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 ストラップピンの穴開け  見えないトコロだけど

 

さて、ボタンは最終調整で接着してもいいのですが、取り付け穴はボディと表面板を接着する前に空けておくことにします。まあ、完成品にボタンを付けるということも可能ではありますがボディ内部に切りクズを残しやすいのでいまのうちに.....。

Macの角形マウスに指の跡がついていますね....。かれこれ14年ぐらい使っている、もはや鶴田のカラダの一部であります。

え? あ、はいはい、それで、エンピツにて穴開け位置をマークします。大きなリュートではボディの底ともう一カ所ボディ上部のブロックの裏あたりにピンを付けることがあります。

 

私はギターでもそうですが目につく部分は電動工具でせん孔しません。仕上がりを美しくするにはハンドビットが最良と考えているからです。必ず板の両方から切り開けます。

 

 

こういった目立たない部分こそ.............あ、そういえばまた魚介類の話になりますが、幼いころ夜になると兄と父が連れだって海へカニを捕りに出掛けることがありました。月夜の晩を避けて暗闇に懐中電灯(当時はまだカーバイトのランタンもあったが)をかざします、岩場の目立たないところに潜んでいるカニは人の気配をかんじるやいなや素早く上手に泳いで逃げるのです。それをてっとりばやくモリで突けばいいのですがそうしてしまうと傷がついてまずくなるので網ですくってビクへ取り込むという厄介な作業が必要になるのです。カニは甲羅が15cmはあろうかというヤツでハサミの大きな種類。地元では「ヤガニ」と呼んでいました。

あ........それで、こういった目立たないところを雑に作ってはいけないのでありまして、ちゃんとリーマでテーパをつけてピッタリに納まるようにします。

 

「ヤガニ」は九州南部から沖縄以南にかけて生息するらしく、もともとは亜熱帯のマングローブの集落に多く見られる種類のようです。田舎では非常にポピュラーなカニでよく学校帰りには近所の軒先に殻(カラ)が山積み(畑の肥料?)されていたものです。兄と父は季節になると夜な夜なそうやってカニを捕りに出掛け、家に残った祖母と幼い私の2人はおとなしく大鍋を準備して帰りを首を長くして待つのが役目でした。自宅のすぐ近くに水銀灯があってわが家の銀杏の大木には夜になるとカブト虫やクワガタ虫が集まり、それを捕まえつつ縁側で2人の帰りを待ち遠しく思ったものです。たいていはビク一杯(まあ、十数匹だと思ってください)のカニを持ち帰るのが普通で、それを夜9時ぐらいから大鍋で煮て4人で食すのですが、そこいらのレストランで出されるカニ料理とはスケールが違います。味付けは塩のみで、まず水をはった鍋に暴れるカニをすべて押し込み、フタで押さえて火をつけます。30〜40分ほどでしょうか、塩を振ると辺りに潮の香りが漂い(決してカニ臭くないのです)、そうして赤くゆであがったカニをハフハフいいながら食べるのです。これは何よりの楽しみでした。そんな夜、テーブルの上にはカニの殻がみるまに山となっていくのでありました.........。

 

 

それから何年かが過ぎ、兄も私も上京してからというものヤガニとは無縁。そののち田舎ではカニの潜んでいた岩場あたりの開発が進み広大なヒラメの養殖へと様変わりします。今となっては実家の銀杏の大木はもうありません。父はすでに他界、兄も所帯を持ち、今となってはかなわぬカニの幻となってしまったのでした。

さて、どうやら魚介類にうるさい弦楽器製作家の作るストラップピンがようやく完成したようです(まるで人ごと)。

 

あ〜〜〜カニよカニ、どうして君はカニなのよ〜〜〜〜?

 

 


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