工程説明ページ


 

 1. タイプの検討  何にしようか?

 

ギターとひとことでいっても様々なものがありますのでどんなスタイルのものを作るかを検討する過程から話をはじめましょう。

例えば一般に「ギター」といえばみなさんは何を思い浮かべますか?クラシックギター?それともマーチンのドレッドノウトとか?Ovationのアダマスとか?Jazzファンの方にはアーチトップとか?エレキギターはちょっとウチのサイトでは道が逸れてしまいそうです(作ってもいいけど)。欲張っても決まらないのでここはひとまずスチール弦のギターは保留にしておきましょう。まあ、元々マーチンもシュタウファーをお手本に19世紀スタイルのギター(以下のモノクロの写真は1850年頃のマーチン)を作っていましたけど...。今回はガット(ナイロン)弦が優勢....。

まったくのオリジナルの楽器を製作するのであればそれこそ自由に(独自に)設計してもいいわけです。現実に世の中にはボディ構造や弦の数、あるいはネックの数まで自由に考えて作られたユニークな楽器が多く存在します。じつは何世紀も昔からツインネックのリュートや2つのボディを合体させたギター、ヴァイオリンも作られていました。一方では楽器は現在に至るまでその時代や楽器の種類などによっておのおのの「作法」が形成されていたことも事実です。フィドル、チェンバロ、ヴァイオリン、ガンバ......もちろんギター族の楽器にしても時代ごとにルネッサンスギター、バロックギターやビウエラ、19世紀ギター、トーレスタイプギターなどとそれぞれの楽器ごとに独自の製作作法や時代ごとの傾向・特徴をみることができます。そうです、つまりお約束があるわけです。例えばネックは何フレットめでボディとジョイントするか? とか、力木配置はどう決めるか?とか、表面版やペグにはどんな木材を使ったほうがいいのか? などが挙げられます。歴史的な楽器についてはいくつかのオリジナルの楽器が現存し、文献や近代の研究家の論文などが残されていますのでそれらを参考にして作法(お約束)を習得し、意識して歴史的な楽器を作ると良いでしょう。

また、作法を無視したモダンな創作ギターももちろんアリです。まったく新しいアイディアや独自の工夫(まあ、たいていのことは古来から試されているんですけど)を凝らすのも自作楽器ならではの醍醐味なのです。

さて、そういいながら、今回製作する楽器は当クレーンホームページのスタンスとしてはちょっとこだわりのある個性的なものを目指したいところ.....。

 


幸いなことに私は19世紀のギターに触れる機会が多く、オリジナルもコピーモデルも比較的多くの楽器を見てきました(修理を含めて年間30本ぐらいのピリオド楽器を扱っています)ので、その中でも個人的に気に入っているラコートなんかどうかな?と思うのであります。

バロック時代からギターは約250年にわたって5コース(複弦)が一般的でしたが、現在のような6単弦に移行したのは18世紀後期(1770年頃)のイタリアとされています。そののち、フランスやイギリス、ドイツで急速に普及していったわけです。上の写真ではフランスのラコートとイギリスのパノルモ(但しスペインスタイル)を御覧いただけるでしょう。私自身、こういった時代のギターは大好きなんです。小気味良いレスポンス、分離の良い和音、繊細で明るい高音........欲しい。でもお金が無い。専門店では100万円とか200万円、モノによっては300万円を超えるのです。やはり作るしかないか...........。

さて、そういうわけで今回私はラコート(上の写真の最後の楽器)をモチーフとして音色や演奏の感覚(操作感)などはそれを目指すことにします。名付けて「19世紀スタイルによるラコートを参考としたクレーンスペシャルモデルカスタムエディションちょ〜入門バージョン」.....長すぎるっ!

みなさんも好みの楽器を検討してみてください。イメージする時間は楽しいものです、ワクワク......。

 

 


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