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● 書名:スペイン式クラシックギター製作法
● 発行:現代ギター社(2020年4月に島村楽器資本下へ)
● 著者:禰寝孝次郎
● ISBN:ISBN-10 : 4874714013 ISBN-13 : 978-4874714010
● 価格:123ページ 26cm x 18.5cm x 1cm 重量380g 2005年
● 価格:3080円
スペインの名工に学ぶ! クラシックギター製作の完全レシピと副題が付くとおり、スペインギター工房直伝の名著。
アントニオ・マリン・モンテロ工房に学んだネジメさんによる説明です。図や写真が豊富で詳しく書かれています。
ギター各部の構造や名称に始まり、
1:材料と道具の準備
2:組立型を作る
3:スペイン式ネックの加工
4:表面板の成形と力木の接着
5:横板の加工と接着
6:裏板の加工と接着
7:パーフリングとバインディング
8:指板の加工とフレット打ち込み
9:駒の加工と接着、ナット、サドルの作製
10:塗装
11:指板・フレットの仕上げ
12:道具を知ろう
13:コラム・レシピ
14:コラム雑記
長い間、日本においてクラシカルギターの製作に関する書物は乏しく、
工房に弟子入りするか、昭和の現代ギター誌のバックナンバーのごく僅かな記事か、鶴田のように独学で試行錯誤するしかありませんでした。
実際、昭和の後期にはギター工房で入門講座のようなものが各地にあったのです。
1990年代にロンドンでロイ・コートナール氏の330ページにもわたる本格的な製作書「メイキングマスターギター(英語版)」が発行されたものの、
その日本語訳版が出版される2013年まで待つことになりました(洋書でいくつか製作文献も出ましたが)。
そんななか、1999年春から2000年春にかけて現代ギター誌に禰寝(ネジメ)氏のギター製作記事が連載されました。
それに触発されて多くのアマチュア製作家がギターを作りコンテストを開催した折、禰寝氏が感銘を受けて執筆を決意したのが本書です。
必要な材料や工具類が丁寧に紹介されており、電動工具や特殊治具を含めて、本体なら敷居が高い職人のモノ作りの世界。
そこを、キットでの製作を基盤としたことで敷居が低くなり、逆にフルスクラッチの難しさも理解できます。
本格的な弦楽器製作を追求するほどお金も工夫も道具も技術も必要です。私もその昔、最初はキットから入りました。
例えば、横板を曲げるベンディングアイロンを入門者が購入するかどうかはちょっとしたハードルです。
鶴田も個人的には弦楽器製作家を志す方からの問い合わせには、独学であるならばキットから始めることを薦めています。
とりわけ、木工すら初めてという初心者であればウクレレキットから始めると良い、とオススメしています。
本書の特徴は約120ページのなかに非常に整理されて、網羅されて、丁寧な図版と応用を見越した説明がなされていることです。
それはまた、自身が手を動かして作業してみて、自分なりの工夫をすることの重要性を示唆しています。
これはモノ作りでは重要なことです。
途中にいくつか挿入されているコラムでスクレーパの研ぎ方、ケビキの作り方、ドラムサンダーの作り方、
刃物の焼入れ焼き戻しについても紹介されています。良く読むと、豊富なヒントがこの書には豊富に含まれています。
2021年の今でこそ「ギター製作ならネットで探せばいいじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし、本書は体系的でコンパクトでありながら行程のポイントを慎重におさえてあります。教科書としても最適です。
将来的に経験を積み発展的な意味も含めて、入門者に優しい心遣いのある名著として自信をもってお薦めします。
記事:2021年4月4日