|
■ 塗装 下塗りと本塗装
ではまいりましょう、先にも説明したようにテンペラ(卵黄)メディウムを下地に使いますので冷蔵庫から出してきてください。ハケを使ってトフトフと塗布していきます。
初回の塗布についてはかなり早く乾くはずです。そうしたらもう一回この上から例によってトフトフと塗布します(べつにトフトフとでなくても可)。
このままで1日乾かします。表面にはちいさな起伏ができますが気にしません。
1日経過してもまだ半乾き状態だと思いますがそれを水で濡らして絞った布ですべて拭き取ってしまいます。目止めはバッチリなされているのでご安心を。
この上に本塗装します。リュートではセラックは使わないと主張する製作家もいますが、セラックを使ったフレンチポリッシュは楽器に限らず伝統的で広く用いられている古来からの塗装方法です。そのほかオイル仕上げもありますがここでは後者で仕上げることにします。
ここでは仕上げ用のオイルとして「サンシックンドリンシードオイル(日ざらし亜麻仁油)」または「Tru-Oil」を塗布します。ここではハケでハケハケと塗っていますが布に含ませて拭きあげてもいいでしょう。むしろオイル仕上げはハケよりも布で拭きあげていくほうがうまくいきます。1回塗ったら1日乾かします。
ツヤの具合は好みにもよりますがもう一回塗りましょう、そしてもう1日置けば完全に乾くのでこまかい目の紙ヤスリをかけます。このとき水研ぎするのではなく、サンシックンドリンシードオイルまたはTru-Oilで研ぎます。3M社のサンドペーパーは両面テープのついたものがあって、これを小さく切って指先に貼って研ぎに使えば楽です。モデルにもよりますがリブの合致している点(スペーサ)のエッジを丸くしてしまわないように注意しながら作業します。モダンなマンドリンはこのボウルをヘルメットのように丸くなめらかに仕上げますがリュート族の楽器はリブが薄いため、枚数の少ない(7枚とか9枚)場合は球面には仕上げません。マルチリブのリュートでタイプによってはなだらかに仕上げるものもあります。
表面板はテンペラで下地処理は行わず、サンシックンドリンシードオイル(またはTru-Oil)のみを塗ります。布に含ませてていねいに拭きあげます。細部は細い筆かハケを使うとよいでしょう。
ロゼッタ部分は布で塗布すると破損の恐れがあるので小フデを使いましょう。かる〜〜〜く。
私は表面板は1回塗って1日乾かします。塗装すると木の繊維がやや毛羽だってくるのがわかるでしょう。これを1000番程度で軽くならしてもう一回塗ります。
リュートの表面板は現代のスチール弦のギターや量産クラシックギターのような厚い塗膜に仕上げません。表面板を塗装しないリュートもあるぐらいです。長年楽器を使用すると塗装が薄くなりますが、そのときはサンシックンドリンシードオイルまたはTru-Oilをしみこませた布で全体を軽く拭いて1日置けば充分です。そうすることで状態良く長持ちさせることができます。画材店でサンシックンドリンシードオイルは入手できますが日晒しでない「リンシードオイル」は使いません、緑色に変色することがあるからです。
注意:2011年頃からTru-oilの成分が変更されています。今までサンシックンドリンシードオイルと同じ香りがしていたのですが、2012年4月にアメリカから購入した新品は色も薄い赤っぽい色になり、臭いは石油系のヤな臭いになってしまいました。臭い!! 成分が変わったのか、精製法が変わったのか? 参考までに。(2012年6月補足)