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 ペグを作る  市販のペグは?

さてギターやヴァイオリン製作ではペグ(糸巻き)の入手は容易なため既製品で済ませる場合がほとんどのようですがリュートの場合はたいてい木片から木工旋盤で削り出すことが多いです。ここではその手順について説明します。

 

ペグ用の木材についてはこのコーナーのはじめに紹介してありますが、リンゴや洋ナシといったフルーツウッド、またはツゲを準備します。メイプルはペグには使われません。アメリカでは万年筆やボールペンを自作するホビーが市民権を得ておりまして、ペン用のペア材(22mm角材)が容易に入手できます。手頃なサイズが入手できない場合はどうするか..........そうです、泣きながらノコで切ればいいのです。この角材の時点で断面にバツ印を記しておき、中心点(回転させるときの軸)を明らかにしておきます。

 

角材のままでも旋盤で削れないことはないのですが、やはり角にカンナをかけてなるべく丸くしておいたほうがいいでしょう。これは泣きながら作業する必要はありませんからニッコリ笑って削りましょう。小さいので支持する左手をケガしないように要注意です。

 

旋盤の支持構造にもよりますが、私の使っているのはセンタリングがちょっと面倒なので、おおむね円柱になったらこのバツ印にノコ目を入れたほうが作業がしやすいです。

 

さて、材料を固定して切削の準備です。図面からコピーしたペグをテンプレート代わりに使って削りのこまかい位置(間隔)をマークしていきます。このとき可能ならゆっくり旋盤を回転させます。

 

実際のテンプレートは以下の写真のように具体的な寸法を記入して、なおかつ垂直線を入れておけば使いやすいです。ペグはたいてい1:30のテーパがついていますのでリーマもペグシェーパも同じテーパのものを準備します。

 

もっと大きな柄(グリップ)の旋盤バイトがいいのですが私はこまかい切削部分はこのような小さいノミを使うことがあります。みなさんはマネしなくてもいいです、大きなノミでも可能ですから。グリップの大きな刃物でないと危ないです。

はじめに巻軸の最も太い部分を約7.5mmに最も細い部分を1:30のテーパで計算して軸の長さに相当する部分で合わせます。そしてツマミ部分の切削にはいります。木工旋盤については当クレーンホームページの弦楽器製作工具のコーナーにも書いておきましたので参考にしてください。

 

3種類ぐらいのバイトでたいていのタイプの成形は可能です。回転数は荒削り段階ではややゆっくり、仕上げでは高回転といわれていますが2000回転ぐらいの一定回転速度でも作業できます。市販の木工旋盤では回転数固定(あるいは半固定)のものも少なくないです。

 

カーブの付け方にはちょっとコツがあって、このような先端の平面なバイトを使って仕上げるとなめらかになります。

 

細い部分は最後に削ります、先にやると切り離してしまうからです。

 

ううう.........やっと12本を削り終えました。これで終わりではないのです。多少のサイズの不揃いがあっても仕上げ段階で若干の修正は可能です。心配なときは2本ぐらい余計に作っておいてもいいでしょう。

 

さてグリップ部分の成形です。まずは丸ノミでおおざっぱに落としていきます。

 

本数が多いので根気がいる作業です。メゲた方は無理せず泣きながら個人輸入で海外から探して購入しましょう。たぶんこの製作コーナーのなかでもっとも面倒な作業かもしれません。

 

サンドペーパーを小刀のサヤなどに巻いてなめらかにします。ペグらしくなってきました。

 

 

頭のピンの部分(pipといいます)をサンドペーパではさんでおいてペグの軸をクルクル回しながら形を整えてやります。しつこくやると磨耗して無くなっちゃいますので用心されたし。

 

はい、ざっとこんなモンでさぁ〜〜〜ダンナぁ!

 

テーパーの微調整は自作のペグシェーパでやってみたのですが、歯のセッティングがものすごく微妙でうまくいきません。市販のペグシェーパでもほぼ同様です。刃の調整はじつに微妙......あとで検討しましょう。

 

よく会議の席でヒラの社員が提案したりすると年輩の役職の方は「検討しておきましょう」と回答することが多いのですが、それは「何もしません、ほっときます」の同義語です。ワカモノの皆様は覚えておくといいでしょう。

 

 

 

 


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