークバッグ内に入れてフィルム装填やリール巻きを行うほうが良い場合もある
※ 初心者の場合は、立って腕を下げて作業せず椅子に座ってテーブルの上に両ヒジがある状態で(手首を上げたほうがうまくいく)
(2)洗面台のシンクに水を張り、氷もしくはお湯で20度にする。
季節や室温によってシンクの水温は20度より多少低めでも高めでも良い。夏は低め、冬は高め。
前もって作っておいた現像液をボトルごとシンクへ20分以上浸ける。ここでは D-76の1+1希釈現像液。
このとき停止液は容器のフタを開いて右側に準備しておく。
鶴虎裏千家では洗面台の右から左へと作業が進行するので、基本的には次の薬液を右側に置くことにしている。
(3)現像
ざっくり言えば、フィルムに塗られている乳剤から銀の成分の像を浮き出させる作業。
現像液を現像タンクに注入してかきまぜる。
最初の30秒間は連続的に攪拌し、その後1分毎に10秒間の攪拌。厳格でなくともよろしい。
手首を左右に傾けて振るもよし。タンクに付属の撹拌棒で左右に往復回転させて撹拌するもよし。
カラーネガフィルムの現像では現像タンクをひっくり返すが、白黒ネガフィルムではその必要は無い。
かきまぜないときは現像タンクをシンクの水に浸しておく。
注入開始から9分45秒後に現像液を元のボトル(容器)へ漏斗で戻す。
※ ここでいう9分45秒はフィルムがコダック社の400TXで現像液がコダック社のD-76の1+1(1:1)希釈 液温20度の場合
※ 現像液がエクストール(XTOL)の1+1希釈現像液で 20度 であれば現像時間は 9分 ちょうど
※ フィルムメーカや銘柄、ISO/ASA感度、現像液の温度や希釈度、などによって現像時間は異なる
※ 現像液を繰り返し使う場合、徐々に現像能力が低下していくので現像時間を5%割とか10%のように延ばしていく
※ 慣れてきたら水温は常温で測って、フィルムや現像液のデータシート/レシピを元に現像時間(または濃度)を変更すれば氷やお湯は要らない
但し、当流派ではいつも条件を揃えてあとで比較できるように基本20度で現像している
(4)停止
現像液の化学反応を時間どおりに止めるための処理。
現像液の多くはアルカリ性であるため、中和させるべく弱酸性の液体を入れる。
市販の停止液は使わず水道水を使う人もいる。停止の作業そのものを不要とする流派もある。
水道水または停止液を現像タンクへ注入して適度に撹拌する。テキトーでよい。てげてげでよか。
約30秒から1分程度経過したら現像タンクから停止液を元のボトル/容器へロートで戻す。
※ この間に使用済みの現像液にフタをして片付け、ロートをシンクでさっと洗い、右側に定着液を準備する。けっこう忙しい。
※ 現像を終えたあとは温度計は不要(以降は20度に保つ必要は無い)
※ 時間を計るにはキッチンタイマーが使えるが、加算式であれば途中でリセットせず放置して作業ごとに加算分を読み取ってもよい
※ 初心者の場合は作業ごとにタイマーをリセットする余裕は無い ... ハズ ... 加算式を推奨
(5)定着
ざっくり言えば、浮き出た像が消えてしまわないように固着させて安定させる作業。
前もって作っておいた定着液を現像タンクに注ぐ。
注入直後に30秒ほど軽く撹拌。あとは1分おきに軽い撹拌でよい。
鶴虎裏千家では定着液ニュートラルフィクサーはどんなフィルムも5分と決めている。
待っているあいだに右側に水洗促進剤を準備。
5分後に現像タンクから定着液を元のボトルへ漏斗で戻す。
このあとの作業は明るい場所でOK.
定着を終えたあとにフィルムに白い影や雲のようなものが残っていたら、もう一度定着液に浸けて1分ほど待つ。
※ 現像液も停止液もそうだが薬液を現像タンクに入れるときはムラを防ぐために、モタモタせずとっとと注ぐ
※ 定着液にはせっかち型とのんびり型があり、せっかち型は2分から5分、のんびり型は10分程度が一般的
※ 今回使っているニュートラルフィクサーはせっかち型(迅速定着液)
(6)水洗い
定着液が残っていると後にフィルムが傷みやすくなるためキレイに洗い流す作業。
シンクに水を溜めて蛇口から水を流しつつ、シンクの底蓋を少し開いて排水するのが鶴虎裏千家流。
定着を終えた現像タンクからリールのまま取り出して1分〜2分間洗う。
ここでの水洗いは次の行程の水洗促進剤を長持ちさせるためなので、時間に厳格でなくてよい。ざっとで良い。テキトーでよい。
※ この間に定着液のボトルを片付け、水洗促進剤を左に準備する
※ 温度計も片付け、リール以外の現像タンクの容器やフタなども洗って片付ける。けっこう忙しい。
※ 前もってリールの入るサイズの1リットル程度の容器(計量カップ等)を準備しておく。
(7)水洗促進剤に浸す
昔は水道水をチョロチョロ注ぎながら30分ぐらいフィルムを洗っていた。水と時間がモッタイナイ。
そこで、薬品のチカラを借りて表面のヌメリを素早く除去する、という時短な薬剤。
リールにフィルムが巻かれたままの状態でQW液に浸ける。リールを少し動かしてなじませる。
ここでは水洗促進剤は富士フイルム社のQW(薄青色の液体)を使うが、他社製でも使い方はほぼ同様。
30秒から1分ぐらい浸す。てげてげでよか。
※ この間に洗面台に張った水は汚れているのでいったん抜き、新鮮な水道水を洗面台のシンクへ注ぐ。けっこう忙しい。
(8)水洗い
フィルムの入ったリールをQWから引き揚げてシンクで水道水を流しながら3分から5分程度洗う。
7分とか8分洗っても罪を問われることはない。
リールを手で反転させながら水道水を注いでジャブジャブ洗う。シンクの底ブタを少し開いたままも良し。
水洗促進剤QWを元の容器へ漏斗で戻して片付ける。
この作業をしながら計量カップをシンクで洗って水滴防止剤(水切り剤)を準備する。
右手と左手が別の作業をするので、けっこう忙しい。
(9)水滴防止剤(水切り剤)
フィルムに水滴が残るとシミになるので、水滴を除去する処理である。
シンクの水の中でリールを分解してフィルムを広げて像を確認する。
この瞬間がドラマチックでたまらんのだ。
自家現像をやっていてヨカッタと感じるシアワセな時間。逆にここで像が出ないと地獄。
ココで使う水切り剤は富士フイルム社製のドライウエル。他社製の水切り剤もほぼ同じで30秒から1分ほどひたす。
待ってるあいだにタオルかキムワイプで手をよく拭いてフィルムクリップを用意する。けっこう忙しい。
※ 水切り剤を使わず、拭き取りスポンジやスキージを使う場合は次の(10)で吊して優しく水滴を拭き取る
※ リールの分解は左右どちらかを3cm以上時計方向へ少し力を入れて回す
※ 水滴がクリップからフィルムに垂れないように利き手はよく拭いておく
(10)乾燥
水切り剤から引き揚げてフィルムクリップで挟み、浴室につるして乾かす。
乳剤はなかなか乾かないので、できれば24時間、少なくとも12時間以上乾かす。
エアコンが効いていたり、冬期など乾きやすい環境でも6時間以上乾かす。
というわけでひととおり説明 ... オワリ。
● 仕上がりは現像時間と液温以外の要素でも変わる
以前に記事を書いたカラーネガフィルムの現像では、フィルムのメーカーや感度(ISO)にかかわらず現像時間は液温39度で3分30秒でした。
つまりフィルムのメーカーや種類や感度のことは深く考えなくても良かったのです。
ところが、白黒フィルムはフィルムのメーカーやタイプや感度(ISO)が変わると現像時間が変わります。
ここがカラーネガフィルムの現像と比べると決定的に面倒なのです。
※ カラーネガフィルム現像でも温度や現像時間を変えることは不可能ではないが本来C-41処理は自動現像機の迅速現像用
現像液の温度を低くすると現像時間が長くなり(粒子は細かくなる)、現像液温度が高ければ現像時間は短くなります(粒子は粗くなる)。
また、現像液がヘタっていたり薄めてあったり液温が低かったり現像時間が短かめなときはコントラストが低くなります(逆ならコントラストが高くなって明暗がキツイ絵になる)。
※ 浅め(現像時間が短めとか薄めに希釈とか)に現像すれば、あとから画像処理ソフトの補正でなんとかなりますが、深め(現像時間が長めとか原液とか)で現像するとコントラストが強くなって補正は困難です。迷ったら浅め現像というのが鶴虎裏千家流。
様々な要素の条件によって結果も複雑に変わる ... それだけ調整の幅があるということでもあります(#ポジティブ指向)。
フィルムと現像時間の関係は、例えば現像液の取扱説明書やラベルに書かれていたり、フィルムメーカーや現像液メーカーのホームページに書いてあります。調べるのに多少の手間がかかります。
が、しかし ... ちゃんとあるんです。Web上のモノクロフィルム現像のデータベース。
現像レシピサイト! さすが21世紀。
デジタルトゥルース:https://www.digitaltruth.com
検索例はこんな感じ:フィルム:Kodak Tri-X 400 現像液:D-76 の場合
各社のフィルムの種類や感度の違い、現像液の種類や希釈度や温度の違いによるレシピを調べることができます。
激しく素晴らしい。ヤバイ! (←良いほうの意味)
便利な世の中になったもんです .... 遠い目。
Dilution:希釈度 stok:原液 notes:条件付き
しかし、得体の知れない古楽器、... ぢゃなくて、ン十年物の長期経年放置の古フィルムとかはどうすればいいのか?
あるいは探しても現像時間のわからないフィルムもあります。
そんなとき、私は D-76 1+1希釈現像液 液温20度で「迷ったら8分」と現像時間を決めています。
広範囲にいえば大失敗は回避され、なんとかなる程度には現像できます(あるいはもっと希釈して現像時間を延ばすもよし)。
● 薬液の寿命と使い回し
1回限りの使い捨てが理想:貴族や富裕層にはこれを推奨。
私のような小市民は5回や10回は平気で使い回して、やったぜ! これで15巻めだ。どうだ! なんて思ってます。 ←バカ!
現像液:一般的な35mmフィルム(135フィルム)で5本〜10本ぐらいまで(徐々に現像時間を長くして現像)気分にもよる。
停止液:約2ヶ月とか4ヶ月おきに作りなおす。そもそも水でも良いのだから面倒なときは1年ぐらい使い続ける。気分にもよる。
定着液:35mmフィルム10本まで。もしくは2ヶ月。気分にもよる。
水洗促進剤:定着のあといきなりQWではなく水洗してからQWしているので5〜10回ぐらいで更新。もしくは1ヶ月〜2ヶ月。気分にもよる。
水滴防止剤:35mmフィルム5本〜10本で更新。もしくは1ヶ月〜2ヶ月。気分にもよる。
※ 現像・停止・定着液は1リットルで調合するのが個人的には使い勝手が良いと思っている。サブミニチュア16mmから大判4x5inchぐらいまで使える。
※ 薬液のヘタリ具合を色でわかるようにした製品も多い。慣れてくれば各薬液の濁りや透明度や仕上がりの変化で疲労がわかるようになる。
1922年頃に製造された 6.5 x 9cm のガラス板に感光乳剤を塗布した乾板式写真機
ドイツ オリオンワーク社のモデル HANNOVER Rio 15B
その後、PLAUBEL社やRADA社、HAKUBA社などのホルダーが対応したため、120フィルム/ブローニー判で6x9にて現在も撮影可能ORIONWERK AktGws. HANNOVER Rio 15 B
Lenz : C. Friedrich. Munchen. Corygon-Anastigmat F6.3 10.5cm
Film : ILFORD HP5+ ISO400 B/W Negativefilm Xtol 1+1希釈現像液 20度 11分 現像液は再利用5回目
● 現像薬液・薬剤探しの注意とヒント
フィルムにランプの光を照て引き伸ばし機で印画紙に像を焼き付ける、いわゆる紙焼き/プリント専用の現像液やら定着液が売られています。
例えばコダック社の白黒プリント用の現像液でいえば代表的なD-72やデクトール。
しかし、白黒ネガフィルム用の現像液や定着液を希釈してプリント/印画紙に使うこともできます。
言い換えるならば、どうしても印画紙現像用の薬液しか手元に無い場合は、現像時間や温度を工夫してフィルムの現像も可能です。
フィルム用の薬液を買おうとして検索すると、たいていフィルム用と印画紙用(プリント用)がごちゃ混ぜになって現れます。
しかも電子基板のエッチング用とか医療用レントゲン等の特殊な薬液やら、余計なものも含めて検索されてしまうので注意が必要です。
【現像液】英語ではデベロッパー/Developerと呼ばれ、製品名の最初にDがついていたり最後が ●●●トールの表記が多い
【停止液】英語ではストップSTOPとかバスBATHとかストップバス(←バス停ぢゃないよ)
【定着液】英語ではフィクサー FIXERとかフィックスFIXと書かれる。迅速定着液なら約2分から5分、のんびり定着液は約10分
【水洗促進剤】英語ではハイポHypoと呼ばれる。昭和の禁煙パイポではない。クリアとかウォッシュともいふ。
【水滴防止剤/水切り剤】製品名ではフロ/Flo と付くものが多い。温泉や銭湯ではない。
また、同じような名前が付いていて、わずかに何だか違うような? そんなこともよくあります。
同じ名前なのに新しい製品では E が付いているだけとか。
例えば定着液を探していて、フィクサー(Fixer)とラピッドフィクサー(Rapid Fixer)はどう違うの? なんてこともあります。
必ずしも日本語でエコ製品とか迅速定着液である旨の説明が記載されていません。
ネットショップにおいても、商品名のほかは一切の説明が書かれていないことはよくあります。やる気の無さがにじみ出ています。
入門者/初心者のことなんか考えていませんな。
写真業界に限らず、次の世代のことを考えない文化は衰退するのです。
(例)FUJIFILMのパピトールとコレクトールとプロドールはどう違うの?
パピトール(黒白印画紙用現像剤)
コレクトール(黒白印画紙用 高能力現像剤)Eは環境に優しい
プロドール(黒白フィルム小型タンク用現像剤 )
● 増感現像/減感現像
プッシュプルとも呼ばれています。
モノクロネガフィルムのうちTry-X 400 をはじめとするいくつかのフィルムでは、現像時間を長くすることで感度を上げることができます。
フィルムの箱にISO/ASA 400 と書かれていても、ISO 800とか 1600とか3200 のフィルムとして撮影できるのです。
天文/天体写真系の世界ではおなじみ。
その逆に感度を下げて使うこともまた可能。
フィルムメーカーの公表している現像レシピやデータシートを見るとそれが確認できます。表記どおり現像すれば良いのです。
コダック社のフィルムTry-X 400(400TX)の基本は ASA/ISO 400ですが、50から3200で撮影・現像も可能です。工夫すればさらに幅広く。
カラーネガフィルムではそう簡単にはいきません。
白黒ネガフィルムは歴史的かつ伝統的であるがゆえに、先人達の知恵が蓄積・伝承されており、さじ加減ができる世界です。
ロコツにアナログな手加減ができるのですが、あくまでそのフィルム特有の性格を超えることはありません。
つまり、フィルム選びもひとつの手段であり表現/技法であります。
※ 増感現像は、実際に撮影された時の露出より仕上がりを明るくする現像手法です。現像が終わったフィルムをプリントしたりスキャンする時点で明るめに仕上げることは可能ですが、暗めの露出で撮影されていた場合、スキャン時/プリント時に露出を上げるよりも現像時に増感現像を行った方が仕上がりが良い傾向があります。
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ぃえのぅ〜♪ しぃまぐぁ〜〜♪ みぃえてぇきぃたぁ〜〜♪ おぅれぃのい〜えもぅ〜ちぃかぃい〜〜♪ (←桑田佳祐風に読む)
● 廃液処理とフトコロの不都合な真実
写真現像の廃液処理 ... 現実的にいえば居住地域の自治体が指定する有害ゴミや金属廃棄のルールで処理します。
大きめのタッパーかトレーに雑巾を敷いてそれに廃液をしみこませ、水気がある程度抜けたらビニール袋に入れて不燃ゴミ(金属)に出します。
居住地域にもよりますが、わりと都会や地域によっては業者に個人で廃液回収を依頼することもできます。
個人的には現像液にスチールウールを入れて銀を吸着・回収する方法も試したことがあります(現像液が多少甦生して引き続き使える)。
ただ、21世紀のフィルムは銀が少なくなって代替感光剤の発達や薬液の改良がなされてきました。
昔よりもはるかに人体や環境に優しい現像液・定着液などが市販されています(XTOLや eco proシリーズなど)。
個人で銀塩写真を撮って現像して楽しむ分には社会的に問題になるレベルでは無いと思っています。産業分野とはケタが違います。
近年、持続可能(サスティナブル)な社会なんて言われていますが、ほぼ全ての人は性能や機能が同じなら安い製品を買います。
銀塩写真の世界に限らず、環境に優しかったり人体に害の少ない製品はしばしば値段が高いのです。
例えば2021年5月現在の定着液でいえば、
富士フイルム社のスーパーフジフィックスがアマゾンで918円で売られていますが、エコプロ・ニュートラルフィクサーは 3456円です。
サスチナボーを実現するというのであれば ときに高価な製品を購入する努力が必要ということでもありますな。
え? SDGsも二重構造でアングロサクソンの陰謀?
● 時間現像 20世紀フィルムと21世紀フィルム
その昔、銀塩写真の現像では撮影済みのフィルムの現像作業中にセーフライト(フィルムに感光しにくい色付きランプ)に照てて現像の進行具合を確認できたのです。
それで、あぁ...まだ像が薄いからもう少し現像時間を延ばそう、なんてことが可能であったのです。
ところが、1900年代の終わり頃もしくは2003年頃にフィルムメーカー各社で環境問題(フィルム写真は有毒なホルムアルデヒドや銀を含むため)への対応のために、感光乳剤の変更が急速に進みました。銀の含有率も減ったようです。
光に敏感な他の原料が採用されたようで、やたら感光しやすくなりました。
コダック社のカラーネガフィルム「ポートラ/PORTRA」の120フィルムの裏紙などを見ても鉄壁の遮光素材になっていることがわかります。
以前は現像途中で確認できたフィルムの状態がセイフライトでも感光してしまうので、一切の光は使えなくなりました(以前書いた記事のMAMIYA 16 参照)。
それで、状態を見ながらの現像に対して、時間だけを頼りに現像することになりました。それが「時間現像」です。
私がワカイ頃はヨドバシカメラのフィルムコーナーの冷蔵棚にアルミ箔で包んだだけのかなり安いTry-Xが売られており、
それが超お気に入りでした。
1本270円ぐらいだったかな? しかし、2005年ごろに久しぶりに探すと箱パッケージしか売られておらず。
撮ってみると、あれっ? なんだか違うなぁ .... (#銀が減ってた?)。
階調の幅が狭くなったのか? 少し明るいほうへ感光幅がシフトした感じ。
少なくとも2007年に Try-X 400は大幅に仕様変更され、名前もTry-X 400から400TXになりました。
コダックに限らず、古フィルムが今になって(今こそ!?)人気なのはそういった理由もあるのです。
昔の銀の多いフィルムは20年ぐらい経過しても保管状態がよほど劣悪でないかぎり、おおむね性能を維持して写ります(感度は低下していく)。
もっとも、21世紀の感光剤が劣っているわけではありません。方向が少し変わったとでも言うべきでしょうか。
20世紀のフィルムに対して、私は勝手に21世紀フィルムと呼んでいます。
※ ISO200ぐらいで撮って現像するとシャドウの再現性が良いとされています
● 今日のPAY
白黒ネガフィルム現像のための薬液と道具。
現像液、停止液、定着液、水栓促進剤、水滴防止剤、及びその保管容器、ダークバッグ、現像タンクと現像リール、水温計、タイマー、撹拌棒、漏斗、計量容器、フィルムクリップ、エアーブロワーなど。
一式揃えるとして 約13000円から30000円程度
省略できるものもあります。詳しくは次回の補足編にて。
環境に優しい薬液を選んだり、使い勝手の良い水温計やタイマーが良いのであれば総額もだいぶ変わってきます。
私は「七味唐辛子の法則」と勝手に呼んでいますが、道具や材料のなかには有っても無くてもよいものが存在します。
ヒトによっては不可欠な物がヒトによっては無駄なものなのです。
ハタからみればたんなる当人の嗜好やコダワリですが、それは時に個人のセンスやポリシーや人柄をも顕します。
● 白黒フィルム現像のリンク集
フィルムとその現像液など。データシートやレシピ。あとは販売しているメーカーやお店、ネットショップ情報です。
ヨドバシカメラやビックカメラの店舗やネット通販、アマゾンや楽天やYahooショッピングやら、
銀塩フィルムの専門店としてはみらいフィルムズとか、かわうそ商店とか、シルバーソルトなど。
メルカリやヤフオクなんかにも出ていることがあります。
◆ コダック アラリス ジャパン株式会社:黒白フィルム 現像時間一覧PDF
コダック:黒白写真用薬剤一覧
コダック:現像液D-76 現像情報 D-76は1Lと3.8L
コダック:トライエックスデータシート Tri-X 400(400TX)
コダック:現像液XTOL エクストール(5L) XTOLは5Lのみ◆ フジフィルム :黒白写真関連用品
フジフィルム :データシート NEOPAN ACROS(I) データシート NEOPAN ACROS(II)◆ サイバーグラフィクス CYBER GRAPHICS:公式サイト Yahooショッピング
イルフォード ILFORD : 白黒フィルム3種 PANF+ISO50 FP4+ISO125 HP5+ISO400 PDF
イルフォード ILFORD 【暗室用純正薬品】
イルフォード白黒フィルム用微粒子現像剤(1L用, 5L用) ID-11 アイディーイレブン
イルフォード白黒フィルム用超微粒子現像剤(1L用) PERCEPTOL パーセプトール
イルフォード白黒フィルム用超微粒子現像剤増感対応(1L用) MICROPHEN マイクロフェン
イルフォード白黒フィルム用超微粒子現像剤増感対応(5L用) (ILFOTEC) DD-X ディディエックス◆ シルバーソルト:http://www.silversalt.jp
◆ 東京オルタナ写真部:https://tokyoaltphoto.com/ いま買える写真用白黒フィルム全リスト 2020年
◆ みらいフィルムズ:http://miraifilms.jp◆ かわうそ商店:http://kawauso.biz
◆ ヨドバシカメラ Yodobashi.com:現像・プリント関連用品 Kodak D-76 Kodak XTOL ILFORD ID-11
◆ ビックカメラ:現像 で検索
◆ アマゾン:暗室・現像用品
◆ (E)キャットラボ / JOBO:Catlabs Web Shop
◆ (E)シネスティルフィルム:CinestillFilm
◆ (E)フィルムフォトグラフィープロジェクト / filmphotography:暗室用品
◆ (E)ディジタルトゥルース: https://www.digitaltruth.com エコプロシリーズ製品
◆ (E)ハーマンテクノロジー(イルフォードやケントメアやオリエンタル):https://www.harmantechnology.com/
◆ エコ・プロ・ニュートラルフィクサー/eco pro Neutral fixerについて
中性の迅速定着液。アメリカのディジタルトゥルース社がプロデュースしているようですが、レガシープロ LegacyPro っていうのはブランド名ですかね?香港のホルガが販売していたりするので製造はホルガってコトなのでしょう。
エコプロニュートラルフィクサーは「メトール、ハイドロキノン、ホウ酸塩、リン酸塩、非生分解性有機化合物、既知の発がん性物質、変異原物質を含まない、環境に安全な独自の処方を使用しており中性で硬化剤不使用 .... 」とオフィシャルサイトに解説があります。
処方は商品の裏に英語で書かれていますが、1+4希釈でフィルム定着に使えます 1+7希釈で印画紙の定着にも使えます。
一度開封しても12ヶ月ぐらい余裕で品質が保持されるのも魅力です。劣化すると色が変わってわかりやすく、短時間で確実に定着できるので気に入って使っています。
● あとがき
カラーネガフィルムの自家現像記事を公開してまもなく、写真好きの若い人からメールがあったのです。
思いのほか、多くの方々が御覧になっているようで ... 嬉しい限りです。
「白黒フィルムの現像はどうすればいいですか?」
おぉ! やはりそうきたか! いいぞ!
次世代へつなぐことは大事だから最適な回答をせにゃならんなぁ、と思ったのです。
でも、選択肢が限定されているカラーネガフィルム現像のように単純ではありません。
それで、白黒フィルムの歴史は長いので習熟した人も多く、説明を公開している人は世の中に大勢いると思われ、
よさげなサイトやブログを教えてあげようと思ったのです。
私自身も以前から白黒写真の現像をやってはいますが独学なので ... 私なんかより説明の上手な人が他にたくさんいるハズなのです。
ところが ... 探してみると、これこそ!という決定的な記事が無い(#私の探し方が悪いのか?)。
どれも断片的。もしくは過不足があったり局所に深すぎて初心者には難解とか。
そこで、文献のほうがいいのかな? と思って探したら現在の刊行物は撮り方やレタッチ系ばかり。
現時点では白黒フィルムの具体的で体系的な作業手順の現像解説の書物は見つけるのが難しいです。
古書のほうがよっぽど参考になるのですが、現在の感光しやすいフィルムや新しい薬液やオートリールの記述はありません。
それで、21世紀版銀塩写真現像の愉しみとして今さらながら 白黒フィルムの現像記事を書くことにしたのです。
あらためて思うには、銀塩写真をとりまく環境も激しく変わったなぁ .... と。
私は根本的に独学体質なので、標準的ではないかもしれません。間違いや勘違いもあるかもしれません。
もっとほかに良い手順や方法やヒントもあるかと思います。
熟練者の皆さんから間違いの指摘や良いアドバイスがありましたら遠慮無く御教示くだされ ..... 大歓迎。
銀塩写真の味と魅力と楽しみが絶えることなく未来に受け継がれることを地味に切望しています。
Kodak Retina IIIc Heligon F2.0 50mm Ca.1955
fomapan 400 XTOL 1+1 9分30秒現像
2021年春 新宿 東京都庁第二本庁舎(コレも丹下健三)
そろそろ1年半続いているコロナ禍で第一本庁舎の展望所は閉鎖
暗い御時世ながらも上空には旅客機が頻繁にやってきて、このときばかりは気分的に Back In The U.S.S.R.
※ 現像液は多少なり人体に害を及ぼすことがあります。個人の体質等によっては保護メガネやゴム手袋などを使うほうが安全です。くれぐれも自己責任にて。
銀塩白黒モノクロネガフィルムの道具類と薬品についてはコチラの補足編を御覧ください。
記事:2021年5月22日 コロナは続くよ♪ どこまでも♪
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