Concept-8 製作過程 その7
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- My original concept model -
Made by Makoto Tsuruda in 2019.


2019年4月4日公開:最新更新日Sunday, 04-Apr-2021 03:24:03 JST


 

CRANE コンセプトモデル 2019
  前回(その6)に引き続き第七弾です。

 

【その7】


【鶴田は昭和時代に製造された旧式サイボーグである】

製造:有限会社 鶴虎製作所
製造年:昭和中期
種別:人間型 甲種 零式
型式:T-03A
出力:0.001 馬力
四肢電源:単一形乾電池
頭脳制御:Z80 改 Ai
頭脳電源:バイオアルコール燃料(メルロー)

20世紀中期に鶴虎製作所によって試作機として開発された。ショッカーによって略奪され改造に失敗し、粗大ゴミとして高尾山中に不法投棄されていたものを、休日登山で通りかかったお茶の水博士が拾って持ち帰り復活させた。
両腕と両脚はそれぞれ独立した電源(単一乾電池もしくはその互換電池)とマブチモーターで駆動している。
さすがに半世紀を経ており、現在ではオイル切れと機械部品の摩耗が進み、電池を交換しても稼働時間は短かくせいぜい連続稼働で5時間程度となっている。近年はヒューズ切れで突然停止することも多い。
視覚装置は当初カール・ツアイス イエナ(旧東ドイツ)製の光学レンズで小型のフレクトゴン 35mm F2.4 を搭載していたがモノクロ仕様であったために、のちにカラー対応の富岡光学製に装換された。現在では焦点機能が劣化して老眼傾向である。
コンピュータを搭載しているくせにお金の計算が苦手である。頭脳は初期段階では真空管式であったが、やがて Z80 を元に当時軍用で秘密裏に開発されていた人工知能 Ai システムを搭載するなど当時の最新システムであった。その後モトローラ社のMC68030やPowerPC 601などに装換された時期もあったが、最終的には Z80 改 Ai に復元されている(ようするに退化した)。
記憶装置は旧式のフェライトコアメモリで容量は小さく、不揮発性だが破壊読み出しのため自分に都合の悪い記憶は積極的に消去される。しかも不完全良心回路のために挙動不審で 人間型サイボーグのくせにコミュニケーション能力が著しく低い。そのくせ、言い訳は得意である。
頭脳系はバイオマスアルコール燃料(シャトレーゼ社製 樽生ワイン メルロー)により動作する。
すでに老朽化が進んでおり、過負荷な運動を強いると容易に5体が分裂する。
いつ市役所が回収してスクラップになってもおかしくない状態であるが、世界平和のために日夜言い訳をしながら戦っている。

 

 

ネックは前回までで完成したので、ボディの続きを完成させましょう。
裏板をボディに接着する工程からまいります。
スプールクランプをボディの外周に並べて使用個数とクランプを掛ける場所を決めておきます。とくに今回は2つの大きなサイドサウンドホールがあるので要注意。
前もって全てのクランプのネジ山を清掃して軽く注油してメンテナンスしておきます。ここもニカワで接着するので、締め上げる蝶ネジは指先ではじいて軽く5回転ぐらいで瞬時に上げ下げできるようにしておけば作業が俊敏に行えます。

 

 

側面板に裏板が接着され、いわゆるの状態になりました。わずかにはみ出している表面板と裏板の周囲を削って均して側面板と面一(ツライチ)にします。こまかい作業の写真は割愛。指板のフレッチングと弦長(616mm)を鶴田自作のプログラム TSULTRA FRET で再確認してネックを仮組みして弦長をマーク。表面版の位置にブリッジ位置を確定してマスキング。細かい作業は長くなるので割愛!
写真をよく見ると ... ブリッジの幅が変更され両端が短くなっているところに気付いたアナタは弦楽器製作家の素質有り。

  

 

さて、ビンディングの作業です。今回のモデルではパーフリングは余計な装飾と考えて排除しているのでシングルビンディング1本のみで完結します。トップ、サイド、バックの接着面をしっかりなめらかに均して正確なシェイプに整えておきます。そうすればビンディングカッター(写真ではパーフリングカッター) で忠実なシェイプにカットすることができ、スキマが発生しにくいわけです。

 

 

ドレメルのルーター(旧型で20年以上使っている)には Stewmac や Waverly などからオプションがたくさん出ており、そのうちのビンディングガイド(トリミングガイド)を鶴田は愛用しています。写真の赤い筒状のものがそれです。ウチの工房では小型楽器が多いので、キツイRでも削りやすいように自分で改造しています。

ボディの角に沿って外周を数回に分けて削っていきます。
しかし ... 作業も2周目ぐらいになると右手に震えがきて、いつものようにうまく削れません。どうした!?

去年は左手の故障で1年間ほど痛くて労災認定を受けて治療していたのですが(#ギターもまともに弾けなかった)、それをかばうために右手が頑張ったのです。結果、左手が良くなった頃には右手が痛い。今でもまだ両腕は完全に治っていません(#まぁ、昭和のサイボーグだしね)。
痛みに耐えつつ、なんとか全周を削り終えました。ボディ内部から覗くと紙一枚程度で厚みが残っているのがわかります(あとでもう少し深くサンドペーパー等で調整するので最後は穴が開くことになりますが)。

 

 

本黒檀を糸ノコ盤で細長く切り出してベンディングアイロンで曲げます。曲げたあとに接着面側の角を面取りしておきます。それをニカワでさきほどの溝に接着していきます。スペイン式だと一気に接着剤を付けてヒモで縛り上げるほか、テープで固定する方法もあります。
私の場合は部分範囲ごとに接着を繰り返して一周しますが、カーボンクランプで水平方向に圧着し、スプールクランプで垂直方向に圧着してニカワが乾くのを待つと .... 。Rがいちばんきついウエスト位置から接着を始め、次に肩部分、そのあと腰からお尻にかけて接着していきます。溝が正確に切ってあってもビンディングがそれにピッタリ合わないと水平面または垂直面にスキマができます。本黒檀は硬いので部分的に曲げが足りない部分などは写真のように三角テープでマーキングしてクランプのトルクを加減し、膠の乾燥時間を長めにとることでピッタリフィットします。
黒檀のビンディング作業、昼の仕事の繁忙期のおかげで2週間もかかってしまいました。いつもなら2日とかからないのですが。

  

 

左右のビンディングが合掌する部分の写真です。超音波ナイフでキッチリと接合面を揃えています(#ヤスリ類だと丸くなりがちだからね)。
そして! 今回は特別仕様として表面板からわずかにビンディングを一段上げます。つまり表面板と同じ面まで削らずに缶詰の上底面のようにフチがせり上がっている構造です。たしかフィレンツェの製作仲間のウィリアム・マリネッロ(William Marinello / momojiriguitars)さんもこういった楽器を作ってましたね(詳しくは近いうちに完成写真にて)。

 

 

次の写真は側面板とツライチ(同一面)になるようにビンディングをサンディングちゅう ... 。
そして次の工程の塗装に備えてボディ全体を番手を変えながらなめらかになるまでサンディングを繰り返します(#ひたすらサンディング)。作業中はボディ内部に砥の粉が入らないよう内側からフタを貼っておきます。
このモデルでは後世の製作家やリペアマンがメンテナンスしやすいように裏板にはビンディングは使っていません。

 

 

あれこれこまかい作業は割愛。ホワイト・ギターの完成です。写真の表面板はマスキングして薄く塗装しています。
ネックも同時進行して先に塗装を終えています。
これからボディの塗装工程へ進みます。昼の仕事も超が3つぐらい付く繁忙期でピークを迎えていましたが、ようやく峠を越えまして超が2つぐらいまで減ってきました。

 

 

ふぅ ... 

つづきは「その8」にて掲載します。 いよいよ完成です。

 

2019年4月4日公開  元号は「平成」から「令和」に決定されました。 「根性」でなくてよかったです .....

by Makoto Tsuruta, TOKYO JAPAN.
 
  

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