記事:2021年6月1日
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さて、前回の続きです。ここは現像液や道具などについて記した 補足編 です。
白黒フィルム現像の手順・流れの説明はこちらの 本編 のページ掲載しています。
一部、本編と重複する記述もありますが、補足編はいちど読んで理解すれば道具選びを終えたあとは読まなくてもすむと思いまして。
サムネイルの写真をクリックすれば大きな画像を表示しますが、今回は処方が読めるように巨大な画像もあります。
例によって作法や方法論はワタクシの個人的な鶴虎裏千家流です。銀塩写真業界の標準的なものではありません。
■白黒ネガフィルムの自家現像 用意するもの
【最低限必要】
現像液、定着液、薬液保管容器(ボトル)、ダークバッグ、現像タンクと現像リール、水温計、タイマー、漏斗、ハサミ
【あればイイかも】
停止液、水栓促進剤、水滴防止剤、電子天秤、撹拌棒、キムワイプ、計量容器、フィルムクリップ、エアーブロワー、3Mマスキングテープなど
※ もちろん暗室は不要です。ダークバッグだけで充分です。
● 白黒ネガフィルム現像の薬剤と道具
英語ではデベロッパー(Developer)と呼ばれることが一般的です。
写真フィルム用と印画紙用とがあります。粉で売られているものと液体とがあります。
製品の多くは希釈度を変えることでフィルムだけでなく印画紙の現像(プリント)にも使えます。
各社、様々なタイプが市販されていますが、D -●●とか製品名の最後が ●●●トール のような場合はたいてい現像液です。
白黒ネガフィルムの古典的な現像液は主剤がフェニドンやメトール、ハイドロキノンで、写真用品店や薬局で購入して自分で調合することも可能です。
※ ハイドロキノン/ヒドロキノンは皮膚の美白作用と遺伝子の変異原性が指摘される薬物です。
・PQ現像液系:フェニドンとハイドロキノンが主剤 FUJIFILMのスーパープレドール(SPD) 等
・MQ現像液系:メトールとハイドロキノンが主剤 KodakのD-76 等
これらハイドロキノン系の現像液は溶かして1日置いて(寝かせて)から使うほがうが薬液の反応がしっかり進んで安定するとされています。
一方、メトールだけを主剤とする現像液のミクロファインやアスコルビン酸(ビタミンC)を主剤とするエクストールなどは溶かしてすぐに使えます。
多くの現像液は原液でも現像できますが、原液1に対して水を1の割合で加えて希釈して使うこともよくあります。
これを 1+1現像液または1:1現像液と表記します。原液1に対して水を3なら 1:3とか1+3 の表記ですな。
液体の現像薬はうんと希釈するものが多く、ロジナールなどは1+25とか 1+100の希釈で使う場合もあります。
一般に原液は貯蔵液とも呼ばれるように保管期間が長いです。
まず、ヒストリカルで国際的にも圧倒的な人気のコダック Kodak D-76 1927年に開発された現像液。
マーチンの1976本限定ギター、ノンスカロップブレイスのMartin D-76 ではありませんぞ♪
これで現像できないフィルムは無いといわれる定番中の定番。Try-Xと併せてベトナム戦争の定番でもありますな。
あまりの人気に標準現像液なんて呼ばれています。いや、呼ばれていました(過去形)。
※ D-76自家調合:750ccの水にメトール2g、無水亜硫酸ナトリウム100g、ハイドロキノン5g、臭化カリウム2gを順次溶解して水を加えて1000ccとする
イルフォード社の ID-11 や富士フィルム社のフジドール(絶版)が同じ処方で D-76互換です(現像時間もD76と同じ)。
売られている粉を50度のぬるま湯に溶かずだけなのでわかりやすくて使いやすいです。溶かして一日置きます(原液となる)。
原液の保存期間はボトルに満杯なら6ヶ月間、保管容器内の空気が半分であれば2ヶ月持ちます。
コダックD-76は1リットル用と1ガロン(3.8リットル)用がそれぞれ粉末で売られています。 .... これもじきに過去形になるでしょう。
ただ、一部の21世紀のフィルムと相性が悪いという意見もあります。
前回の本編で説明したとおり、いまや写真用フィルムは健康被害と環境を意識した銀の少ない21世紀仕様に変わったのです。
D-76は生産中止・販売終了になりますた。国内外のお店の在庫分もそろそろ終わりでしょうか。
それで、コダック社の次世代の現像液はエクストール(XTOL)です。
D-76より1割強い薬液なので1割短めの時間で現像します。
21世紀のフィルムを意識して作られているので現行フィルムにも相性が良いです。
ちなみにパターソン社の Paterson FX-50 現像液やデジタルツルースの ECO PRO B&W Film Developer が同じ処方です。
XTOLは現在は5リットル用しか売られていませんが、私は粉を少量計って 1+1希釈の 1L づつ使っています(#ケチともいふね)。
白黒ネガフィルム「トライエックスTry-X 400TX」の現像時間 20度において 1+1希釈
D-76 9分45秒
XTOL 9分00秒
エクストール ( XTOL )は1996年にコダック社によって開発された現像液です。変身しそうな名前がカッコイイ。
後発だけあって D-76よりも粒状性は高く暗部も潰れにくく、階調も豊かとされています。
21世紀フィルム トライエックス400TXとも相性良好。
毒性の少ない、環境に優しい優秀な現像液ですが ... ヘタリは早いです。
というより、ある限界に達するといきなり現像能力が落ちます。D-76のように徐々に落ちていくという感じではありません。
また、エクストールは1:1までの希釈は優良ですが 1:2 や 1:3の希釈は推奨されていません。
5リットル用のみ市販されており、2021年5月現在で2000円ぐらいです。
本来、個人向けというよりは機械現像用なのでしょう。
A粉とB粉の2薬から成ります。
袋から小分けしたら空気を抜いてテープ等で密封しておきましょう。 1年以内に使いきりましょう。
XTOLの現像液を作るには水道水を準備しておき、最初にA粉を入れて溶かします(オレンジ色または明るい薄茶色/アンバーになる)。
完全に溶けたことを確認したら、B粉を入れて混ぜて完成(透明になる)。
D-76のように50度ぬるま湯の指定ではなく、常温で溶けるようにできています。
一日寝かせる必要もありません。すぐ使えます。
これが原液なので、1+1現像液を作るには同じ量の水道水を加えて希釈します。
私の場合は以下の A粉:25g と B粉:27g で原液を500cc作り、そこへ500ccの水を注いで1+1希釈の現像液1000ccとして使っています。
・原液 1000cc
A粉:49g
B粉:54g
・希釈 1+1の1000cc(私はいつもコレで使ってます★)
A粉:25g
B粉:27g
※ 古フィルムにはD-76やID-11を、21世紀フィルムにはXTOLと使い分けるのもよいでしょう
英語ではSTOPとかBATHとかストップバス STOP BATH などと表記されます。バス停ではありません。
現像を●分●秒でピッタリ止めたい場合、一般的な現像液はアルカリ性なので酸性液を注入して中和するというものです。
定着液を繰り返し使う場合、ヘタりにくくするためでもあります。
ただ、人によってはフツーの水道水でいいよ、という人もいます。
家庭用のお酢(米酢とか)を薄めて使う人もいますが、添加物や臭いを避けるのであればクエン酸15gに水1リットルでもかまいません。
私はたまたま入手したADOX社のアドストップADOSTOPという停止液を使っています(1+19希釈)。
市販品ではフジフィルムのFUJIFILM 富士酢酸が入手しやすく、玄関先のコケ除去にも効果があります。
面倒だと思った方は水道水でドゾ。
英語ではフィクサー( FIXER)とかフィックス(FIX)と書かれる製品が多いです。
一般的には迅速定着液なら2分から5分、迅速タイプでないのんびり定着液は10分。
各社の製品は使い方はほぼ同じで、定着液を入れて初めの30秒間は連続で攪拌、その後は放置でもいいしテキトーに攪拌もよし。
入手しやすさと安価な定着液としては富士フイルム社のスーパーフジフィックスとか、
コダック社のコダフィックス(Kodafix solution)などがあり、1+3に希釈して5分から10分程度で定着。
同じコダック社でもラピッド・フィクサーなら2分〜4分で定着。
スーパーフジフィックスはたしか標準で10分間でしたか。
イルフォード社Ilford のラピッドフィクサーも迅速定着液としてよく知られています。
私は人体と環境に優しいという理由で「エコプロ ナチュラルフィクサー eco・pro Neutral Fixer」を使っています。
高価ですが、この製品は中性pH7であることと、1+4で希釈して使うので量は充分。繰り返し使用の耐久性も高いです。
いったん容器を開封しても原液は劣化せず12ヶ月以上持ちます。硬化剤も未使用。
さすがデジタルトゥルース 素晴らしい。
1+4で調合してから35mmフィルムが5本ぐらい定着できると書いてありますが、私はかまわず10本ぐらい使うこともあります。
ヘタってくると薄い赤紫色になります。富士のフィルムを定着するとヘタリが早いような?
エコプロ ナチュラルフィクサーはどんなタイプのフィルムでも2分から5分間で定着できます。
面倒なので、私の場合はエコプロ ナチュラルフィクサーしか使わないことしにて、
おかげで、どんなフィルムであろうと「定着は5分」と固定しています(過去に一度も定着不足無し)。
英語ではハイポ(Hypo)と呼ばれます。他にもクリアとかウォッシュとかの製品名が多いです。
定着を終えたフィルムを洗う必要がありますが、昔はフィルムのヌメリが無くなるまで水道水だけで30分も洗っていました。
そのうち節水だ、エコだ、何だ、という話になってヌメリを素早く落とせる薬剤が作られた。それが水洗促進剤です。
水洗促進剤に1分浸してから水洗いすれば、5分間で水洗い完了。という時短な薬品であります。お水も節約。
私はFUJIFILMの黒白現像用水洗促進剤「富士QW」を使っています。他社製も使い方は似たようなもんです。
2L用の粉で売られているので常温の水道水で溶かすだけ。キレイな薄青色になります(#カラダには悪そう?)。
使い続けて色が薄くなってきたらオシマイ。
現時点でアマゾンにて2リットル用が66円(#以前一時的に高騰したことがあった)。
使う毎にチリが混じってくるのでフィルムに付着します。ケチらずに新しい液を作りましょう。
... 私はケチりますけどね。
富士以外のメーカーだと、入手しやすさでいえばイルフォード(中外写真薬品) の水洗促進剤マイ ウォッシュアップ ... ちと高額。
エコプロシリーズにもハイポウォッシュ eco・pro Hypo Wash なんてのもありますが人体や環境に優しい分だけこれも値段が高め。
コダック社だとハイポ・クリアリング・エージェント。
富士QWはヌメリが出始めたり水色が薄くなったら繰り返し使うのをやめることにしていましたが、
最近は35mmフィルムでいえば5本使用後もしくは1ヶ月を目安に新しく調合しています。
※ カラーネガフィルム現像の水洗促進には使えません。
英語ではフロ(flo)なんて名前のついた製品がよく見られます。銭湯ではありません。
フィルムを最後に洗って乾かすときにフィルムクリップで留めて吊り下げますが、
水滴が付いていると乾いたときにまだら模様になりがち。
スポンジで拭き取るか、スキージ(ワイパー)で水を飛ばすか、もしくはこういった水滴防止剤を使います。
現像と定着を終えたフィルムを水洗いしたのち、最後にコイツにチャポン!と浸けて30秒おいて引き上げるだけ。
そのまま水滴防止剤がフイルム表面を濡らした状態で干します。タオルとかで拭いてはいけません。
私は富士フイルム社の「ドライウエル」を使っています。これも定番ですな。現時点で356円(200cc)です。
キャップ1杯を水2Lに入れてかきまぜるだけ。
ただ、ボトルが従来の白から新しい半透明になったら強烈な臭いがするじゃないですか ... 他社製に変えようかなぁ?
コダック社製品ではフォトフロ200 ソリューション 473ml Kodak Photo-Flo 200 Solution, 16oz が知られています。
もしくは界面活性剤の入った家庭用食器洗剤/台所洗剤を200倍ぐらいに希釈して使っても良いそうです。
水滴防止剤は安いのでケチらないことです。
... 私はケチりますが。
何度も繰り返し使えることになっているのですが、徐々にチリが混ざりフィルムに付着します。
私は35mmフィルムでいえば5本からせいぜい10本ぐらいで新しく作り直しています。
1Lづつ調合してフィルム3本か5本で廃棄するもよし。
キムワイプとエアーブロワーがあればいいなぁ ...
現像タンクや薬品ボトルやタイマーなどに付いた水滴を拭き取る。
そんなときに、身近な雑巾やティッシュペーパーをつい使いがちです。しかし、それが細かいチリを発生します。
それで、スプレー式のダストブロワー / エアーダスターやキムワイプを努めて使うようにしています。
私が激しく若い頃に大学の半導体研究室でさんざん使いまくったキムワイプ。リントフリー。
例えば、作業を終えた現像タンクは洗って乾かしますが、急ぎの時はキムワイプで拭き、ブロワーをかけます。
そうすることで現像工程でのチリをほとんど駆除できています。
もちろん、フィルムをスキャンするときにもダストブロワーは有効ですしね。
カメラやレンズの修理でも活躍、個人的には有るととても重宝します。... いや、無いと困る!
ノンフロンで逆さでも使えるタイプを愛用しています。
暗室のかわりに ... いや、21世紀においては暗室があってもコレは持っていたほうがいいです。
イマドキのフィルムは暗室+セーフライトでは扱えませんから。
ダークバッグ(チェンジバッグ)はエツミ社のLサイズとMサイズを使っています。
日本製で二層構造です。どちらも3000円ぐらい。
長尺のフィルムからパトローネに小分けしたり、撮影済みのフィルムをリールに巻いたりと大活躍します。
旅に出るときはMサイズ(Sサイズといふべきか)を持って行くこともあります。
くれぐれも21世紀フィルムは露光しやすいので部屋の灯りも薄暗くしておくほうが無難です。
現像タンクやリール類は前もってブロワーでチリやホコリを吹き飛ばしてからダークバッグへ入れます。
片ベロも真っ直ぐに切っておきます。120フィルムは最後にテープを注意深く剥がします(またはハサミでカット)。
そうです、ハサミも必需品です。ハサミはセラミック刃で刃先の短いものを私は愛用しています(コレも日本製)。
※ ダークバッグの使用後は裏返してチリやホコリなどを払い落としておくべし。
※ くれぐれもハサミで指とか切らないように用心されたし。
カラーネガフィルム現像の記事でも書いています。
ステンレス製のタンクとリールは腐蝕にも強く耐久性に優れていますが、フィルムをリールに巻くのにはコツと慣れが必要です。
21世紀の初心者にはオススメしません。
現在では白い樹脂製のリールが扱いやすいです。タンクは黒いプラスチック製の容器で赤いフタが一般的。
但し、黒プラ現像タンクはひっくり返すと現像液が漏れやすかったり、静電気でチリやゴミが付着しやすい欠点もあります。
白い樹脂製のリールははオートリールと呼ばれ、フィルムの端をリールの入り口に挿しておき、
リールの片方を3cmぐらい前後にカサカサと往復させれば、フィルムは勝手にリールの奥へ奥へと入っていきます。
・現像リール
私はLPL社製とノーブランドのMADE IN EU(EC) などを使っています。16mm用リールはCatLab等で現在でも販売中。
透明な樹脂製や黒いプラスチック製のリールもあります。
昔はベルト式など現像タンクとリールには様々な方式がありました。
ただ、白い樹脂製のオートリールは鋼球がスムーズに動かない個体が多いです。
そうなるとフィルムが入れにくく、咬みやすくなります。
先の細い刃物で玉の溝の下側を削って玉が軽快に動くように修正したほうがいいです。
リールを軽く揺らしたときに鋼球が自由にカラカラと動くのが本来の構造と思われます。
いちどフィルムが咬んでしまったら決して引き出そうとせず、リールを分解してやりなおします。
新品のリールでもかなりの高確率で成形不良があります。
先の細い彫刻刀かデザインナイフ等で玉の溝の下側を削って玉が軽快に動くように修正したほうがいいです。
私は35mm ー120フィルム兼用の白樹脂オートリールを7個持っていますが、どれも具合が悪かったので7個全てを削って修正しました。
程度は多少あるものの、LPLもパターソンもEC無銘品も全てリールの鋼球溝を修正しました。
結果、劇的に使いやすくなり、咬んだり詰まったりのトラブルはゼロになりました。
※ 短いフィルムであればリールを使わず、ねじってテープで留めるメビウスの輪方式なんてのが昔はありました。
※ ステンレス現像タンクに白樹脂オートリールは入りません(各社ともリール外径が大きい)。
※ オートリールの分解は左右どちらかを3cm以上時計方向へ少し力を入れて回します。
※ LPLとパターソンはリールに互換があります(軸経がほぼ同じ)。
※ 巻き癖の強いフィルムやデッドストックのフィルムなどはリールに入れづらいので、いったん他の軸に巻き上げてフィルムの反対側の端から入れるとうまくいきます。
・現像タンクの撹拌棒
現像タンクの中央に棒が付いていて、それで内部のリールの軸を回して撹拌するしくみ(#カラーネガフィルム現像では邪魔/不要)。
シンワ測定(Shinwa Sokutei) の育苗用温度計 V-2 72610 を使っています。
水平目盛で見やすくフルスケールが60度と理想的。応答も早くて値も正確です。
老眼でも見やすいです。
老眼でも見やすいです。
老眼でも見やすいです。
育苗用なので屋外使用を前提としているせいか、水に濡れても壊れず調子良く動いて激しく気に入っています。
しかもデジタル式と違って電池も不要でエコです。鬼のように熱くお薦めします。
1個で約1400円でした。私は惚れ込んで2つめを買いました。
鶴虎裏千家では撹拌棒のループに挿して使うのが作法です。
熱帯魚とかの水槽用も売られていますが、水面が波打つので読み取りにくく応答も遅く、横から見る必要があるので現像には使いづらいです。
写真現像専用の棒状の液体温度計も売られていますが、それも同様に見づらいです。
ベロ出しともいふ。
写真撮影が終わったらフィルムをパトローネに巻き戻しますが、完全に巻き込むと当然ながら簡単には取り出せません。
それで、3枚舌のテクニカルな構造でスライドさせてパトローネ内部のフィルムを挟み、引き出すというスグレモノ。
どこの誰が考案したのか知りませんが、こんなことに真剣に取り組むのはたぶん日本人でしょう。
堀内カラー製、HAKUBA製、コニカ製、チェリー製などありましたが最近はあまり見かけなくなりました。
私は堀内カラー製を使っています。現時点では1500円ぐらいでしょうか。
アマゾンは高いのでヤフオクやメルカリの中古のほうが安いかもしれません。
パッケージに使い方は書かれていますが、本体の裏にも図示してあります。YouTubeにもあるかも。
自分で現像する人はたいてい1つは持ってるハズ。
そして、いつのまにか紛失して、仕方なく新しいのを買うとその翌日に発見されます。
135タイプ(35mmライカ判)のようなフィルムでは写真撮影が終わったら、
パトローネ(フィルムが入っている金属の容器)に巻き戻しますが、完全に巻き込めば当然ながら簡単には引き出せません。
それで、栓抜きのごとくパトローネの片方のフタを剥がし取ってしまう強引なツールです。
パワーでひっぺがしてヒーローになろうという、アメリカ人が考案したに違いありません。
いろんなタイプがありますが、家庭用の栓抜きでも代用できる場合があります。
映画用の長尺/長巻フィルム(バルク)から必要な長さだけフィルムを切って撮るには、
一般的には市販フィルムを再利用するか、詰め替え専用パトローネ(ワンタッチパトローネともいふ)を使います。
市販フィルムの再利用はフィルムメーカーによってフタがキツかったり、外れることもあるので、私はほとんど使いません。
もっぱら後者のワンタッチパトローネを使っています。
昔はデイロールといって箱形のケースに長巻フィルムをセットしてハンドルを回し、
ダイヤル目盛でコマ数を見ながらパトローネに巻き収める用品も売っていました。
今でも中古で出ていますが、いろんな種類のフィルムを使いたい場合に交換が面倒そうで、私は持っていません ....
プラスチック製で片方のフタがスクリュー式のタイプを使っています。
軽くねじ込むだけでピッタリ止まります。よくできてます。
以前は金属製の詰め替えパトローネも使っていましたが、このプラスチック製のほうがフタも外れにくく使いやすいです。
私の買ったものは出口の起毛布が剥がれかけていたため、自分で剥がして再接着しました。
金属製にはフィルム感度や撮影枚数をカメラに自動認識させるDXコード付きもありますた。
光漏れの報告もありますが、それはむしろ感光しやすくなった21世紀フィルムの取り扱いに因るものかもしれません
カメラにフィルムを装填したり取り出したりするときは部屋を薄暗くするほうが、今流行の安全安心です。
私はダークバッグを使う時も部屋を薄暗くしています。
※ オルソ(Ortho)系など一部のフィルムは暗い赤ライト下で扱うことができます
撮り終わった市販フィルムに継ぎ足す方法もあります(#ケチ臭くてイイねぇ!)
露光済みのフィルムを現像リールに巻き終えたら最後にフィルムを5cmから7cmぐらい残してハサミで切ります。
そこに新しいフィルムをテープで貼ってつないで巻き込みます(もちろんダークバッグ内で作業)。
但し、 パトローネに印刷された銘柄と継ぎ足したフィルム銘柄が異なる場合はテープを貼るなど区別の工夫が必要。
パトローネに入っていれば安心と思わず、カメラに出し入れするときでも極力部屋を暗くするほうが安心安全です。
とにかく21世紀フィルムは意識して感光しやすいと考えたほうが無難です。
防水の腕時計でも代用できます。しかし、私は古い機械式腕時計しか持ってません。
古いクロノグラフとかは、たとえ防水仕様でも使わないよ〜に。
かつては「暗室時計」なんてものも売られていましたが(過去形)、今日ではキッチンタイマーを使う人が多いです。
私は タニタ製 TD-414 を使っています。加算式で使えることと防水でしかも ... 字がデカイ! エライ!
老眼でもよく見えます。
老眼でもよく見えます。
老眼でもよく見えます。
老眼同盟の同志には熱くオススメします。およそ2000円ぐらい。
ただ、欠点としては液晶タッチパネルなので水滴を拭き取ろうとうかつに触れると、ピッ!と冷たくリセットされてビックリします。
あと、電池の消耗が激しいので使わないときは電池を取り出してテープで本体に貼っておきます。
ホント、大容量の電池に換えてみたけど持ちが悪い。メーカーさん改善お願いします。
このキッチンタイマーは本体裏にマグネットもあるので要注意。
あと、老婆心ながら ... 間違ってもスマホとか使わないほうがいいです。防水であってもチャポン! と水没せぬよう ...。
※ 市販のキッチンタイマーの多くは減算式。銀塩写真の現像では加算式(カウントアップ式)のほうが良いと思ふ。
急ぎの工程では途中でリセットせず放置して作業区切りごとに加算分を読み取ればよい。
※ TD-414の電池は大容量 CR2032 または互換の短命CR2025 など。
LPL製とISE製を持っていますが、なぜか私は ISE製ばっかり使っています。
バネ強さと重さが心地良くてスリム。値段もISEのほうが安い。
前もって黄色のマスキングテープ(日本の弦楽器製作業界では黄色いアレと呼ばれている)に、
撮影日・場所・カメラ・フィルム・レンズなど書き込んで貼っておくのが鶴虎裏千家流。
当流派では撮影する前にこのマスキングテープに書き込んでカメラに張っておきます。
そうすれば現像時もスキャン時も保管時も貼り換えるだけで済むので便利です。
一度にフィルム2本とか3本を現像・スキャンするときなど、このマスキングテープメモが混乱のトラブルを防いでくれます。
※ 挟むとフィルムの像を傷付けるような場合は書類用クリップを介するとよい
※ 16mmや120ブローニー判はホチキス併用も
● 補足の補足
フィルムに残っている画像を取り出す一連の作業体系(薬液種類と温度など)とされています。
実用的にいえば、フィルムの種類によって使用が区別されている現像液の区分、といったところでしょうか。
白黒ポジフィルム(リバーサル)、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム(リバーサル)、カラーネガフィルムの白黒現像、などがあります。
※ 白黒ネガフィルムは指定プロセスというよりも様々な現像液と処方があります(推奨現像液で区分されることもアリ)。
それぞれのフィルムごとの現像方法(使用する現像液)によって、
カラーネガだとC-41、ECN-2、CN-16、CNK-4、AP-70 などがあり、
カラーポジフィルム(リバーサル)だとE-6、CR-56、AP-44などがあります。
ただ、刻印された現像プロセスで素直に処理できないフィルムもあります(#お店に現像を依頼すると断られたり)。
要注意:映画用の音声録音可能なフィルムやロモLOMOの一部のフィルムなど、現像液を激しく濁らせてしまうものがあります。
また、クロスプロセスといってポジフィルム(リバーサルフィルム)を、
ネガフィルム用の現像用法で処理する(その逆も有り)テクニックも最近流行っています。私はやりませんが ...
※ ダークレスは2液で液温も現像時間も固定なので、白黒ネガフィルムのプロセス処理のひとつ?
● 今日のPAY
チェコ共和国のフォマ fomaのブランドの白黒ネガフィルム FOMA FOMAPAN ISO 400
いわゆるフォマパンです。チェコは映画も写真も熱心なお国ですな。
135(35mmライカ判) 100feet(30.5m)巻き1缶のお値段です。感度は ISO/ASA 400ナリ。
本来、缶入りフィルムは長尺の映画用ですが、もちろん切り出して使えば36枚撮りのパッケージよりもお徳です。
ちなみに旧型乳剤、つまり20世紀の仕様です。
データシートはコチラ PDF
1+1希釈現像液での液温20度における D-76での現像時間は実測で11分、XTOLでの現像時間は9分30秒
※ D-76での現像時間は実測で11分でした(12分や13分は長すぎる) 。
・アマゾンから購入 9480円 送料無料
比較的よく見かける30m缶で購入できるモノクロネガフィルムとしては2021年5月現在では、
チェコ共和国のフォマパンISO400やアリスタISO100のほか、
英国のケントメアISO 100(=富士のACROS II )やイルフォード HP5 ISO400、アメリカのコダック 400TX などがあります。
その他、デッドストックといいますか、映画用の長期保管品の長尺フィルムはけっこう残っています。
映画の時代は長かったので今でも未使用フィルムはeBAYなどによく出てきます。
テープで封印された缶であれば、感度が多少落ちていることもありますが、まずたいてい使えます。
100フィートはおおむね30mなので、ざっくり計算すれば市販の36枚撮りパトローネなら15本分ぐらいでしょうかね。
よく撮る人は400feet巻きの缶を買うもよし。
【フィルム選び泥沼への誘い】
今回は初心者向けの黒白フィルム現像のオハナシですが、フィルムがなくちゃ始まらないので少し書いておきます。
2021年5月現在で入手できるフィルムは、上記のコダックやフォマ(Foma)意外にも、
イギリスのハーマン系やドイツや旧ソ連(ロシア)系など、現時点で20社
ぐらいあろうかと思います。
ブランドは違っても中身が同じ場合もありますが、昔のブランド/タイプなのに中身は新しい仕様になったフィルムもあります。
ADOXのシルバーマックスなんか、わざわざ銀を増やしたフィルムです。
現像液もまた同様で、廃止になったものもあれば、近年新たに開発されたものもあります。スバラシイ!
20世紀後半に廃れて絶滅したかに思われた銀塩フィルムは、じつは一部では復興して勢いを増していたのですな。
2004年にILFORDが倒産、2005年にAGFA(#GAFAぢゃないよ)が倒産し、2012年には写真業界の巨人Kodakが倒産。
日本でも明治6年(1873年)創業の老舗コニカ/サクラ/小西六が2006年に銀塩写真事業から撤退して姿を消し。
富士フィルムも次々と製品を終了。他社も言うに及ばす ... 当時は全滅ムード全開だったのです。
私が2010年に16mmスチルカメラ MAMIYA 16 の記事を書いた頃には、状況的にみて銀塩写真は無くなると思い込んでいました。
しかしちょうどその頃、地下では熱心な銀塩写真愛好家や若い世代も加わってADOXブランドが復活し、
海外ではSNSやクラウドファンデイングによって廃業したフィルムメーカーもいくつか復活しつつあったのです。 時代ですな。
Film Photography Project(FPP)も活動を始めたのは2009年からでした(#当初はたいしたことなかったんだけど)。
今では初心者はもちろん、マニアをも唸らせるコダワリのフィルムや現像液が今でも数多く製造・販売されて嬉しい限りです。
いやぁ〜〜、こんな選べる時代にまで復興するとは思ってもみませんでした。
例えば、ダブル8のフィルムが復活するなんて奇跡です。ありえん ... ヤバイ!(←良い意味)
とっくに葬られたDouble-8 (CINE 8)が発売されたときは、衝撃のあまりコロナで発熱して一週間寝込みました(#ウソ)。
現在生産されているフィルムと現像液。それに現存する過去の世界中のストックを加えると、かなりの選択肢があります。
とくに135フィルムは充実しており、フィルム選びに迷うほどです。
なんてシアワセな時代でしょう。
話が長くなりそうなので、銀塩フィルムと現像液に関して熱心な活動とわかりやすく丁寧な記事を掲載されている
東京オルタナ写真部さんの記事を以下に紹介しておきます。これもまたスバラシイ。ヤバイ!(←良い意味)● いま買える写真用白黒フィルム全リスト 2020年:銀塩写真を始めたい人へ
https://tokyoaltphoto.com/2020/02/list-of-photographic-bw-films-2020/Film Photography Projectでは、各種映画用フィルムを切って巻いてパトローネに詰めて販売しています。
映画史上の傑作フィルムと言われたイーストマンコダックのダブルエックス Double X や
ときに旧ソビエトや東ドイツ各社、あるいは航空用やレントゲン用のフィルム、コピー用マイクロフィルム、
限定モノで聞いたことのないフィルムなども、わざわざ手作業で切ってパトローネに詰めて売っています。
なんてこった! 一体何なのよ?この人達のしぶとい情熱は!
https://tokyoaltphoto.com/2014/11/film-photography-project/ちなみに日本ではもう白黒銀塩フィルムは製造していません。儲からないことはどこの会社もやりませんからね。
最後の富士フイルムの ACROS はいったん製造を止めたのち ACROS II となって再発売されていますが、
パッケージに表記があるように MADE IN UK の英国製です(中身はケントメアのようなハーマンテクノロジー系)。
今となっては、企業は金儲けのためだけに存在し、趣味色の強い分野はクラウドファンデイングの時代になったのです。
フクザツな心境です ...
● あとがき
前回の本編で説明できなかったトコロをあれこれ書いてみました。
いや、まだ書き足りないコトもあるんですが ... 私を含めた初心者向けということで御勘弁を ...。
コロナ様のおかげで、ひきこもりタイムをいやおうなしに押しつけられて、それなら普段書けない記事を書こうと ... 。
しかし、実際に書き始めるとフィルムも現像液も調べるほどに私もまだまだ理解していないことも多いなぁ ... と痛感します。
しかも時代はどんどん変化しているのですな。
熟練者の皆さんから良いアドバイスがあればメールにて御教示くだされ .... 大歓迎。
それにしても ... ひょっとして、今は銀塩写真を楽しむにはとても恵まれているような気もします。
少し前に中判カメラ コンバーチブルホースマンでイルフォード社の21世紀フィルム HP5 PLUS を使ったのですよ。
21世紀フィルムのHP5は現行の120フィルムでも安価な部類なのですが、これがまた素晴らしくて。
銀塩写真 .... 激しく健在やんけ!
コンバーチブルホースマンは中判カメラの6x9cm判ボディに大判カメラのレンズ、オリジナルは駒村商会62mm F5.6ですが、
私の個体はドイツ・シュナイダー社のスーパーアンギュロン(かなりの広角)47mm F5.6 XL へ改造されています 。
ブローニー判ならではのフットワークの軽さと、35mmとは段違いの面積の違いによるスケール感に感動。
じつは、このカメラは写真家の田中長徳さんから譲ってもらったものなのです。
けっこう使い込んでありましたが、状態は良くてブローニー判の広角が手持ち撮影で楽しめます♪ なるほど、良くできてる。
120フィルムホルダー(フィルムバック)は交換式なので工夫すれば 6x6cmでも撮れます。
それならと6x5cmの準標準画角でも撮れるように別のホルダーを自分で改造してみました。
勝手に思いついた時計方式で巻き上げながら撮ります。
6x9cmのままなら広角で8枚撮れ、6x5cmだと準標準画角で14枚撮れます。6x4.5cmじゃないところが偏屈者。
こういった楽しみ方もアナログ銀塩写真の醍醐味であります。
CONVERTIBLE HORSEMAN + Lenz: Schneider Super Angulon 47mm f5.6 CHOTOKU MODEL
ILFORD HP5 PLUS ISO/ASA400 BW Negative film
カラーネガフィルム現像の記事はコチラです。
※ 現像液は多少なり人体に害を及ぼすことがあります。ゴーグルやゴム手袋などを使うほうが安全です。くれぐれも自己責任にて。
記事:2021年6月1日 コロナは続くよ♪どこまでも♪
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