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■ 部品のあれこれ
● さあ、ひとまずキットが届いたら梱包を解いて部品チェックです...。ちまたにウクレレキットと呼ばれるものはいくつかありますが、全音社ならではのニクい構成を御覧あれ! そのままとっとと作って弾くも良し、パーツや形状をカスタマイズして自分モデルを作るも良し。ちなみに私は全音社のまわしものではありません(全音社の社長さん、ワシになんかくれ)。
● 表面板・裏板:マホガニーの単板です。たぶんアフリカン・マホガニーかと思われます。ちゃんと単板を使うところが二重丸であります。すでにサウンドホールは綺麗にくり抜かれていますので穴空けマニアの皆様には残念。ロゼッタはサウンドホールをくり抜いたあとからでも加工できます。表面板には目印線が印されていて、ここに力木を配置しますが、私は無視してまったく別の場所に接着します。昔のウクレレもバー配置は基本的には平行2本の「バロックギター風」ですがユニークな配置のもののけっこう残っています。19世紀のマーチンもウクレレに X ブレイシングを使ったことがありましたが不評であったために伝統的な平行2本の配置に戻したようです。ちなみにジェラは二重表面板のウクレレも製作していました。
● 側面板と型枠:そうです、すでに曲げて上下のブロックも接着済みです。私は側面版の曲げの作業が好きなのですが、一般の市民はベンディングアイロンを一家に一台というわけにもいかずまさしく入門者には最適な状態といえます。他社のキットは最初から箱ができて表面板と裏板まで接着済みなんてのもあるのです...。型枠の使い方については後記。
● ライニング(付け木):箱の説明書きによるとこのパーツは合板ということになっていますが、私の手元のキットにはマホガニーのムクらしきものが入っています。でもたぶんベニアでしょうねぇ?.........。
● ネック:やわらかいメイプルです。説明書きによると「ハードメイプルまたはマホガニー」となっていますので場合によってはマホガニーのネックが梱包されていることもあるのでしょう。ここまで加工してあれば楽勝です。ヘッドに凝りたい鶴田としてはちょっと残念。糸巻き取り付け穴も4つ空けてあるのでせめて木ペグでまいります。
● 力 木:表面板と裏板に接着するバー(力木)でございます。ばぁ〜〜〜〜っ! 表面板のバーは2本平行が一般的でかつ伝統的と前記しましたが、表面板にバーは1本のみとか、あるいは全くバーを持たないというウクレレも存在します(昔もあった)。裏板も同様です。
● 指板とフレット:カマカ風の指板のカット。赤茶けたパドックの独特の色あい。すでにフレットも打たれて接着剤を充填してあるので、このままでもすぐに使えます。指板にはポジションの穴が掘られていますので、みなさんお好みで貝を入れてもおもしろいかもしれません。フレットはカドを削ってはありますが、できれば#300ぐらいのサンドペーパーでならしたほうが良いでしょう。
● 糸巻き(ペグ):はいはい、これが付属の糸巻きです。ちゃんとトルク調整ネジも付いていますので弦がゆるまないようにややキツめに締めて使います。
● ブリッジ・サドル・ナット:これらもアフリカン・パドックです。ブリッジは弦を留めておくためのスリットも4つ切ってあるので表面板へ接着するだけです。木ネジが1本付属しますがこれはPL法、つまり安全上のメーカーの処置でありまして接着剤のみで充分です。木ネジの穴をふさぐ「目隠し」のシールか板を準備しておくとよいでしょう。当時はブリッジから削りだしてサドルとした構造も多くありました。サドルは弦高を決めて、オクターブピッチ(音程)の微調整のために不可欠なパーツです。調整法の詳しくは後記。
● ダ ボ:ネックとボデイの上部ブロックを接続・補強するための棒ですな。こういったダボを使うウクレレも昔からありましたがどちらかといえばブッタ切ってブロックと兼用する構造のもののほうが一般的といえるでしょう。このキットは懲りすぎかな? じつは安いウクレレキットでは完成後にネックが折れてしまうものがけっこうあるのです。
● サンドペーパー:なんと! サンドペーパーまで付属しています。#150と#240がそれぞれ1枚づつ。なんて良心的なキットなんでしょ。
● 弦セット:そう! 完成してもこれがなくちゃ鳴りません。私はふだんから釣り糸(フロロカーボンやナイロン)を使っていますが、当時のウクレレ風にガットやナイルガットもおもしろいかと思います。詳しくは当サイトの弦のコーナーを御覧ください。弦計算尺があれば向かうところ弦選びに敵は無し! もちろん鶴田は最初から4弦はLow-Gでまいります。
● 接着剤・輪ゴム:日本では木工用ボンドといえばコレを指しますが、水に弱いのでできれば楽器用接着剤を使いたいところです。まあ、お金をかけずに....というのがこのキットのウリでもあるのでほどほどにコダワリたいところ.......え? ほどほどじゃヤだって!?
● 組み立て説明書・その他:この組み立て説明書どおりに作業すればちゃんとウクレレは完成します。それならこのホームページ(コーナー)は要らないんじゃないかって? さあ、どうなりますか、とくと御覧あれ......。
備考:このページは2002年現在のものです。キットの仕様は予期なく変更されることがあります。
備考:弦楽器製作の「もくもくML」メンバーからの報告によりますと、どうやら年々この全音社のウクレレキットは品質が下がっているのではないかという意見があります。たしかに私にもココロアタリはあります.....が、この不景気のなかで価格を抑えて提供し続けるというのは大変な苦労であろうと察します。今後も注目であります....。
補足:マホガニーは年々伐採が進んだため輸入規制の対象となりました(2004年秋補足)。
補足:全音社のウクレレキットは発表当初は5000円程度でしたが2005年の時点でおよそ6000円が相場のようです。ショップにもよりますのでネット上で調べてみてください。
■ 接着剤について
● 今のウチに断っておきますが私は付属のボンドを使いません。タイトボンド(フランクリン)と膠(ニカワ)を併用します。接着剤については当サイトのギター製作のコーナーなどで何度も説明していますが、楽器として修理を行う可能性が低い箇所(例えば表面板やライニングやブロックなど)はタイトボンドを使い、ネックやブリッジのようにガッチリ堅く接着させ、なおかつ修理の可能性が高い場所はニカワを使うことに私はしています。ニカワの種類や使い方は「のみのみML」でも話題になりましたが当サイトでも説明していますので興味のある方は記事を探して御覧ください(私も何回もいろんな箇所で解説しているのでどこに記事を詳しく書いたか覚えていない)。ニカワと塗装に関してはみなさんからの質問・相談メールが非常に多いのですが、あれこれ考える前にまず手を動かして端材で実験してみることです。質問という行為はその次の段階なのです...。さあ、ニカワを買いにいこう!!?
■ 型ワクとボディ形状について
● ボディのゆがみと型ワクについて:全音社のキットではよくこの型枠の問題が話題に登るのですが、たいていの場合はキットを買ってきて梱包を開いてみると左右非対称にゆがんでいた..ということも多いようです。また、型枠には窮屈に押し込んであるわけですが、アナタはこれらをどう見ますか? 果たして型枠やキツイ固定状態は面倒な問題なのでしょうか? これについてみなさんと共に考えてみましょう。
ある方から御意見のメールを頂きました.....
>我が家にも今日とどきました。やったぜ〜と箱を開けてびっくり。側面
>板と治具のRが合っていないのに無理矢理ねじ込んでありました。側面
>板は異様にねじれ、おまけにひび割れまでありました。これではお手上
>げです。先ほど「交換して〜」とメールを送りました。
なるほど、いわば.....ちょいとばかし「ハズレ」といったところでしょうか(笑)。しかしまあ、亀裂に関しては程度にもよりますが、もしヒドイ状態であれば交換してもらえるといいですね。私の今まで入手したキットも相当数のハガレやゆがみはありました。多少の亀裂であればちょっとした工夫でうまく仕上げることも可能ですのでヒドイ場合をのぞきそのまま作りましょう。ヘアラインクラックが生じている場合は木工用アロンアルファを浸透させ、丸一日おいて(私の持論ですが、どんな接着剤でも丸一日固定するのをキホンとします)翌日にノミかカッターではみ出した接着剤を削除し、サンドペーパーを軽くかければよいのです。ハガレに関してはタイトボンドかニカワが良いようです。限りある資源と高原の小枝を大切に.....ピポピポ.....。
亀裂はちょっと困りますがボディのよじれは有る程度は修正できます。全音社のキットでは簡易的な型枠(治具)が付いてくるのですが、これは成型用でもありますがむしろボディにテンションをかけて組み立てるためにあると思ったほうが良いでしょう(私はそう考えて、そう使っています)。
モダンなギターや古楽器でもそうですが、側面板のボディ形状をモールドにピッタリの合わせて曲げたものを組み立てていく方法と、ラフに曲げてムリヤリ型枠にはめて木材に緊張(テンション)を与えた状態にて組み立てていく方法とがあるのです。ガンバやリュート製作家で後者のプロの製作家の方を知っていますが、彼らいわく絶対にこのほうが鳴りが良いとも述べています。私もまた、19世紀ギターの製作ではテンションをかけた状態でモールドに固定し、表面板や裏板を接着することが多いのです(楽器の種類や音域にもよる)。
なお、多くの伝統的なウクレレ(かつてのヌネスやカマカですら、ずいぶんヒドイ作りの楽器も多く作っていました)は左右非対称にゆがんでいるものも多くみかけますので気にすることもないとは思います、程度問題でしょうね。多少のゆがみは裏板や表面板を接着する際にボディと型枠をねじってヒモで巻き上げることで対処することができますし、この型枠を使って若干のボディ形状の修正も可能です。型枠を傾けて側面板の端部に片寄って装着することで左右のバランスを変えることもできるのです。
また、「のみのみML」からの情報によると電子レンジでチンするとゆがみを修正できるのだそうです。みなさん試してみましたか? チンして熱々になったところでサッと整形して冷めるまで、クランプなどで固定するとのこと。但し数十秒もあれば充分で、長時間加熱するとこげちゃうそうです(笑)、お気をつけあれ......。
なおかつ....ど〜〜しても気になる方は型枠(一種のモールド)を厚い合板などで作り直すことをお薦めします(もちろんテマヒマかかりますが完璧に成形できます)。さらに自分のオリジナルのボディシェイプに仕上げたい場合にもモールドを自作したうえでさらにベンディングアイロンにて加熱・変形させればOK! 楽しいぞ〜〜〜! もしあなたがベンディングアイロンでボディシェイプを変更したいのであればいったんエンドブロックやネック側ブロックをスチームアイロンで加熱して側面板とブロックを剥離(分離)したほうがうまくいきます....参考までに。
■ 木材について
● いろんな木材の表面板で作ってみたいと思うでしょ?でしょ? コアとかマンゴーはヒストリカルでよろしい.....逆にメイプルやウオールナットを使えば意外な音色が生まれるカモ...というワクワク感も自作楽器の楽しみなんです。ちょっとお金とテマヒマにゆとりがあれば他の木材を調達して今回のキットの表面板をとっかえて作ってみてもいいでしょう。とくに表面板はコアやマホガニーのほかにペア(洋ナシ)、ローズウッド系、メイプル、サテンウッドなどもおもしろいかもしれません。
ハワイアンコアは現在では希少な木材となってしまっていて、ハカランダやフェルナンブーコのごとく絶滅の危機すらあるようですので近い将来に伐採・輸入禁止になるやもしれません。現在入手できるコア材は多くをマレーシアなどの産地から採取されるものが多いようです。コダワリのウクレレファンはコア好きの方が多いのも事実です。私のウクレレコレクションにはこんなのもあるんです(1930年頃のハワイアン・フレイム・コア)。フレイムコア材は私も過去にいくつか入手する機会があり、大切にストックしています。 そして寝かせておいて、ここぞ! という1本に使うのであります。ああ、想像するだけでドキドキして鼻血が出ます。
ちなみにウクレレにはスプルースはや柔らかすぎて合わないようです。だいぶ厚みを増すか堅い材を使う、あるいはブレイシングを工夫すると良いかもしれません(期待は薄い)。過去にスプルーストップのウクレレも弾きましたが、今のところ気に入った音のものには出会っておりません........。むしろ私としてはオークやウォールナットのほうが興味深いマテリアルです。
■ 糸巻き(ペグ)について
● 私は個人的には木ペグが大好きなので、今回も付属の糸巻きは使わないことにします。木ペグは分数バイオリン(お子さまとかが弾く小さいヴァイオリンね)用のペグを楽器店で購入することができますがキットのネックに空けられているペグ穴はだいぶ大きいので寸法には注意が必要です。本来、当時のウクレレのペグはグリップが小さいのですが、古楽器用のペグなどで流用することも可能ですし、なんでしたら木工旋盤で自作するのもいいでしょう。作り方は当クレーンホームページに掲載あります。
さあ、こうやってコーナーの時間稼ぎを.......あ、いや、皆さんがキットを入手されるのを待ちつつ、「のみのみML」メンバーの大勢の仲間も出揃ったことですし、頃合いのみはからっていよいよ次回から製作にはいってまいります! 乞うご期待!!
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