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■ 027:「19世紀ギターabeモデル」
■楽器名:「19世紀ギター abeモデル」
■製作者:abe さん
● 制作期間:2年9ヶ月
写真の撮影月日を見たら一番古い写真撮影日が2008年3月でした。つまり2年9ヶ月の期間が経っていました。勿論毎日作業しているのではありません。気の向かない時は何ヶ月もほったらかし状態です。おかげで木の乾燥による狂いも解消しています。
● 材料:基本的に全て手作りにこだわったつもりですが、既製品も使用してしまいました。
手作り
表板:エンゲルマンスプルース
側板:アガチス
裏板:ハードメープル
ネック:マホガニー
ヘッド:ラワン、インドローズウッド、黒檀、カヤ、桧、アワビ
指板:インドローズウッド
ペグ:桜
既製品
バーフリング、フレット、ライニング、弦
【弦】弦
弦はあちこちのHPを参考にして選定しました。
1番 Aquila Alchemia mi
2番 Aquila Alchemia si
3番 Aquila Alchemia sol
4番 Pro・Arte Light D
5番 Pro・Arte Light A
6番 Pro・Arte Light E
【塗装】
カシュー(クリアー)
● 製作について:
・私もこの楽器製作のために様々な道具を入手しましたが、ベンディングアイロンを持っていません。側板の曲げ加工は大変でした。お湯をかけゆっくりゆっくり曲げました。
・ヘッドの装飾に凝ってみました。廻る寿司屋でアワビを食べ貝殻を持ち帰り、長方形に切り出して加工していくのですが、厚みがないので失敗の連続でした。
・ロゼッタは指板用のインドローズウッドと工作用の桧板です。これもアイロンが無いのでお湯をかけながら茶筒に巻きつけて加工しました。
・加工を正確に行うための治具をいろいろ作りました。本体を作るより楽しい感じでしょうか。特にフレット溝をぶれないで切る治具には満足しています。
● 音について:
私が想像していた音色に近いクリアな音です。低音は立ち上がりが弱く少し間延びした感じなのが気になります。ナットの調整を工夫してみようと考えています。
● 製作の写真
・写真1 ヘッドの装飾に使ったあわび
・写真2 ボディ:サウンドホール、指板、パーフリング、ロゼッタ
・写真3 ボディエンド
・写真4 フレットの溝切り作業
・写真5 ヘッド
・写真6 裏側全体
個性的な二重のロゼッタ、まさに二重丸モデルですな。ボディ内部に貼られたラベルも凝ってます。ブリッジはドイツの19世紀ギターに見られるような両脇に張り出す1本のスタイルですね。ベンディングアイロンがなければお湯で曲げる! ペグだってヴァイオリンの流用ではなく桜材から削って作られています。がんばってますなぁ!
今回の製作者abeさんとはメールで何度かやりとりしまして、材料の選択や治具づくりなど非常に熱心にとりくんでいらっしゃいました。こうやって完成した楽器をみると私も嬉しいです。「超超超スローペースで作りました」とのことですが、3年近いその期間で試行錯誤されたのでしょう。自らのコダワリが全体に反映されています。
この楽器、当クレーンホームページの無料楽器図面のコーナーにあるCRANEラコートモデルの図面A002を参考にしたとのこと。じつはいまでも世界各国から同じようにこのA002をもとにギターを作ったという報告のメールが時々届きます。クレーンホームページに段階的な製作記事が公開されているせいでしょうね。1999年に私がギターを作りながら書いた記事ですが、いまでもお役にたっていることは嬉しく思います。現在では私の製作の手法や手順が変わっていますが、いま見ても当時のチャレンジ精神が記事の随所に顕れていることは、いまさらながら懐かしく思います。自分の思いをあれこれ試してみたい、そんなキモチ、熟練してからでも大事ですよね。