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 リブのテンプレートを作る  思ったよりフクザツなのだ

 

さて、リュートの図面はふつうボディを形作るのに必要なリブ(リンゴの皮のような細長い葉っぱのような板)の形状は記載されていません。なぜならすべてが同じ形状ではないからであって、その理由は後記します。まずは材料調達のことも考えて、図面を入手(作図)できたらすぐにリブの形状を描きテンプレートを作ることにします。ここで描いたリブの長さと幅に基づいて材料の注文をすればいいでしょう。

 

1. まずは製作するリュートのタイプをもとにリブの枚数を決めます。図面などに枚数が記載されていることもありますが記載がなければ同時代の同じ製作家の楽器の資料をもとに決定します。このコーナーにも製作家ごとに参考事項を前記しましたね。まずはリブ1枚の角度を求めます。はじめに製作するリュートの平均的なボウルの深さを計って円を描いてください。そして、

 円周360度 ÷(リブの枚数×2)が1枚のおおよその角度になるので計算して求めてください。

おおよその角度と書いた理由ですが、表面板と接着される両脇の2枚のリブは他のリブよりやや幅を広くしますので上記の1枚の角度はやや小さめに設定したほうがいいでしょう。そして、スペーサをリブの間に挟む場合はスペーサの幅(約0.8mm〜1.3mm)を考慮せねばなりませんのでさらに角度を小さくする必要があるというわけです。

 

2. 表面板の輪郭線の片側半分をトレースして紙に書き写します。そして適当に水平線と垂直線を補助線として描いておけば作業がしやすいです。私の場合はイラストレータで横に寝かせて配置します。イラストレータでは弧を線種の設定破線(1cm:1cm)にすればあっというまです。ちなみに1cm =28.346 pt です。この時点でリブの全長がわかりますね。

 

3. 弧の最大高さの点に印をつけておきます。そして弧の1cmおきのマークに従って中央線を境に左右に水平線を引きます。JR中央線は毎年春になると人身事故が多いので通勤に中央線を使う私としてはひっじょ〜〜に困ってしまいます。

 

4. 次に 1. で決めたリブの角度をこの図に垂直に重ねて描きます(下図)。水平線と重なる角度線の内側の幅を定規で計ります。イラストレータをお使いであればツールパレットの定規と「情報」パレットでクリックするだけで自動的に表示されます。もう片方も同様です。次図の赤い角度線が左側で青い角度線が右側です。弧の最大高さにおける角度線の内側の幅はこの楽器の場合は 1.775cm となりました。そうです、あなたが準備するリブ用の木材のサイズはさきの 2. とこの 4. の結果から算出されることになります。

 

 

5. さて、弧の長さは右から左へとたどることにします。順番に1cmごとの角度線内の幅を並べてみましょう。つまり青色の角度線内の幅は 0cm位置で幅0cm 次に 1cm位置で幅0.245cm 次に 2cm位置で幅0.492cm 次に 3cm位置で幅0.730cm .......といった具合です。これを弧の全域にわたるまで調べます。 

 

6. ということでリブの長さは約33cm、リブの最大幅は1.775cmとなりました。 5. の数値表をもとに方眼紙などへ転記していけばリブのテンプレートのできあがりです!

鶴田の場合はイラストレータで10倍の幅でリブの輪郭線をベジェで描いたのち再び1/10に戻しています。イラストレータでは拡大・縮小で縦横比の設定によりこれは一発で作業できます。

 

7. ふぅ〜〜〜〜っ。あとはアクリルの板にこれを書き写す(パソコンを使っているならプリントアウト)したものを貼り付けてカッターで丹念に切り抜けば「リブテンプレート」のできあがりです。ちなみにこのリブテンプレートはひっくり返して板に墨入れするので半分(弧の片側)でよいのです

 

えっ? 計算とかが面倒だって? う〜〜〜〜ん、そういう方々のために今回配布しているマンドリーノの図面にはちゃ〜〜〜んと私が計算して描いたリブのテンプレートも記入しておきましたよ〜〜〜ん。つまりそれをコピーして切り抜くだけでOKというワケ。まあ、リブの枚数を変えたり、他のリュートを作るときはがんばって上記の手順で描いてくださいね〜〜〜。

 

 

まあ、こんなかんじでしょうか。

 

 

【備考】

実際には上記説明の 1. のようなきれいな半円でリブが作られているわけではなく次の右図のようにやや押しつぶしたような断面になります。マンドリーノではほぼ半円なものもありますが大型のリュートのなかにはかなりボウルの浅いものもあり半円で作ってしまうとやたら分厚くなって弾きづらいだけでなくカッコワルイスタイルになってしまいます。ちなみにウードなどは大型であってもほぼ半円(半球に近い)でボウルは作られています。

しかも、厳密にいえばたんに全体を押しつぶした形状ではなくボディの部位によっては曲率がそれぞれ異なります。現在入手できる図面のなかにはこの断面が記載されたものもあります。このようなボディを形成するには単純に上記で作成したテンプレートのみではうまくいきません。上記の手順で作成したリブのテンプレートはあくまで目安と考え、実際にはやや大きめにリブを切り出しておいて接着時にカンナで削って調整しつつ「ねじり」を加えながらリブを組んでいきます。3次元造形の世界にどっぷりハマっていただきましょう。

 

 

 

ボウルの半円を3つの円で構成すると考えておおむね3つのグループでリブの構成を考えます。例えば21枚のリブであれば両脇のグループは6枚づつで中央のグループは9枚といったぐあいです。

ほ〜〜〜ら、リュートは思ったより単純じゃないことがわかってきたでしょう?

 

 

 


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