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記事:2010年5月19日
たくさんの御来場ありがとうございました。
以下に今年の展示会の様子をまとめてみました(全ブースの取材含む)。
【CRANE 展示ブース】
【今年のCRANEブース】
さて2010年の展示会、私の「工房クレーン」のブースは御覧のとおり。 新作ギター2本、新作ウクレレ1本、新作カポタスト17個+旧作少々。それに無料の絵はがきが7種類。楽器に関する資料ファイルも今年は復活しました! あとは例年用意している定番商品の弦計算尺、Benedidの音楽CD、イングリッシュギターの音楽CD、以前記事を執筆したCD付きムック。
もちろん今年も看板娘がお手伝いに来てくれてます。おかげで私は安心して他のブースやらライブやらを取材してまわって、こうやって報告記事が書けるのです。私みたいなムサイおっさんよりも、若くてカワイイ女の子のほうがお客さんにはウケるでしょう。
ブースにお客さんがやってきて、たまにですが初対面の方はびっくりします。「鶴田さんってこんな若い方だったんですか?」 グフフフ.... おぬし、実年齢を知らんな。 ちょっとトクした気分です(笑)。そういえばこのあいだイタリア人が私の写真を見て「27歳でも通用する」と言うておりました。じつは老眼が進み、頭も白髪化しているのが実態なんですが.... 。しかし、全国のルーズソックスの女子高生のCRANEファンのためにも(そんなのいるのか?)当分は27歳で行くことにします。ウチの家系は代々父も母も顔や手にシワが出にくいのです。幸か不幸か、私も家系に漏れず実年齢より大幅に若く見られたりします。よく「年齢不詳」なんていわれます。ホームページでは文章に旧仮名遣いが見られるので、ワシのことをかなりのお年寄りだと思う方もおられるようです。中学生の頃に学校の図書室で「のらくろ」を愛読していたせいでしょうか。
● Concept-7
新作のギターはだいぶ小振りなので、フツ〜の大人が手にすると、楽器がやたら小さく見えます。Concept-7aとConcept-7cの2本は並べて展示すると正面からでは区別がつきにくいのですが、ボディがシカモアとカーリーメイプルの違いがあり、表面板もエンゲルマンスプルースとイングリッシュパインの違いがあります。内部のブレーシングはスペイン的ファンタイプとCRANE独自のX(A)ブレイシングといった点も異なります。いわば2本は似て異なる物。
それでも実際音を出すと皆さん、個性の違いに好みがはっきり分かれるようです。製作過程を含めた詳しい記事はいずれ「私の製作した楽器」のコーナーで掲載していきます。
● 5弦ウクレレ
構造は見てのとおりで、ふだんからCRANEのサイトを御覧の方々にはごくフツ〜に「クレーンらしいウクレレ」に映ったようですが、CRANE免疫の無いお客さんはだいぶ不思議に見えたようです。とにかく「これは何ですか?」が続出。 ウクレレですか?と訊いてくれるならまだマシです。多くの人は弦が1本増えただけでまったく別モノに見えるようです。おそらくウクレレというのは4弦であるという先入観があるのかもしれません。タロパッチとか複弦ウクレレを御存知でないのかな? アメリカではハープウクレレもけっこう作られています。私に言わせればギターもウクレレも弦の数やボディの形状にこだわらず自由に作ればいいのですよ。ヒストリカルなウクレレもあれば、斬新な創作ウクレレがあってもいいじゃないですか。今回、ウクレレでソロ曲をフィンガーピッキングする前提でこの楽器を考案したのです。その場合、5弦は重宝して意義深いハズなのです。しかし.... あぁ、やっぱり今回も理解されないのか......。
展示会の2日目の昼過ぎに私のブースにやってきた女性。あとで知ったのですがハワイでは非常に有名な奏者らしいのです。父上がウクレレ奏者で彼女は3歳からウクレレを始めたとか。 私の5弦ウクレレを見ていきなり感激してました。彼女は初めて手にしたであろうその楽器を即座に弾きこなしていました。それを見た私は、逆に感激してしまったのでした。この楽器を初対面で弾ける日本人は果たして何人いるだろうか? ウクレレは4弦がアタリマエ? そんなことは彼女にはまったく関係ありません。私が説明するまでもなく、ちゃんとベースとして鳴らしてました。なんてことだ!すごいなぁ、世界は広いのだ.....。しかも、同伴したお友達にもこの楽器のことを説明しながら弾いて聴かせたり、デジカメで写真撮ったり、かなり気に入ったようでした。いやぁ〜〜〜、ワカル人にはちゃんとわかってもらえるもんなんですなぁ、無性に嬉しくて泣きそうになりました。
私が想定した音響的ルールを説明するまでもなく、彼女は自ら理解・実践していたのです。レベルの高さがゼンゼン違います。むしろ楽器に関してあれこれ質疑応答しない言語の壁が幸いしたのかもしれません。ハワイのアメリカ人演奏家と日本の地道な弦楽器製作家が共有できた喜びです。私が弦楽器製作家でいる最大の喜びは万人にウケる楽器を作ることではなく、たとえ地球上の一人でもいいので私の意図を真に理解できる人が現れることです。市場原理を無視した理想が叶う。今日はその日だったのです。素晴らしい! 嗚呼、もう今すぐ死んでもいい...(笑)。
【会場】
近年は開催初日から大勢のお客さんがやってくる傾向があります。どこのブースも大賑わい。途中でギター雑誌の取材を受けたり、お店や会社の人が商談でウロウロしたり、職業人演奏家もやってきます。たんにウクレレライブを聴きに来たリスナーや弾かなくても作ることに興味のある人もいたり、性別や年齢もじつに様々。展示会場には隣接して試奏ブースが設置され、状況によって移動壁の配置を再編成して使っていたようです。ゲストによるライブステージも盛況でした。去年から始まったウクレレ製作教室、これもまた老若男女が集い、もちろん今年も賑わっていました。
以下、今回の出展者の全ブースをブース番号順に掲載しています。混雑の事情やお話の最中だったりして撮影は網羅しているわけではありませんが、御覧になり雰囲気など感じていただければ幸いです。なお、掲載にあたって写真に写っている顔部分は本人許諾を得たもの以外はボカシてあります。その他、説明文の内容など、お気づきの点があればいつでも修正しますのでメールで遠慮無く御連絡ください。
【各出展者のブースの概要】
今年はTOKYOハンドクラフトウクレレ展ではないかと思うほどウクレレの出品が多く見られました。考えてみればそういう私も1本ウクレレを展示してた! 近年のウクレレブームもあってか、お客さんもウクレレ目当ての方が非常に多かったようです。 来年もウクレレ作ろうかな(笑)。
(1)IMPERIAL CUSTOM GUITARS:個性的で印象深いこのギターはネックとボディにホンジュラス・マホガニーを用い、トップはメイプル。試作機ですが、これをもとに好みの仕様でオーダーできるのだそうです。
(2a)BLUE Strings:アコギとエレキとウクレレ。右手前のギター、アッパーブーツがとっても小さくてかわいらしいです。静岡県からの出展。
(2b)弦々トムテ:出ました!去年に引き続きトムテさんのブースです。今年も彫りぬきボディのチャランゴとウクレレがズラリと登場。ケヤキやウォールナットのブロックが見事なボウルバックに仕上がっています。じつはこんなウクレレ、私もちょっと欲しい。今年はスモールサイジングに挑戦したちっちゃいオクターブウクレレが大人気! 埼玉県から。
(3)forM:アコギやウクレレ、エレキギターやベースも製作。フルオーダーも可能。ウクレレのベースアンプは仮のものだそうですが、案外面白い音がしてました。ちゃんとしたアンプなら立派に鳴るのだそうです。愛知県から出展。
(4a)Voyager Guitars:静岡・南伊豆から今回の展示会に初登場。おもにギターの製作とリペアを行う個人工房。
(4b)有限会社タツタ:福井県のタツタさんはメガネ部品が専門ですが、その技術でチタン系のギター部品も製作。トラスロッドを御覧あれ。
(5)-(6)テクノトゥールズ株式会社:アメリカのメーカーの代理店として弦楽器製作に用いる木工機械や工具類を輸入・販売しています。弦楽器に限らずこのテの工作機械は木工ユーザが多いのでご存知の方も多いハズ。私もドラムサンダーやガッチリしたワークベンチも欲しいんだけど場所をとるからなぁ...(45)Sakata Guitars & Ikko Masada Guitars:アーティストの歌心を触発するようなシンプルで美しいギターを目指すサカタギターズ、山梨県甲府市から。 そして神奈川の相模原でオリジナルのフィンガースタイル向けギターを作っているIkkoさん。
(46)-(47)ソングバード ギターワークショップ、AT guitars、沖田ギター工房:ソングバードさんと沖田さんは千葉のギター工房、ATさんは栃木県から。
(48)小林大作GUITAR:長野県小諸市でアコースティックギター作りをされている小林さん。
(49)SUGI CRAFT:ギター2本を出展のスギクラフトさん。富山県から。
(50)-(51)ロッコーマン株式会社&アストリアスギター製造株式会社:メーカ系のブース。アストリアスギターとアストリアスウクレレなど。お店を広げて木材販売も。東京・池袋から。
(52)有限会社 幸昭:防音ドア、組立型防音室など。静岡県から。
【御礼】
今年もまた入場者数の記録が更新されました。このTHGFもハンドメイドのギター系の展示会としては唯一とあってか、年々盛況で世間の認知度も高まっているようです。企画から様々な連絡や手配、会場設営や楽器搬入の案内・補助など、事務局・スタッフの皆さんにはよくやっていただいて助かります。
例年のことですが、私のCRANEのブースも多くのお客さんがあり、常連さんもあれば10年ぶりぐらいの方もあったり、始めてお目にかかる方も少なくありません。いつもCRANE HomePageを御覧いただいている方々や、メールのみを交わして面識の無い多くの人たちに今回初めて顔を合わせる機会になり非常に嬉しかったです。これはおそらく他の出展者の皆さんも同じ喜びでしょう。
カポタストもいくつか売れ、CDや本も売れました。そのお金で他のブースへ行って木材や貝を買ったりしてました。しかも、今年は弦計算尺を買っていく人が4人もいて、心の中でひそかに号泣してました。なんで!? なんで!? なんで君たちそんなもの買うの!? こんなもの買ったら「マニア」って呼んじゃうぞ! いいのか!?
クレーンホームページには毎週のように国内外のCRANE読者や製作家や演奏家や弦楽器愛好家からメールが届きます。とくに近年は海外からのメールが急増しています。とりわけ多いのが製作過程の解説と図面への感謝のお便りです。ものづくりの楽しみ、楽器作りの喜びが伝わってきます。そういえば、工業高校の生徒さんと先生がブースにやってきました。これがまたとっても嬉しかったんです。私も工業高校の出身で、なおかつ音楽が好きなのでギター製作というのはプロダクトデザインの好例だと思っています。高校生の彼が作ったギターは意欲的なものでした。現代の若者に希望を持てないといったような報道も少なくないこの頃ですが、なかなかどうして、イマドキの若者にも素晴らしいい人たちがいるじゃないですか。また同時にそれに共感し、見守る家族や先生や友人も周囲にたくさんいるのでしょうね。 ものづくり、スバラシイ。
年に1回の展示会。あっというまに終わっちゃいました。
次回もまた会場でお会いしましょう。今年よりもっと濃くて、もっと変な楽器を用意しておきます(笑)。
ありがとうございました。
CRANE HomePage 鶴田
記事:2010年5月19日