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全国の弦楽器愛好家や楽器製作家、歴史研究家のみなさんの参考になればと思い、図面の提供を行っているものです。インターネットのおかげでギターの設計図とか弦楽器の図面というヤツは探せば世界中で入手することができますが、原則として有料です。実寸図面というのはとにかく作成するのに手間暇とお金がかかります。しかし、ここでは無料で配布しています。かつて私がギター製作を始めた当時はギターの設計図は種類も限られており、貧乏で買えなかった経験に基づくものです。世界中の弦楽器製作愛好家の皆さんに御利用いただければ本望です。すべての楽器は私が採寸・作図したもので、A1サイズもしくはA0サイズの実寸です。PDF形式のデータをいつでも無料でダウンロードできるようにしてあります。
● 【再配布と使用にあたり】
これらのPDF図面と資料写真はフリーウエアですので個人で使用する場合については自由に印刷してかまいません。使用にあたっては作成者である鶴田(私)にいちいち断る必要もありません。但し、著作権は放棄していませんので内容の改変や無断での商用利用は堅く禁止します。これらの図面を売って利益を得ることを硬く禁じます。図面に表示されている注意事項は必ずお読みになってください。著作権に関しての御質問等がありましたら鶴田まで御連絡ください。
●PDF形式データはお手元に大判プリンターがあればフルサイズで印刷できます。しかし実際には限られた環境でしょうから、A4サイズで分割印刷して糊付けして貼り合わせて使うことも一案です。あるいは最寄りの出力センターへ依頼することで原寸図面を得ることができます。国内外を問わず、キンコーズ(Kinko's)やグラフィックデザイン系のプリントショップ、あるいは建築図面を印刷してくれるお店などで大判印刷が可能です。図面には縦横に50cm、あるいは1mなどの直線を描いておきましたので、縦横比と寸法確認に利用してください。紙は湿度に敏感ですから収縮や膨張によってかなりサイズは変わるのです。とくに大判では顕著ですが、上手につきあってください。
●PDFデータの表示や印刷にはアドビ社の「アクロバットリーダ」というソフトが一般的です。Adobe社から無料で配布されていますのでここのボタンをクリックして入手いただきご利用ください。パソコンの環境によってはPDF図面を開いたときにフォントエラーのメッセージが出ることもありますが(たぶんアクロバットリーダーのささいなバグ)文字はすべてアウトライン化してあるので印刷には問題ありません。
● A001:マンドリーノCRANEモデル:1枚一組です。
楽器博物館の1735年のイタリアのマンドリーノを参考にして現物と写真をもとに鶴田が描いたものです。現物の写真や製作過程など詳しくは当ホームページの「リュート製作ちょ〜入門」コーナーを御覧ください。
●PDF形式(Acrobat)データ(約650KB) 無料ダウンロード
● A002:19世紀ギター(ラコート)CRANEモデル:2枚一組です。
1820年〜1830年頃のラコートのスタイルを参考にしていますが力木のサイズ、配置、本数がオリジナルのラコートとは異なる鶴田独自のものを採用しています。まあ、はっきりいってCRANEオリジナルモデルですね。現物の写真や製作過程など詳しくは「ギター製作ちょ〜入門」コーナーを御覧ください。
●PDF形式データ(その1:約400KB、その2:約330KB) 無料ダウンロード
● A003:18世紀プレストン6単弦ギター
これは1700年代末期にイギリス(ロンドン)で製作されたギターです。鶴田が現物を採寸して図面を作成したものです。現物楽器写真データは御覧のとおり
※その後の調査により、ロンドンのプレストン / PRESTON工房によるものとわかりました。当時はこの同じボディで4コース8弦と6単弦の楽器が作られており、それぞれ数本が世界中に現存する希少な楽器です。この図面は作図当時に5コースで描いていますが、正しくは 6単弦または
4コース8弦を備えるものです。追加写真も参照ください。ヘッドにペグ穴6個の場合は6コースのイングリッシュギター風に金属またはガット(羊腸)の単弦でCEGcegのようなオープンチューニングが一般的と鶴田は考えていますが、様々であったようです。
追伸:竹内太郎さんから調弦についてのコメントを頂きました:スパニッシュギターの調弦とイングリッシュギター調弦、どちらも使われたようです。弦長によりますが、イングリッシュギター調弦の場合は、3度あるいは4度下(イ長調やト長調)の場合も考えられます。当時のハープギターの文献によれば、「小型のスパニッシュギターをハープギター(イングリッシュギター)と同じにすることができる」ともありますから、フレキシブルに考えてよいようです。
(写真1、写真2、写真3、写真4、写真5、写真6、写真7、写真8、写真9、写真10、写真11、写真12、写真13、写真14)
参考写真1:海外の製作仲間から送られてきた6単弦のプレストンギターです(CRANEの楽器ではありません)。
参考写真2:当時の銅版画に描かれた同モデルのギター。アラベスクにはいくつかのバリエーションがあったようです。
● PDF形式データ(その1:約360KB、その2:約300KB) 無料ダウンロード
● 追加データ 6単弦ヘッド(約230KB) 無料ダウンロード
● A004:19世紀ギター(R.F.ラコート)1839年以降:2枚一組です。
数年前に東京の個人のコレクションを鶴田が採寸して図面をおこしたものです。ヘッドが機械式ペグで、ボディには美しいインレイが施されています。この図面はPDFデータのみを提供しており、現時点では紙焼きされた図面(青焼き)は販売していません。
●PDF形式データ(その1:約320KB、その2:約290KB) 無料ダウンロード
● A005:19世紀テルツギター(ファブリカトーレ)1833年:1枚一組です。
かのファブリカトーレでございます。独特の構造を持つ指板、イタリア〜〜ンなボディシェイプやブリッジ周囲の装飾が特徴です。ファブリカトーレはナポリの製作家でギターを6単弦化した最初の製作家といわれています。しかもテルツギターです(レア!)。テルツギターとは一般のギターより3度高く調弦される小柄なギターです。さまざまな作曲家によってテルツギター用の作品が作られています(かのタケミツ氏も書いてましたよね、たしか)。小柄なのでお子さま用ギターにもいいカモ。弦長は545mmです。ブリッジは交換されています。この楽器は私が修理しましたがほぼオリジナルコンディションです。現物楽器写真データは御覧のとおり
(写真1、写真2、写真3、写真4、写真5、写真6、写真7、写真8、写真9、写真10、写真11、写真12、写真13、写真14)
●PDF形式データ(約420KB) 無料ダウンロード
● A006:19世紀ギター(シュタウファースタイル):2枚一組です。
ドイツ〜ウイーン系ギターの図面です。ヘッドはインラインではなく8の字型ですがボディ各部はまさしくシュタウファーのスタイルです(シュタウファー自身も8の字型ヘッドを持つこのスタイルのギターを作っています)。このギターは表面板が3枚からなり、裏板は1枚、しかもボディの高音側と低音側の厚さが異なるというナゾナゾ系ギターです。重量はわずか840g。音はものすごく個性的で明るく軽やか。作者はわかりませんが19世紀末期に著名な製作家(リペア)によるリペアラベルが残っています。現物楽器写真データは御覧のとおり(写真1、写真2、写真3、写真4、写真5、写真6、写真7、写真8、写真9、写真10、写真11、写真12、写真13、写真14)
●PDF形式データ(その1:約360KB、その2:約310KB) 無料ダウンロード
● A007:19世紀ギター(ラプレヴォット)Ca.1820年:2枚一組です。
La prevotte Etienne (vers 1790-1856)
裏板を彫り出しによるアーチバック風のギターは18世紀末のナポリタンやミルクールのLAURENTなど昔からたくさん例がありますがラプレヴォットはその代表格といっていいでしょう。ラコートと並んで高く評価されるパリの弦楽器製作家で、ヴァイオリンなども製作していました。アグアドの肖像画にも登場するギターです。楕円(オーバル)サウンドホール、傾斜ネックセット、縦平行バー、バーレス・アーチバック、スカロップ指板となどのじ〜〜〜〜〜っつに個性的なスタイルを築きました。このギターはブロックにスタンプが無いことやラベル住所表記や各部の特徴から比較的初期のもので1820年前後に製作されたものと思われます。私が入手した時点ではかなりヒドイ改造がなされていました。現在修復途中です。現物楽器写真データは御覧のとおり
(写真1、写真2、写真3、写真4、写真5、写真6、写真7、写真8、写真9、写真10、写真11、写真12 )
・ブリッジは入手時に改造品が付いていましたので図面にはブリッジは描いてありません。考えられるブリッジの形状の例を次に写真で挙げておきます。時代的には写真1が近いと思いますが楽器の仕様の似たものが現存することから写真2や写真3もあり得ます。ラベルから見ると最古のスタイルのブリッジは写真4でしょう。
●PDF形式データ(その1:約390KB、その2:約320KB) 無料ダウンロード
● A008:21世紀ギター(Concept-2):1枚一組です。
CRANE のオリジナル・コンセプトモデル。シターン型で総黒檀。ネックはメイプルです。金属弦でもナイロン(ガット)弦でも張れますが金属弦は調弦がシビアになりますのでナイロン(ガット)弦をお薦めします。ここでは黒檀板は表面板と側面及び裏板に使用してありますが厚さは0.9mm 〜1.1mmです。黒檀の薄板が入手が困難な場合は側面と裏にメイプルを、表面板にスプルースを使えば良いでしょう。調弦はギターの3カポぐらいが良く鳴ります。複弦はオクターブでもユニゾンで張ってもかまいません。なお当クレーン・ホームページの「私の製作した楽器」コーナーに製作過程を掲載してあります。
現物楽器写真データは御覧のとおり(写真1、写真2、写真3、写真4、写真5、写真6、写真7)
●PDF形式データ(約330KB) 無料ダウンロード
● A009:ホセ・ラミレス1世 Jose Ramirez (I) 1909年 ギター:1枚一組です。
ホセ・ラミレス1世のギターです。パインのネックから見てもわかるように決して高級モデルではなく当時はむしろ国民的で身近な楽器でした。バンドゥーリャと並んでラミレス社の主力商品だったタブラオギターは耐久性が高く良く鳴る楽器として、アマチュアからプロまで広く受け入れられ、やがて不動の地位を築いていったのです。
当時の比較的安価な材料で構成されていたとはいえ、今となっては貴重な楽器です。スパニッシュ・シープレス(現在は入手困難)のボディはほとんど無傷、表面板の状態もわずかなストローク傷のみ、改造も無く、塗装も当時のまま、パーツも全てオリジナル(ペグ数本を除く)です。わずかなクラックをCRANE工房で修理しましたが、非常にコンディションの良いオリジナリティの高い楽器です。弦長613mmで弾きやすく、重量も833gと軽量。廉価モデルとはいえ工作のレベルが高く、手慣れた職人の技に圧倒されます。
この図面はA0判で、かなりデカイのですが、1枚のみで完結しています。また、内部写真も撮影して掲載してあります(苦労した)。なお、この図面はラミレス本社の承諾を得ての配布です。世間には無断で図面を描いて販売する会社や個人も多いのですが、知的所有権/工業所有権にかかわらず、生存する製作家や遺族・関係者があれば一言、承諾を得るのが礼儀というものです。
この図面の配布にあたって、許諾いただいたアマリア・ラミレス(Amalia
Ramirez)女史、そして図面作成にあたって協力頂いた製作仲間の乙竹(Hideo
Ototake)氏に心より感謝します。
I would like to express my gratitude to Ms. Amalia Ramirez for her
kind acceptance of our publication of the plan(drawing) and to my
friend luthier, Mr. Hideo Ototake, for his valuable assistance to
complete the plan.
現物楽器写真:外観(写真1、写真2、写真3、写真4、写真5、写真6、写真7、写真8、写真9、写真10、写真11)
現物楽器写真:内部(写真12、写真13、写真14、写真15、写真16、写真17、写真18、写真19、写真20、写真21)
●PDF形式データ(約660KB)A0判サイズ 841mm x 1189mm 無料ダウンロード
● A010:5弦ウクレレ(CRANEオリジナルモデル):A3サイズ2枚一組です。
CRANE
のオリジナルモデル。5弦ウクレレ。ソプラノ/コンサートボディに番外弦を追加し、ベース音を補う目的で開発しました。19世紀前期によく見られる拡張手法をヘッドの5番目の糸巻きに採用しています。2010年5月にキットからの改造で製作しましたが、図面そのものはそれ以前から描いており、細部の仕様はこまかく決めてありません。ですから、糸巻きも木ペグに限らず機械式もOK、弦長やサドルの構造やボディの厚み、ブレイシングなど、この図面をベースに作り手が自由にアレンジすれば、より深く楽しめることでしょう。
今回の図面は可能な限り家庭用プリンタでも出力できるように、A3用紙サイズで図面を描いています。
現物楽器写真データ(写真1、写真2、写真3、写真4、写真5、写真6)
●PDF形式データ1(約260KB)A3判サイズ 297mm×420mm 無料ダウンロード
●PDF形式データ2(約230KB)A3判サイズ 297mm×420mm
無料ダウンロード
● A011:マヌエル・ラミレス(1910年頃)ギター Manuel Ramirez Guitar Ca.1910 :1枚一組です。
さて、マヌエル・ラミレス ギターの登場です。修復の預かり物です。うちの工房にやってきた当時の状態は全身が黒いラッカーで塗られており、裏も横も指板やヘッドもぜ〜〜んぶ真っ黒のブラッキー・ラミレスでした。ひとまずその黒の塗装を剥がした時点で作業を中断し、採寸して作図したものです。指板とロゼッタとブリッジに白いインレイがありますが、当時のオプションなのか後世に付加されたものかは不明です(1800年代末期にはすでにセルロイドは存在した)。材料からみると当時の普及モデルかと思いますが、構造的にはやはりマヌエル・ラミレスの特徴が散見できます。ハカランダを使って上級モデルを作るもよし(^_^)
現物楽器写真:写真1 写真2 写真3 写真4 写真5 写真6 写真7 写真8 写真9 写真10 写真11 写真12 写真13 写真14 写真15 写真16 写真17 写真18
修復完了(2017年 夏)
●PDF形式データ(約300KB)A0判サイズ 841mm x 1189mm 無料ダウンロード