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最終更新日:Saturday, 13-Feb-2016 00:47:36 JST 
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(C) Makoto Tsuruta
INDEX:http://www.crane.gr.jp
記事:2006.12.01
About AudioBASIC Sample CD

 
新刊の御案内

10年後も「定番」いい音を選ぶ
(株)共同通信 オーディオベーシック編集部(AUDIO BASIC MOOK21) 試聴CD付録 価格1500円
ISBN4-7641-3085-8

 

 

2006年12月1日「オーディオベーシック」のムックが発売です。このなかに19世紀ギターの特集が組まれています(フルカラー8ページ)。そしてモダンギターと19世紀ギターの演奏が収録された音楽CDが付録として付いているのです。んでもって、その記事と録音などを私が担当したってワケです。

 特集:19世紀ギターの21世紀 「蘇るヴァーチュオーゾ」

 

録音に使ったモダンギターは6弦の楽器が松井、今井、櫻井それぞれの聴き比べができるほか、松井10弦ギターも収録されています。そして19世紀ギターに関してはフランス製、オーストリア製(カンガルーはいません)、スペイン製、それぞれ150年以上前に製作されたピリオドの楽器で演奏されています。楽器によってはガット(羊腸)弦も張ってあります。付録CDは全21曲で約63分間という雑誌の付録にしてはかなりのボリウムです。奏者は近年数々のギターコンクールで優勝している藤元高輝さん(中学2年生)、スタジオミュージシャンの田代耕一郎さん、そしてオマケでスットコ鶴田が2曲弾いてます。

今回の企画は本文原稿のほか奏者依頼、選曲と曲順設定、録音技術、音声編集、マスタリング、写真撮影、CD紙ジャケットデザイン、本文DTPまで私がすべて一人で手がけています。プロデュースと呼んでも遜色ないぐらい働きました。まぁ、編集部から丸投げされたようなもんですが(^_^)。全てをまかされているかわりに私の好きなようにやらせてもらいました。基本的に編集部の意向は無視(笑)。あ、いや、少しは反映されてます。会社のお金で好き勝手な記事とCDが作れるとは、なんてキモチいいんでしょう(笑)。

 

・株式会社共同通信 AUDIO BASIC
 http://kk.kyodo.co.jp/netroom/pb/ab/index.htm

ムックとは:もともと「AUDIO BASIC」誌は季刊の音響雑誌ですが、今回御紹介しているのはそのムックです。ムック(MOOK)というのは magazine と book の合成語。A4とかの大きな判が一般的で写真が豊富なため「雑誌」に見えますし実際雑誌コードが付いて流通していますが「書籍」や「文庫本」のように発行されていて書店でも書籍のように扱われ陳列されるのが特徴です。もっとわかりやすくいえば「世界の名車:フェラーリ」みたいに、あるテーマに特化した内容の雑誌であるため書店では趣味のコーナーなどに常に置いてあることが多いのです。その販売月が過ぎたら雑誌のように店頭から姿を消すわけではありませんので常に書棚にあったり、あとから注文もできます(在庫のある限り)。

 


 

内容紹介/補足説明など

さて、モダンギターと19世紀ギターを聴き比べるという、世界でも珍しい企画の本とCDです。しかもオーディオ誌ということもあって「聴き比べが主なテーマ」ですから一般の商品としてレコード屋さんで販売されている音楽CD(クラシックギターのアルバム)とはチト違います。つまり必要以上に音をいじってありません。基本的には飾らない生録の音に近い状態で聴くことができるのが大きな特徴です。過去に名器を使った録音としてトーレスやパノルモなどを用いたCDが発表された例は世界中にいくつかありましたが、ほぼ全てが過剰なリバーブをかけてコンプレッサーで振幅調整し、必要以上のイコライザ処理で音質を変えたものでした。つまり楽器の持つ音色の比較が目的ではなく「鑑賞」のために制作されていたのです。

ところが今回ははっきりいって「実験」の性格が強い録音です。奏者の息づかいやツメの音や服と楽器がこすれる音、あるいは周囲のささいな物音や雑音すらも聞きとれます。雑音を目立たなくするには前記の深いリバーブなどで加工すればいいのですが今回はほとんど手をかけないことを原則としました。ポップやクリック音ですらほとんど処理していません。リアルでかえって聴きづらい曲もあるかもしれません。観賞用ではなく「実験」としての試聴CDであることを念頭に置いて聴いたほうがいいカモ。


ちょいと高価なマイク NEUMANN U87Ai

 

 

【付録CDについて】

なんだ、そうか、オーディオ雑誌のための実験CDならソルやコストの練習曲が5〜6曲収録されていれば充分じゃないか、と思ったらオオマチガイ。どうせなら繰り返し聴きたくなるような楽しめる1枚にしたい、そんな私のイヤラシイたくらみがあったのです。さて、以下に挙げるのが今回の付録CDに収録される試聴曲の数々です。

 

■19世紀ギターの21世紀 (蘇るヴァーチュオーゾ) 全収録21曲 [62:55]

[01] Gt:Matsui10 「ソナタ K42」 D.スカルラッティ作曲 [1:11]
[02] Gt:FrFrp 「36のカプリスOp20」よりNo.7 L.レニャーニ作曲 [1:30]
[03] Gt:FrFrp 「モーツァルトの魔笛の主題による変奏曲(前奏付)」 F.ソル作曲 [8:00]
[04] Gt:FrFrp 「ソナタ K175」 D.スカルラッティ作曲 [2:14]
[05] Gt:Imai 「セビーリャ」 I.アルベニス作曲 [5:53]
[06] Gt:Imai 「熊蜂」 E.プジョール作曲 [1:06]
[07] Gt:Matsui 「熊蜂」 E.プジョール作曲 [1:05]
[08] Gt:FrMp 「ソナタ K377」 D.スカルラッティ作曲 [2:37]
[09] Gt:FrFrp 「スケルツォ・ワルツ」 M.リョベート [2:53]
[10] Gt:Sakurai 「アルハンブラの想い出」 F.タレガ作曲 [1:59]
[11] Gt:Matsui 「スペイン風セレナータ」 J.マラッツ作曲 F.タレガ編曲  [4:11]
[12] Gt:FrMp 「ロンドレット」 M.ジュリアーニ作曲 [5:13]
[13] Gt:Wien 「蛙のガリアルド」 J.ダウランド作曲 [1:38]
[14] Gt:FrMp 「ファンタジア 第10番」 ムダーラ作曲 [2:02]
[15] Gt:Esp 「あなたが欲しい(ジュ・トゥ・ヴー)」 E.サティ作曲 田代耕一郎編曲 [4:00]
[16] Gt:Esp 「G線上のアリア」 J.S.バッハ作曲 田代耕一郎編曲 [3:10]
[17] Gt:Esp 「別れの曲」 F.ショパン作曲 田代耕一郎編曲 [3:25]
[18] Gt:Esp 「ジムノペディ第一番 」 E.サティ作曲 田代耕一郎編曲 [3:31]
[19] Gt:Esp 「練習曲」 F.ソル作曲 田代耕一郎編曲 [2:03]
おまけ[20] Gt:Wien 「Sonata de Mision」 シフラの曲集より [3:58]
おまけ[21] Gt:FrFrp 「アレグレット」 M.ジュリアーニ作曲 (未編集の生データ) [0:29]


難曲だらけじゃん! フツ〜に名曲揃いですね。オーディオ誌なのでギター愛好家のみを対象にしていません。ですからギターマニアのための曲集にはしませんでした。むしろまったくギターに興味のなかった人々に関心を持っていただけると幸いです。他にも録音しましたが容量の都合など諸般の事情で収録できない曲もありました。

 
使用楽器は工房CRANE提供
つまり鶴田の修復楽器です

  

 

【使用楽器と奏者】

さて、使用楽器と奏者を掲載しておきます。以下を御覧ください。記号の FrFrp などは使用楽器の略称です。本文では使用楽器について写真付きで解説してあります。

[01]〜[14] 演奏:藤元高輝 スタジオ・クレーンにて収録
[15]〜[19] 演奏:田代耕一郎 スタジオアルケミーにて収録
[20]〜[21] 演奏:鶴田誠 スタジオ・クレーンにて収録
 

Gt:FrFrp フレンチ19世紀ギター 無銘(木ペグ/メイプルボディ/弦長630mm/1弦ナイロン 2,3弦羊腸 4弦羊腸ルクスライン)
Gt:FrMp フレンチ19世紀ギター 無銘(機械ペグ/ハカランダボディ/弦長630mm/1,2,3弦は羊腸弦)
Gt:Wien ウインナー19世紀ギター 無銘(木ペグ/メイプルボディ/弦長610mm/1,2弦は羊腸弦 3弦羊腸ルクスライン)
Gt:Esp スパニッシュ19世紀ギター マヌエル・ロペス(木ペグ/弦長630mm/1,2,3弦はナイロン弦)
Gt:Matsui モダンギター 松井邦義 2006年 (松・ハカランダ/弦長650mm/ナイロン弦:プロアルテノーマル)
Gt:Imai モダンギター 今井勇一 2006年 (松・ハカランダ/弦長650mm/ナイロン弦:プロアルテエクストラハード)
Gt:Sakurai モダンギター 櫻井正毅 2005年 (RFモデル/松・ココボロ/弦長650mm/ナイロン弦:プロアルテノーマル)

Gt:Matsui10 モダンギター10弦 松井邦義 2003年 (10弦/松・ハカランダ/弦長650mm/ナイロン弦↓)
モダンギター10弦 松井邦義の使用弦:1〜6弦 サバレスコラム ハード、7弦:ハナバッハ ハード(8弦使用)、8弦:サバレスコラム ロー(5弦使用)、9弦:サバレスコラム ハード(5弦使用)、10弦:サバレスコラム ロー(6弦使用)



鶴田自作のガット(羊腸)弦とラコートスクール



  

【選曲と演奏について】

古典やロマン派の曲はもちろん収録してありますし当初からそのつもりでした。ただ、あえて19世紀ギターでルネサンス期の曲を弾いたり、モダンギターでバロック期の曲を弾いたりもしています。そして試みとして19世紀ギターを使ってちょっとポップなアレンジの曲も収録してみました。サティやショパンも19世紀の音楽家ですが、こんな雰囲気で楽しむのもよろしいかと?

なお、私のほうから一方的に曲を押しつけても奏者のモチベーションが上がらないと良い演奏は期待できませんから、今回の選曲にあたっては奏者の希望も可能な限りとりいれました。つまり私と奏者とで好きな曲を選ぶのですよ。奏者がヤダっていう曲は省きました(笑)。演奏家の市販CD(アルバム)制作だとレーベルやレコード会社の意向が強くはたらくのでこうはいきませんね。

予算的な都合や権利関係の処理の都合から今回は著作権をクリアできる曲に絞り、P.Dの楽曲がメインです。世代を越えてなじみの深い曲も多いので63分間を楽しみながら聴けるかと思います。あれ? 目的は鑑賞じゃなくて実験CDでしたね。

 
 

 

【本文・解説記事について】

当然ながらここに本文の全てを書くワケにもいかず、まぁ、見出し程度は紹介しておきましょう。このほか録音に関するエピソードなどが豊富に掲載してあります。

・今なぜ19世紀ギター?
・そもそも19世紀ギターって?
・19世紀ギターの種類と構造
・世界各地の楽器の特徴など
・19世紀ギター図鑑(写真で様々な楽器を紹介)
・イザ!録音・弾きくらべ(奏者紹介と録音風景)
・CD収録曲の解説
・ギターの雑音と録音
・弦の問題(楽器を壊さないで)
・弾き方の問題
 

 

【大奮闘】

藤元さんと田代さんにはホント大活躍してもらいました。予算の都合もあってものすごく安いギャラでこれだけやってもらえるとは感謝、感謝、ひたすら感謝です。ほとんどボランティアで弾いてもらいました。ですから多少の難アリ箇所は勘弁してください。そんな事情で私も基本的に演奏にこまかい注文はつけ難く、本人たちにもせめて楽しんでもらえればいいんだけどなぁと思うほどでした(タイヘンだったと思う)。時間的にも制限があり締切の都合から信じられないぐらい短期間で仕上げました。私の編集にも反省点は少なくありません。藤元さんの録音なんかわずか6時間で20曲ちかくを録ったぐらいです(どの曲も1テイク〜3テイク)。このへんが市販のCD制作と違って時間もお金もかけられないところ。有名な演奏家のアルバム作りとは違って専門の録音エンジニアもいませんし、スタジオを借り切って2週間合宿で録音なんてとうてい無理。機材だって手持ちのわずかなものと、多くは音響メーカーに貸してもらったのです(だから最後に機材紹介のワクを設けねばならなかった)。幸い私の工房が完成したばかりで簡易スタジオとして録音前提に設計してあるのが救いでしょうか。誌面もカラーとはいえ8ページの制限がありました。言いたいことの全てを書くことはできませんでしたが、今までギターに縁が薄かった方々でも19世紀ギターの世界の概要を御理解いただけるように努めたつもりです(なかなか難しいんだコレが)。

鶴田の駄文にゲラゲラ腹を抱えつつ、ビール飲みながら付録CDを聴く。あ、いや、正座して聴きましょう。藤元さんの演奏がCDで聴けるのは今のところコレだけ。田代さんの素敵なアレンジを19世紀ギターで聴けるのもコレだけです。インターネットの圧縮されたMP3じゃなくてCDでちゃんと聴けば音色の違いもナルホドと納得。この値段でこの内容なら大満足.... のハズ。 さぁ! 書店へ直行だ!! え? アマゾンで買うって?

 

   


 

【参考】

 

藤元さんと田代さんについてのWebサイト

・藤元さんについては現時点では御本人のオフィシャルサイトはありませんが、藤元さんの現在の師匠である新井伴典(バンテンさんだ!)さんのサイトにてコンクール受賞歴などが掲載されています。新井さんの教室では数々の優れた演奏家を輩出し、コンクールで常勝する門下生がゴロゴロしてます(素晴らしい)。なかなかこういった指導者というのは見あたらず、スゴイ教室だと思います。今回の企画では新井さんと藤元さんの御両親には多大な御協力をいただき、この場を借りて心より御礼申し上げます。

・田代耕一郎さんといえばクレーンホームページを御覧の方ならすでに御存知。楽器の扱いや演奏、編曲、録音技術、写真撮影、多岐にわたる才能といい、仕事ぶりといい、私も学ぶところが大きい現代のヴァーチュオーゾ。TassiHomePageにて輝ける経歴と実力を知ることができます。各種民族楽器の演奏データもインターネットの世界では早期から公開されてきたことで知られています。テレビやラジオ、映画にライブと広範囲に活躍中。きっとアナタもどこかでTassiのプレイを耳にしているハズ。

 

 

市販のCDケース用表紙と裏表紙(PDF形式) 

このムックには折り込みとしてCDが挟まっているわけですが、これは一種の紙ジャケットです。本書と共に保管いただいて時々CDを取り出して聴くことになるのですが折り込みなので傷みますし、ディスクだけ常にCDラックに置いておきたい方もあるでしょう。そこで市販のCD空ケースを流用して今回のCDを収納できるようにと以下に印刷物を作ってみました。お手元のプリンタで印刷して切り抜いて御利用ください。

AudioBASIC2006WCD.pdf [4.6MB]

 

 

 

2006年11月30日 CRANE HomePage

 


 

【補足・訂正】

本書はアマゾン(AMAZON.CO.JP)でも買うことができます。

P117の中段あたり: ..... 1836年だったか1931年だったか → ....1936年だったか1931年だったか

  

 

2006年11月30日, 12/06 update CRANE HomePage 



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