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 26. ナットとサドル   ブリッジはナゼはがれる?

 

というわけで糸を張ってナットからサドルまでの各弦の様子をチェックします。この位置でヨシと決めたらブリッジ位置をマークしてそこに接着することになります。

 

ブリッジ接着の前にやっておくことがあります。なんといっても恐いのがブリッジの剥がれです(これには私も苦い経験があります)。

さて、どうしてブリッジは剥がれるのでしょうか?理由をあれこれ考えてみましょう。

 

【考察】

(A)まず「接着剤」そのものが適切でない。
(B)接着剤の層がブリッジと表面板のあいだに充分ゆきわたっていない。
(C)ある程度年月が経過すると接着面に湿気が浸入し、接着効果を劣化させる。
(D)信じられない張力がかかった。

【対策】

(A)ブリッジ接着には面倒でもニカワを使いましょう。
(B)つまり接着剤がムラになっている状態だと接着面積は小さくなり剥がれやすくなると考えられます。これに対処するには前もってブリッジと表面板の接着面を水で絞ったタオルにてきれいに拭いておき、接着剤を塗布したらズリズリとブリッジを表面板に押しつけながらズラすことでムラなくゆきわたらせればいいでしょう。
(C)ブリッジの裏(接着面)をスクレーパで0.2mmぐらい削ってへこませておきここにわずかなニカワが溜まるようにしてやります。ニカワは乾くと、硬化すると同時に容積が収縮するのでお互いの材料を引き締める硬化があります、そうすることで表面板とブリッジ周囲からの湿気浸入防止に一役かっているようです。

 

さて、私はスクレーパを使って接着前にブリッジの底部を以下の図のように0.2mmほどわずかに削りました。

 

さて接着する前には必ず予行練習する鶴田であります。レベラー付きのブリッジクランプを3本使いました、もちろんウエィバリー製。コルクの板で保護するのをお忘れなく。下の写真で側面板に張ってある白いシールは表面板を側面板と合体させる際にバーの位置を印したものです、表面板に直接貼ることもあります。

 

いよいよニカワをブリッジに塗布しますが、加熱したニカワは塗布して常温の大気に触れるとすぐに硬化がはじまります。そこで、この段階でブリッジをめいいっぱい加熱することにしました、私の場合は以下の写真のようにニカワ接着の道具はベンディングアイロンとステンレスきゅうすを使っていまして、接着前にアイロンで加熱します(我ながらグッドアイディアだ!)。じっくり考えながら作業するといいアイディアや作業手順などを思いつくものです。まあ、いらんこともたくさん考案しますが...。

はい、しっかり加熱します、アチチッ! 実際にはコルク板で保護しているのでかなりブリッジを熱しても平気です。

表面板にすぐにブリッジを置いてズリズリ動かし、ニカワが堅くなってきたな、と思ったら所定位置で動きを止め、クランプをかけます。3本のクランプのうち中央からトルクをかけていきます。クランプを締めている最中にズレないように注意が必要です。ある程度乾いたら水かお湯で濡らして絞ったタオルではみ出したニカワをふき取り、最低でも1日放置(乾燥)します。私は1日置いてクランプを外し、さらに3日ぐらいは弦を張らず乾燥させます。そのあいだに他のパーツを作ったりするわけです。

 

あとはピンのための穴を空けますが、私の場合は細いルータでおおざっぱに空けてからリーマでピッタリに合わせます。せん孔にドリルバイトを使わないのは表面板になるべくバリが出ないようにするための工夫です(出るけど)。ここでも実際のピンを抜き刺ししながら具合をみます。

 

サイズが合えば、あとは精密ヤスリで弦留めのスロット部分を正確に丁寧に削ります。

 

はい、ピン穴もきれいに空きました。もしブリッジの周囲にはみ出したニカワが残っている場合はスクレーパで丁寧にはがしてやりましょう。あせらずていねいに作業します。

 

さて弦を仮に張ってみましょう。なんだかドキドキします。もしナットやサドルの高さが合わなければ削りますが演奏用の弦を正規のテンションで張って調弦してからでないとネックも若干反るので、ここでは極端にナットもサドルも削りすぎないほうがいいかもしれません。

 

ブリッジの仕上げは両脇のボタン装飾です。これはタイトボンドでもかまわないでしょう。

 

 

フレットレス19世紀ギターの出来上がりだっ! この状態で弾いてみましたがけっこう楽しいです。

 

 


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