Concept-5 (7strings Terz)
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(C) 2007 Makoto Tsuruta /
CRANE Home Page


- My original concept model -
Made by Makoto Tsuruta in 2007.


 

【写真】

PIC 001 : ヘッド部分は7弦
PIC 002 : 指板上には6本、+板外に1本
PIC 003 : サドルは7弦のみ独立
PIC 004 : 指板は貴重な材ウエンジ



 

CRANE コンセプトモデル2007 ( 2007年5月完成)

昔の楽器のコピーではなく私の考案したオリジナルモデル。それが「CRANE Concept Model」であります。 シリーズもいよいよ5作目。さて、今回2007年の「Concept-5」はテルツギターの7弦です。これもまた小型楽器という意味では Concept-1 〜 Concept-4 に通じるところがあります。

 

そもそも発端は...... 以前入手していた19世紀のフレンチのテルツギターを2006年に修復しました。作業中、観察すればするほどボディシェイプやヘッド形状、ネックのバランス、各部パーツのサイズなど、じつに美しく構成されていることを思い知らされたものです。19世紀当時の製作家のセンスの素晴らしさに激しく感銘。造形デザインの歴史的好例です。とくにボディ、現代においてこのサイズのギターをここまで整ったシェイプでデザインできる製作家は自信をもって皆無です。修復を終えてまもなくコピーモデルを去年2006年に製作しました。じつはそのヒストリカルコピーを製作する機会に自分のオリジナリティをこのスタイルに盛り込めないものか、と思いたちました。そうして同時進行で製作したのがこの楽器です。つまり同じ親をもつ双子ですな。

 

 

どうして7弦?

小柄なボディと短い弦長の場合は低音域を弦の数のみで拡張しようとしても「鳴り」には限度があります。今回の楽器は6弦のさらに低い音に調弦して7弦めを使うことももちろん可能ですが、むしろ楽曲に合わせて任意にベース音を独立弦に割り当てて鳴らすことが目的です。

一般的なプライムギターでソロを弾く場合を考えてみましょう。多くのギター向けの曲はベースがEかAです。ではそれ意外のキーの曲は? 例えばGがベースの場合、6弦の3フレット(G)を押さえながら他の弦でメロディや分散コードを弾くことが多くなります。そう、左手がけっこうツライです。私の手元にあったスペイン民謡「ラ・パロマ」の楽譜はまさにそれでした。そこで7弦があればそれをベース専用としてGに調弦し、開放弦でベースを鳴らすことで左手の自由度を高めようとたくらんだ..... 、おっと、工夫したわけです。従ってフレットも無視して板外弦でオッケー。19世紀当時も板外弦の7弦ギターが数多く作られたり改造されていましたが、おそらく目的は私の意図するものと同じであったのだろうと推測します.....。

入手できるギター専用の楽曲には限りがあります(名曲ばかりじゃなくてつまんない曲だって多い)。しかも自分のウデで弾ける範囲となるとさらに限られるわけで...(+_+) 私はプロの演奏家ではないので「練習」というよりも、たんに弾いて音楽を楽しむのが目的ですからすぐに飽きてしまいます。そんなときはピアノの楽譜(ピースや曲集)を買ってきて弾きます。ピアノのために作曲された曲だけでなくピアノ向けに編曲したもの、つまりオーケストラの曲や映画音楽やポピュラーミュージック、民謡・古曲にいたるまでじつに豊富です。楽しめますよ、これは。だけどギターじゃ弾きにくい曲が多い。逆にいえば弾きたい曲があるんだけどギターの調弦に合わない、なんていう場合にも7弦の独立したベース音が活躍するハズなのです。

実際、Concept-5の7弦を様々なベース音に調弦して弾くことで、いくつもの曲がらくに弾けて楽しめるようになりました。あまり恩恵を感じない曲もありますが(笑)。7弦楽器に慣れるまで少し時間がかかりますが慣れると楽しいです。今回のConcept-5は邪魔なときは7弦を外してフツ〜の6単弦ギターとしても弾けます。もちろん古典派、ロマン派の曲(テルツギター向けに書かれた曲を含む)を弾くもよし。たんに弦長が短い小柄な楽器としても重宝します。弦長530mm(テルツにしてはさらに短かめ)ですし、弦高も低く調整してあることも手伝い、指板幅も狭いので手の小さい人には歓迎されそうです。手の大きな人には弾きにくいかもしれません。ボディを薄く軽く作っているためかルネサンスのリュート曲等とも非常に相性が良いです。

ちなみにテルツ調弦では g1、d1、a#、f、C、G に調弦しますが、張力を計算して弦を選びなおせば一般的なプライムの調弦と同じにすることも可能(低音はちょっと物足りないかな?)です。 

 

さて、そんなかんだで以下の調弦例を御覧あれ。

【CRANE テルツギター 7弦モデル 2007年5月完成】
弦長530mm+605mm A=440Hz 総テンション約28.7kg+3.6kg  平均テンション約4.6kg

1弦 g'4 (g1):ナイロン POWERD 10号 0.52mm 4.0kg
2弦 d'4 (d1):フロロカーボン(シーガーエース 12号) 0.57mm 4.5kg
3弦 bb3 = a#3 (a#):フロロカーボン(シーガーエース 18号) 0.70mm 4.2kg
4弦 f3 (f):キルシュナー社 VNG5116 4.8 kg
5弦 C3 (C):キルシュナー社 VS5165 5.4 kg
6弦 G2 (G):キルシュナー社 VN5230 5.8 kg
7弦 Bb2 = A#2 (A#):キルシュナー社 VN5132 3.6kg

例1)キルシュナー社 VN5190 の場合はA1(1.6kg)、Bb1(1.8kg)、C2(2.6kg)、D2(2.9kg)
例2)キルシュナー社 VN5165 の場合はF2(3.2kg)もイイカモ。
例3)キルシュナー社 VN5140 の場合はF2(2.3kg)はちと弱いかな?


7弦はせいぜい4kg以下のテンションで充分。そのほか、約1.6kg〜3.5kgの範囲であれこれ弦を選んでみました。ちなみにVN5132でもC2〜D2範囲を1本の弦でカバーすることも不可能ではありません(C2はかなりゆるい)。



2008年6月28日 記事追加

【CRANE テルツギター 7弦モデル 交換弦の候補:羊腸】
弦長530mm+605mm A=440Hz 総テンション約28.7kg+2.8kg  平均テンション約4.5kg

1弦 g'4 (g1):ガット(羊腸)弦 0.48mm キルシュナー社 DL5048 4.0kg
2弦 d'4 (d1):ガット(羊腸)弦 0.66mm キルシュナー社 DL5066 4.5kg
3弦 bb3 = a#3 (a#):ガット(羊腸)弦 0.82mm キルシュナー社 DL5082 4.2kg
4弦 f3 (f):キルシュナー社 VNG5116 もしくはKN5116かKDL5116 4.8 kg
5弦 C3 (C):キルシュナー社 VNG5165 もしくはKN5165かKDL5165 5.4 kg
6弦 G2 (G):キルシュナー社 VS5230 もしくはKN5230かKDL5230 5.8 kg
7弦 Bb2 = A#2 (A#):キルシュナー社 VS5155 4.4kg 7弦はやはりこの程度がいいかな? F2だと(2.8kg)


 



2009年5月31日 記事追加

いちおうプライムで弾く場合を計算してみました。実際の楽器に張って弾いてみないとピッタリマッチするかわかりませんが参考にはなるでしょう。

【CRANE テルツギター 7弦モデル 交換弦の候補など】
弦長530mm+605mm A=440Hz 総テンション約26.4kg+αkg  平均テンション約4.4kg

【羊腸高音弦セット】
1弦 e1:ガット(羊腸)弦 0.58mm キルシュナー社 DL5058 4.2kg
2弦 b:ガット(羊腸)弦 0.79mm キルシュナー社 DL5079 4.3kg
3弦 g:ガット(羊腸)弦 0.97mm キルシュナー社 DL5097 4.2kg
4弦 d:キルシュナー社 VNG5136 4.6 kg
5弦 A:キルシュナー社 VNG5185 4.6 kg
6弦 E:キルシュナー社 VNG5240 4.5 kg
7弦 C ~ D:キルシュナー社 VNG5230 3.4kg 〜 VNG5230 4.3kg  A1だと(2.4kg)


【ナイロン&カーボンセット】
弦長530mm+605mm A=440Hz 総テンション約25.9kg+αkg 平均約4.3kg

1弦 e1:ナイロン 0.62mm 4.0kg
2弦 b:ナイロン 0.84mm 4.1kg
3弦 g:フロロカーボン 0.85mm  4.3kg
4弦 d:キルシュナー社 VN5132 4.4 kg
5弦 A:キルシュナー社 VN5190 5.0 kg
6弦 E:キルシュナー社 VS5230 4.1 kg
7弦 C ~ D:キルシュナー社 VS5230 3.4kg 〜 VS5230 4.3kg  A1だと(2.4kg)


 

仕様

基本的に天然素材のみでプラスチックやセルロイド類、アクリル塗料などは一切使っていません。
木材のほかは黒檀と象牙からなります。ボディの側面板と裏板は音色を狙って1mm以下の突き板(ウォールナット)を使っているので少しうねりがありますが、おかげでタッチには敏感で音量も充分あります。重量はわずか550g足らず。弦高もかなり低く調整してあるので弾きやすいです。弦蔵の第7番目の構造は19世紀当時によく行われた改造例を参考にしました。ラコート(Lcote)もこういった7弦ギターを作っていたことは皆さんもすでに御存知のとおりです。

弦長:530mm + 7th 605mm
表面板:スプルース
裏板:ブラック・ウォールナットツキ板
側面板:ブラック・ウォールナットツキ板
塗装:セラック
ヘッド:表は黒檀ツキ板(裏は染め)
ネックジョイント:V型
フレット:T型フレット( 全17フレット)
指板:ウエンジ
高音域フレット:黒檀
ロゼッタ:黒檀ドーナツ板状
ブリッジ:黒檀 ストリングピンは黒檀、ボタンは貝(MOP)
エンドピン:黒檀
ビンディング:黒檀
糸巻き:黒檀
ナット:象牙 約42.5mm 1〜6弦幅:35mm
サドル:象牙 1〜6弦幅:55mm+7th10.5mm
ヒールキャップ:象牙
全長:約800 mm
弦高(12フレット位置):1弦2.1mm 6弦2.3mm
重量:552g(弦含む)

 


でも、この楽器。まったくというほどアピールしなかったせいか展示会ではほとんど注目されず、試奏する人もごくわずかでした。同時に出展したブラギーニャとファブリカトーレ・コピーに人気を奪われたか?

柔軟な役割をもつ7番めの弦、このコンセプトは悪くないと思うんだけどなぁ....。 
なかなか一般には理解されないのかもしれません。




by Makoto Tsuruta, TOKYO JAPAN.






  

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