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 3. 材料の手配  銘木店か個人輸入か?

作りたい楽器のイメージが固まり、素材などの目安がついたらさっそく材料をゲットしましょう。あなたがどこに住んでいるかにもよりますがたいていは近所のD.I.Yショップで入手が可能です、D.I.Yショップといっても様々な珍しい木材を扱っているところもあります。いわゆる銘木店も候補です。

 

但し、ほんらい木材は「楽器用」として販売されているわけではありませんから自分なりに良く見て、これならギターに使えそうかな?というものを選抜すればよいでしょう。木目方向や板の厚さ(加工可能な範囲かどうか)をチェックするといいでしょう。あるいはお店の人に相談してみるのも一案です。D.I.Yショップなどで販売されているものの中には未乾燥のものがあったりしますので注意が必要です、楽器には生木は買ってすぐには使えないのがキホンです。乾燥してあっても注意は必要です、以下の写真は松の角材ですが購入時はどちらも真っ直ぐでした....1週間後の状態....。

 


・東京都内ではJR京葉線の新木場の駅前に「もくもく」というお店があります、プロの製作家も御用達。鶴田もたまに行きますが有料でおおまかな裁断(1カット50円〜100円ぐらい)もやってくれますし宅急便での配送も可能だそうです。種類も豊富で特価セールや珍しい木材も販売していたりしますので最寄りの方もそうでない方も一度は足を運んでみてはどうでしょうか。

● もくもく 〒136-0082 東京都江東区新木場1-4-7 TEL:03-3522-0069 年中無休、駐車場有り。営業時間10:00〜18:00

 


普通の銘木店や「もくもく」でも入手できないような場合は私は以下のお店に行くことがあります。知り合いの彫刻家/版画家から紹介してもらったのですが、じつに様々な木材があります、私はツゲはここで入手しました。

 

〒152-0001 東京都目黒区中央町1-15-22
井口材木店 (各種広葉樹北海道産材、工芸木材、彫刻)
TEL:03-3712-9421

●井口さん掲載許諾ありがとうございました。

 

 


・さらにもうひとつ強力なショップを紹介しましょう。「アイチ木材加工(株)」です。ここは弦楽器製作家ではおなじみのお店です。その名のとおり愛知県に所在します。私も5Aの285mm幅のフレイムメイプルを注文・購入したことがあります。この幅だと19世紀ギターの裏板が1枚でとれてしまうのだ!

 

〒490-1444 愛知県海部郡飛島村木場2丁目41番地

TEL (05675) 5 - 1761 FAX (05675) 5 - 1763

 

 


・楽器製作用木材の入手法のひとつに個人輸入があります、当サイトの「個人輸入ちょ〜入門」コーナーを御覧ください。日本国内は楽器製作の環境としては盛り上がり傾向ですが、まだまだ寂しいものがあり、対して海外ではじつに盛んで種類も豊富にして安価! ただ、コミュニケーションのカベはありますね。

日本名の木材を英語(あるいはドイツ、イタリア、フランス語など)で呼ぶと何にあたるのかと調べておくと便利です。例えば19世紀ギターでネックの材料に使う菩提樹ですが、日本ではみかけませんけどアメリカでは バスウッド(またはリンデン) が菩提樹のことで、たいていの材木屋さんにもあるようです。また、リュートなどで使われる洋ナシは国内ではまず見つかりませんが海外ではPearwood(ペア)といい、比較的よくみかけます。また、リュートのリブに使われる一位(イチイ)の木は海外ではYew(ユウ)と呼びます。

様々な材料のうち特に表面板はさらに多彩ですが、たいていは右の写真のようにほんとに丸太から切り出して乾燥させた表面のザラついてる状態のもの(厚さは5mm程度)が一般的です。スプルースといってもエンゲルマンやシトカやカナディアンとかヨーロピアンとかジャーマンとか....さらにグレード(品質)によって値段もピンキリ....。

 

【木材屋さんに注文するときの注意】

海外ならなんでも上等なものが楽器専用として売っているんだろうと思われるかもしれませんが、無理な注文をしてはいけません。柾目の巨大なハカランダとか、やたら幅の広い真黒の黒檀だとか....。例えばリュートやバロックギター用に「薄く挽いて欲しい」という程度の要求には応えてくれるお店もありますが、木目がきれいで幅が広くてひとつも傷がなくて、できれば1枚づつ番号をつけて....などとあまりこまかい指定を多く出されると相手も困ってしまうのです(そりゃそうだ)。海外の材木屋さんはとんでもない注文は完全に無視することすらあります。

楽器用の材料ということで特別で最高ものを希望するのは理解できますが、楽器用に特別にはえている木というのはありません。表面板例えば木目がつまっていなくても楽器としての性能はほとんど変わりません。自然に対して畏敬の念を持って接するべきと考えます。期待どおりの材木がこなくても、怒らず、使い回しを考える楽しさを味わう余裕も必要です。日本からの注文はおかしなものばかりで楽器製作家は「困った君」だと思われるとみんなが迷惑しますから謙虚なキモチで交渉しましょう。

 


・さて、追加情報です。

大和マーク(株)さんでは特注で黒檀(但し縞黒檀)の薄い板などを加工・販売していただけます。私は以前リュートとバロックギター用に700mm×35mm×1.2mmのサイズでリブを加工してもらったことがあります。海外よりも格安で、しかもかなり精度の高い加工です(ロゼッタメーカーですしね)。ちなみに、19世紀ギターやバロック末期〜18世紀のマンドリンに見られるバーフレットも依頼しようと思ったのですが象牙は不可と考えていいでしょう、そこで骨を110mm×1.5mm×5mmのサイズで加工してもらったこともあります。

加工機械の仕様で幅35mmを超える加工は困難だそうです。あと、特注になりますからあるていどまとまった数量を注文するのがマナーであります。お問い合わせは当クレーンホームページのリンク集から大和マーク(株)さんのホームページを御覧ください。たいていのパーツは揃います。

 

 


ちなみに、国内でも友人や知人もあたってみてはいかがでしょうか? 以外と身近に林業に従事している親戚がみつかったりなんかして.....? 以下の写真は私の職場のモモセ君の親戚から送ってもらったリンゴの木です。もちろん生木なので5年ぐらい乾燥させないと使えないでしょうけど(笑.......)。古い家具を解体して楽器を作ってらっしゃる方もいますね。

 


楽器のタイプによっては木材以外の素材も必要となります。例えば糸巻き。今回は使いませんがもしあなたがスチール弦の楽器やエレキギターを作るのであれば楽器店で比較的容易に入手できます。私は都内のお茶の水か海外から個人輸入で入手します。まあ用意に入手できるものは安価でもありますが品質的にはいまいちということが多いです。

もし貝やその他の材料を希望するなら東急ハンズ、LoFT、京王アートマンのような店か雑貨店、あるいは手芸用品店で取り扱っていることがあります。私は貝や金箔、ベッコウ、象牙(ブランク)を東急ハンズで入手しましたが、ハンズはタイミングや季節、あるいは支店ごとに取り扱い商品は異なるようです。象牙は印鑑の材料の切れ端でごく小さくて短いものを入手しました、細くて長いものが欲しいのですがさすがに高価で手が出ません、獣骨ですむものは安い獣骨でいいのです(但し骨は象牙と比較して柔軟性に欠ける).....。

海外のショップではギターやマンドリン用にカットされた貝が販売されていますのでカンタンに入手はできるのですが、果たして「どこまで自分で作るか!?」という点は重要ですから材料選びも考えものです、「気が付いてみたらキットになっていた」ということもあります(笑)。もちろん既製品のパーツでもコストや品質で優れたものはたくさんあります。

 


あと、忘れちゃ困るのが接着剤です。「タイトボンド」は家具から楽器まで世界中で広く使われている木工用接着剤です。ただ、一般のD.I.Yショップなどでは販売していません。国内では接着剤メーカーと販売店の契約によって卸しと陳列がなされていることから海外の製品はなかなか扱ってもらえないようです。私はタイトボンドもよく使いますしニカワも積極的に用います。以下の写真のようにスグ手が届くように鶴田自作のボンドスタンド「ジェームズ君」の上にのっけて使うのも便利です。ちなみにタイトボンドには賞味期限があるようです、5年ぐらいほっといたらものすごくクサクなりました(笑).......接着能力は数年が経過しても変わらないようです。いちおう冷暗所に保存しましょう。

それから、ニカワですが、文具店でも「三千本ニカワ」なるものが入手できますし、粒ニカワなんてのもあります。入手可能なら楽器用に粉砕したニカワが海外のヴァイオリン製作材料店などで売られていますからそれもいいでしょう。Stewmacで扱うものはやや接着力が弱いようです。私はドイツのお店かアメリカのLMIからニカワは買っています。画材店の液体ニカワは版画のドーサ引き(用紙の下地)や岩絵具用なので楽器には向きません。

ニカワは小瓶に入れて同量の水を入れ数時間たってふやけたら80度前後で湯煎して使います。詳しいことは「弦楽器製作工具コーナー」にもTSULTRA Q’s Potという変なものがありますので参考にしてください。ニカワの種類や粘度によって加熱温度(融点)は異なるようです。私はニカワで接着する場合は接着面は水で濡らして絞った雑巾できれいに拭いておきます。あと、ブリッジ接着時はニカワを塗る前にブリッジ材の接着面を加熱することが多いです。

ニカワははじめて使う人にとってはちょっと面倒で扱いづらいかもしれませんが乾くと信じられないぐらいカチカチに硬化・収縮・密着します。しかも修理は加熱すればOKということで楽器の接着剤としては理想的なものです。私はすくなくともヘッドやネックとボディの接着、そしてブリッジには必ずニカワを使います。

 

さあ、材料がある程度調達できたらあとは工具ですが、工具は非常に種類も多く使い方も説明が必要なので「弦楽器製作工具コーナー」にまとめてありますから一読してください。

 

 

 


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