工程説明ページ


 8. バーの加工と接着  木目方向とアーチ

 

ここでは表面板と裏板に接着する力木(バー)を作る行程を解説します。バーとなる材料は現代では製作家によって様々ですが19世紀のギターではスプルースが多く見られるためそれにならって作業を進めていくことにします。現代でもたいていのギターは表面板にはスプルースを使いますが裏板にはあれこれ別の材料を使うことも多いです。製作家によって裏板をどう扱いどう意味づけるかという点も現代ではまちまちのようで。つまりたんに表面板を固定するための役割であってサウンドにはあまり重要でないという人もいます。裏板については材質よりもむしろバロックギターや現代のオベーションのようにラウンドバックさせてサウンドに反映させたほうがいいのではないかという話もあります。またボディ内部やそのバーに塗装するべきかどうかについてもすでに19世紀から意見が分かれていたようで、パノルモは内部を塗装したものを多くみかけますがラコートはほとんどが未塗装のようです。このへんについては当クレーンホームページの「19世紀ギターの世界」コーナーも御覧ください。今回は表面板も裏板もバーはスプルースとし、塗装は施しません。

さて、バー製作の手順ですがまずは図面をもとにスプルースの角材を必要本数分カットします。このとき木目方向に注意しましょう。ギターでは以下の写真のように表面板に対して垂直になるように木目をとるのが作法とされています。リュートの場合は表面板に対して平行になるように木目をとるのが一般的です。

 

 

さて表面板も裏板もアーチをつけます。まっ平らではなく若干もりあがっていると考えればいいのですが、このことによって板に緊張を与えているわけで、太鼓のごとく振動させようというわけです。バンジョーなどはモロに太鼓の上にブリッジを置いた構造となっていますが、同様に木の板を楽器として鳴らすためには重要な要素と私は解釈しています。こういったテンションを各部にかけて製作すると鳴りも違うようです。

というわけでこのわずかなアーチを作るためにその基準線となるものを角材にけがいていきます。どの程度削ればいいのかって? う〜〜〜んそりはちょっと即答できません、私もあれこれ試してはいるのですがバーだけではなく表面板の状態にもよるので決まった値というのは無いのかもしれませんが私はこの楽器の場合は最も幅の広いボデイの両端部分でおおむね2.0mmとか2.5mm程度にしました。

 

それをカンナで軽く削ります、以下の写真は削り始めたところ.....。ミニカンナがここでも大活躍。

 

ほかに#180か#360程度のサンドペーパーを敷いておいたものにグリグリやってなだらなかアーチを形成するというテもあります。この写真には出ていませんが、別の角材を置いて定規代わりに直角を保ちながらサンディングしないと接着面が丸くなってしまいます。そうなるとニカワの接着面から湿気が浸入しいずれは剥がれる...と。あと、私は各バーのアーチの度合いは同じにせず1本づつ変えています。

 

表面板と裏板ごとにバーの順番を鉛筆で記入しておいて放置、いや、乾燥させます。乾燥と書くとカッコイイですが、まあ、放置して忘れている状態と同義語でございます。え?だったら「乾燥させている」んじゃなくて「乾燥してしまう」と書けと?

さあ、先に進みましょう。

 

 

 


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