Concept-8 製作過程 その2
LastUpdateSunday, 10-Mar-2019 22:58:47 JST 
(C) 2019 Makoto Tsuruta / CRANE Home Page


- My original concept model -
Made by Makoto Tsuruda in 2019.


2019年2月16日公開:最新更新日Sunday, 10-Mar-2019 22:58:47 JST


 

CRANE コンセプトモデル 2019
  初回(その1)に引き続き第二弾です

 

【その2】



さて、コンセプト8 の製作紹介の二回目です。今回は一般的なギターのサウンドホールとは異なるサイドサウンドホールを採用します。
海外のアコースティックギターの世界ではだいぶ前から行われていましたが、近年では日本の製作家にも見られるようになりました。
弾いてる本人も心地良く鳴るのでモチベーションも上がる?効果が期待できます(ホンマかいな!?)。モチベアップホールとでも言うべきでしょうか。

小さめの穴であれば最初に穿孔しておいて、そのあとベンディングしても良いのですが、今回は開口面積を大きめにとっています(理由はのちほど)。そのため側面板を曲げたあとに補強板を貼ってくりぬいたほうが歪みなく綺麗に丈夫に仕上がると考えたからです。
とはいえ、実際に湾曲面を加工するとなると材を固定しづらくて簡単ではありませんな ... 。

 

ハンドビットを使って4箇所に穴を開け、糸ノコでゴシゴシ切り出します。地味な作業で時間がかかります。
この写真はギターのボディのロアブーツ、つまりオシリというか腰のあたりです。

 

これは反対側の側面板。こちらのサイドサウンドホールはアッパーブーツ、つまり肩の部分に穴を開けています。
ようするに完成するとギターを構えたときに奏者のアゴを向いた穴がひとつ。太もものあたりにもうひとつサイドサウンドホールがあると。
検索して調べたわけではありませんが、おそらく世間で見かけるサイドサウンドホールはアゴ側の1個である場合がほとんどです。
今回2つにした理由も後日書きたいと思います。
(調べていろいろ見ると影響されそうなので意図的に他の作例は見ないようにしています)

 

切り抜いた部分の断面を見て密着度を確認します。一緒に重ねてベンディングするには厚いので側面板と補強板は別々に曲げたのです。すると微妙にR が違ってきます。こういった湾曲面同志はピッタリ接着するのが難しいのですが、どうやら目立ったスキマも無いようで一安心。
これぐらいの厚みがあれば充分ですが、材が板目でやわらかめなので側面板をあとで若干補強します。

 

次に穴のフチをサンディングしてバリを取ってなめらかにします。
紙ヤスリを丸棒のサンディングブロックに貼り付けてゴシゴシやるのですが、手頃なサイズの円柱材が見当たらず .... 工房やら倉庫などをひととおり探してもいまひとつサイズが合わない .... う〜〜〜ん。

はっ! 思わず書斎にこんなものが .... リポビタンD しかも11(イレブン)。
オシャンティーな弦楽器工房にいきなり所帯染みたものが登場。
先日、シゴト中に風邪気味でグッタリしていたら隣の席の職員に頂いたものです。
左手を腰にあててラベルを読みながら南東に向かって飲むのが伝統的な作法とされています。ゴクゴク ....
ラベルに目をやると、なになに? 指定医薬部外品、アルギニン配合、集中力の改善(ホントか?)、人生の疲れに、だってさ。

 

.... ウソですよ。ホンモノのラベルはコチラ

ファイト〜〜〜ッ! イッパ〜〜〜〜ツ! 昭和のテレビコマーシャルで一世を風靡しましたな。
今や低カロリー版とかレディースとかノンカフェインとかバリエーションが豊富です(#大正製薬やりすぎ)。
昭和の汗臭い努力や根性といった路線から近年は爽やかなイメージへ。これも時代ですな。

 

え〜〜と、何の話でしたっけ?

あぁ、側面板の作業の続きでしたな。御覧のとおり左右ともうまくサイドサウンドホールが開きました。パチパチパチパチ .....
肩と腰の部分です。この写真でわかりますかね?

 

木型に入れて側板の長さを調整し、ネックを仕込むために部分カット。ネックブロックの V 型溝に合わせます(途中の作業は長くなるので割愛)。ここで少し方向転換。最初はボディの厚みが徐々に薄くなるように考えていました(ギターを横から見たときにわずかに台形)。しかし世の中には厚みがほぼ同じギターというのもありますから、伝統にこだわることも無いので横から見てほぼ長方形になるように仕様変更します。ブロックに下駄を履かせます。CRANEのコンセプトシリーズではごく当たり前のごとく変更しながら作ります。

 

はい、ネックブロックの接着です。皆さん御存知のとおりウチの工房では基本的に膠(にかわ)で接着します。
写真の手前に写っているのがおなじみのTSULTRA GLUE POT AUTOTEMP です。

 

ネックの作業をやっていますが、長くなるのでこれらもほとんど割愛。
いつも平日は夜中の2時ぐらいに作業しているワケですが、近年は寄る年波のせいか体も頭も重いですな。さすがに。
もう若くないのだ。徐々にジジイになるのであろうか .... そんなことをボンヤリ考えながらベルトサンダーで木材を削っていたら、突然サンディングベルトが切れて停止。
あちゃ〜〜! せっかくノってきたところなのに ... 。

そーのーとーきーよーしーつーねーすーこーしーもーさーわーがーずー

工房にストックしてあったスペアベルトに交換。あぁ、ヨカッタ、ヨカッタ。
すぐに作業復帰 .... と思いきや、使い始めてすぐにまた切れました! ひえ〜〜〜! なんで?
よく見るとつなぎ目の繊維の接着剤が剥がれています。

あちゃ〜〜! 新品なのに ... (#10年前のね)。
これでくじけて寝てしまうかと思ったらオオマチガイ! OH! much guys!

じつはメーカー違いのスペアベルトもストックしてあるんですね。これが。イヒヒヒヒヒヒ ......!
このあたりは経験則です。道具というのはいろんなクセや傾向を把握して使うことが大事だと考えています。
コチラのメーカー品は10年を経てもまったく丈夫で切れません。同じ日本製なのですがノウハウが違うのですな。

たかが紙ヤスリ。されど紙ヤスリ。
世の中にはこういったモノにコダワリをもって耐久性を高め地味に工夫する人達がいるわけですよ。
作業再開、あれこれ作業して一段落。
サンディングベルトの違いに妙に感心して就寝。明日も朝が早い .....

 

つづきは「その3」にて掲載。

 

 

【参考】

・Wikipedia:リポビタンD 1962年発売でシェアの50%を誇る、恐るべきベストセラー。CMの歴史を読むだけでも小一時間かかる。

  

 

2019年2月16日公開
by Makoto Tsuruta, TOKYO JAPAN.
 

 

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