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 調整そして完成   最後が肝心

 

では最後に弦を張ってペグの具合を調整し、フレットガットを巻き、各種調整ののち完成へと突き進みましょう。

 

【弦を選ぶ】

フレットガットは弦を実際に張ってから巻きますので先に弦のゲージ(径)を決定せねばなりません。例によって弦の決定には「A基準音Hz」、「弦長」、「張力」をもとに弦のための計算尺(ピラミッド社やキルシュナー社から出ている)を使います。ここではA=415Hzにして、弦長は310mm、張力はやや弱めの2.0kg(1コースのみ2.5kg)平均でいくことにします、そうすればA=440Hzでも大丈夫でしょう。そして1コースから6コースまでユニゾンで調弦します(つまり1コースに同じ弦を2本づつすべてのコースに張る)。弦楽器フェア99ではなるべく多くの方に弾いて頂きたかったのでギター調弦にしていましたが本来はマンドリーノ調弦(g2,d2,a1,e1,b,g)であるべきです。

 

【マンドリーノの調弦】

・A=440Hz  L=310mm  全てユニゾン
・正調の g−b−e'−a'−d''−g'' で調弦する。
・1コースのみ2.7(実際は2.5kg)kg、2コース〜4コース:1.8kg、5コース〜6コース:2.0kg

1コースg2:ガット0.324mm ナイロン0.36mm フロロカーボン0.277mm(2.5号:0.260mm)
2コースd2:ガット0.36mm ナイロン0.40mm フロロカーボン0.308mm(3号:0.285mm)
3コースa1:ガット0.48mm ナイロン0.54mm フロロカーボン0.41mm(6号)
4コースe1:ガット0.64mm ナイロン0.70mm  フロロカーボン0.79mm(12号)
5コースb:ガット0.91mm 巻弦VN5091 ナイロン1.00mm  フロロカーボン0.74mm(20号)
6コースg:ガット1.16mm 巻弦VN5116

 

【反則リュート調弦しちゃう場合】

・A=440Hz  L=310mm  全てユニゾン
・反則 g−c'−f'−a'−d''−g'' での場合。
・1コースのみ2.7(実際は2.5kg)kg、2コース〜4コース:1.8kg、5コース〜6コース:2.0kg

1コースg2:ガット0.324mm ナイロン0.36mm フロロカーボン0.277mm(2.5号:0.260mm)
2コースd2:ガット0.36mm ナイロン0.40mm フロロカーボン0.308mm(3号:0.285mm)
3コースa1:ガット0.48mm ナイロン0.54mm フロロカーボン0.41mm(6号)
4コースf1:ガット0.62mm ナイロン0.68mm  フロロカーボン0.52mm(10号)
5コースc1:ガット0.85mm 巻弦VN5085 ナイロン0.94mm  フロロカーボン0.74mm(20号)
6コースg:ガット1.16mm 巻弦VN5116

 

詳しくは当クレーンホームページの「弦のコーナー」も御覧ください。

 

 

 

 


 調弦用サウンド(それぞれMP3形式データです)。

 

A=440Hz マンドリーノ調弦 gdaebg

A=440Hz リュート調弦 gdafcg 

A=415Hz マンドリーノ調弦 (f#c#g#d#a#f#)

A=415Hz リュート調弦 (f#c#g#ebf#)

 

 


次にペグのきつさを調整します。それによりペグボックスからペグの先端がはみ出したりしますが多少であれば切断せずにそのまま使い、しばらく楽器を弾いてみてから詰めてもいいでしょう。

 

市販されているコンポジットをつけて装着し、弦を張ってみましょう。うまくできていればこれすらも必要ありません。塗るのは軸の太い側のみで充分です、細い側はゆるく作っておくほうが調弦しやすいです。

 

精度の悪い工作をした楽器であれば演奏者が使っていて常に不具合が気になるでしょう。この最後の調整はしっかりやるべきです。この楽器では1弦と6コースの片方を手直ししています。おしっ!

 


 

指板にはオイル(例によって椿油です)を塗ります。これは丸1日乾かしたほうがいいです。乾くと濃い木目がひきたち渋いツヤが出ます。もう一回塗布して乾かせば充分です。

 


リュートではフレットを打ちませんが、そのかわりにガットフレットといって弦によく似た羊腸をネックに巻き付けて縛り、それの位置が音程を決定します。以下の写真を参考に結ぶといいでしょう。

補足:18世紀以降のマンドリーノは象牙やブラスのバーフレットを打ってあるものが多く見られます。

 

(1)はじめに写真のように中指と薬指でつまんでいる側にひとつ結び目をつくりその結び目近くでカットしてライターで溶かして端を丸めます。

(2)次にネックをひと巻(2回巻くこともある)して結び目をとおし(親指と人差し指でつまんでいるほう)、グイグイ引っ張って3mmほど残して爪切りで切った端をライターで焼きます。

(3)あとは適切なフレット位置にずらします。

 

 

フレット位置は図面に描いておきました(12平均律ですけど)。ガットの弦を使ってもいいのですが、じつはちゃんと「フレット用ガット」というのが売られています。フレット用ガットは羊の腸をほとんどねじっていないため巻いたときにピッタリ表面板になじみます。場合によっては2重に巻いたりします。

 

フレットにはナイロンの弦(釣り糸ともいふ)を使ってもいいのですがガットほどピッタリ巻けません。呉羽化学のシーガーグランドマックス(釣糸)は柔らかく伸縮性に優れているので使えるかもしれません。以下の写真は銀鱗(ぎんりん)という東レのナイロンです。

 

あとはストラップピンを接着し、できればストラップも準備しましょう。手芸品店で(ユザワヤさんとかオカダヤさんで市販されている)リボンを購入して使えばリーズナブル。これがあると断然演奏がしやすくなります。

余談ですが、リュートを抱えたときに違和感なくストラップすら必要にないと感じるあなたは「リュートな人」です。抱えたときに右手でうまく抱えられずリュートがズルズルと安定しないアナタはひょっとしたら「非リュートな人?」カモしれません(笑)。これ、ちまたのウワサですけど..........。

 


【そして完成】

いやぁ〜〜〜、やっと完成です。なんだかんだいいながらようやく完成にこぎつけました。

この楽器の製作は「弦楽器フェア99」の出展直前で追い込みがたいへんでした。弦を張ったのがフェアの前日、調整は当日までやっていましたから.....。

 

 

 

 

いくつかの改善したほうがいい点や今後の課題もいくつかあります。いずれは大きなリュートも作るつもりでいます。

 

さて、あとは曲を弾きたいので曲集を手配しましょう。

 

ワクワク〜〜〜!

 

 


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