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■ 032:ルネサンスリュート試作品
■楽器名:ルネサンスリュート試作品
■製作者:abe
● 仕様
6コース(1コースのみ単弦、2〜6コースは複弦)
弦長(ナット〜ブリッジ)=590mm
重量=1060g(弦含み)
● 材料
表面板=スプルース
ボディ=ハードメイプル、ローズウッド
ネック=アフリカンマホガニー
ペグボックス=アフリカンマホガニー
ロゼッタ=アガチス
フレット=ガット(0.9、0.8、0.7、0.6mm)
塗装=カシュウ(クリア)
● 弦(ピラミッド社)
1コース ナイロン弦(0.45mm)
2コース ナイロン弦(0.50mm)2本
3コース ナイロン弦(0.60mm)2本
4コース 巻き弦(906) 2本
5コース 巻き弦(1010) 2本
6コース 巻き弦(1018) ナイロン弦(0.55)
・コンセプト
リュートの構造を推測又は理解することを主眼として製作しました。図面が無いため、インターネットに表示されている映像から形状をトレスして型紙を作りました。あくまでも試作ですので、自由な発想で形を作りだしていきました。
・ボディ
リュートの美しさは何といっても瓜状のボディだと思います。糸鋸で切り出して、お手製のアイロンで曲線にし、板と板が密着するように形を整えました。
ネック側とボトム側に木片ブロックを作り、そこに張り付けていきました。この方法はCRANEさんの手法を参考にしました。
・ロゼッタ
音楽は調和の表現であろうとの考えで、ロゼッタに調和の表現をしたいと思い、6つの円が円形に重ね合わさるデザインにしてみました。デザインは2種類作製してみましたが、単純な方を選びました。初めは、既存のデザインを表面板に直接刻みましたが、非常に緻密なため、私の技術では仕上げられないと判断し、くり抜いてしまいました。
・ペグ
ペグは小型の木工旋盤を使って作りました。均一にテーパを付けるのが難しいです。製作途中のペグの姿はどこか可愛らしいです。
・楽譜と音色
リュートの楽譜は普通の店では売っていないので、神田の古賀書店で入手しました。ギターとは記載方法が異なり、時間のない私は未だ弾けていません。
音色に透明感はあると思います。メロディーラインを主に弾く1コースは単弦なので音量が小さく感じます。プロが作ったリュートを弾いたことがないので、ギターの音と比較でしかありません。
・その他
リュートはギターと異なり、形状が瓜状なので、作業中の固定に工夫が必要です。丸椅子を横にしてすべり止めマットの上に置くのが意外と効率良かったです。
ボディとネック、ネックとペグボックスはタイトボンドで接着し、さらに木ねじで固定しました。
● 今後の予定
ペグで11本の調弦をするのは大変です。面倒でなかなか弾いてみようという気持ちになりません。オリジナルに囚われず機械式糸巻でのリュートも作ってみたいです。
また、ルネサンスリュートをもう一台作ってもみたいですし、バロックリュートにも挑戦したい気持ちはあるのですが、問題は時間がなかなか作れないことです。
【鶴田より】
以前、ギター作品を2回投稿いただきまして(027:「19世紀ギターabeモデル」、028:「MINI GUITAR TYPE-S」)、しばらくぶりのabeさんの新作です。
今回はリュートですな。
リュートの起源とされるウードを彷彿させますね。リブの組み立てにもアイディアと苦労が伺えます。ロゼッタもオリジナルで面白いデザインです。綺麗に加工されていると思います。ペグもこうやって1本づつ削って作るのは手間のかかることです。ごくろうさまです。
ここは思いきってピックアップ付けてアンプ出力できるリュートとかどうでしょ? なんたってエレクトリック月琴もあるぐらいですからねぇ。エレクトリック三味線もあるし、国際的にも電気サズとか電気ウード、電気チター、擦弦楽器や管楽器はもちろん電気楽器はひととおりあるので、無いのはエレクトリックリュートぐらいでしょう。
かつて20世紀に古学の復興が盛んになり、リュートなるものを手探りで作っていた人達のことを思い出しましたよ。そういえば、この21世紀になっても日本語でリュート製作をこまかく解説したり図面を提供しているホームページが我が国日本には見あたりません(たいていのリソースは海外)。私がリュート製作の記事を公開したのが2000年頃だったと思いますが、ほかにも参考になるようなサイト、どこかにあるのでしょうか? あってもよさそうですよね? ギター製作のサイトはけっこう増えましたけど。
「これこそがヒストリカルなリュート製作である」みたいな日本語のホームページ、そろそろ出てきてもおかしくないのですがねぇ ... 。
まだ当分無理でしょうかねぇ(笑) ... 。
記事:2014.5.12