トンプソン作 6コース・イングリッシュ・ギター(シターン)
ロンドン 1770年頃 完全修復済み
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このページ久々のイングリッシュギターですね。

イングリッシュギターは金属弦を持つシターンの仲間で、18世紀後半に英国を中心に大流行しました。
この頃には英国ではいわゆるバロックギター(スパニッシュギター)はすたれており、
ギターと言えばこのタイプの楽器を指していました。(Guittarとつづる場合が多かったようですが)

18世紀後半の数十年間に(のみ)用いられた楽器ですが、実はレパートリーは非常に広く、
容易な単旋律による民謡から、高度なソナタ、ファンタジー、アンサンブル曲など、大変多岐にわたります。
また、F.ジェミニアーニ、J.C.バッハ、R.シュトラウベなど大作曲家による作品も多く残され、
当時、大流行した「乞食オペラ」などもこの楽器のために編曲され出版されています。

18世紀後半はリュート/ギターのレパートリーにはややさびしいものがありますが、
このイングリッシュギターはそのリンクを豊かな音とレパートリーで埋めてくれます。

イングリッシュギターは、18世紀後半にいわば市民階級の台頭と同時に流行した楽器だけあって、
演奏技巧は平易です。
ハ長調の和音(下からドミソドミソ)に調弦され、多くの楽曲はハ長調、楽譜は基本的に五線表記です。

何を隠そう、私自身、この楽器には非常に魅了され学生時代から研究を続けており、
英国リュート協会での発表/レクチャーコンサート、BBCへのレコーディング、自分のリサイタルにての演奏などを行なっています。
イングリッシュギターを蔵する博物館では、オクスフォードのアシュモリアン博物館、ロンドンのフェントンハウス、ホーニマン博物館、
ヴィクトリア&アルバート博物館、日本の浜松市楽器博物館などにおいてレクチャー・リサイタルを行いました。

私家版の教則本も作り、また昨年に録音したイングリッシュギター音楽のCDはこの秋にリリースされる予定です。

竹内の教則本とCDのサンプル・ドラフト版

今回の楽器の製作はヴァイオリン属とイングリッシュギターの名工/楽器商であったトンプソン。
チャールズ&サミュエル・トンプソンとその商会は、18世紀の後半にロンドンで良質の弦楽器を製作し、販売していました。
ボディーのヒールに[Thompson, London]の焼き印が押されています。
トンプソンのヴァイオリンは現代でも高価に取引されていますし、イングリッシュギターは博物館が所蔵する楽器も多いのです。

弦長は42センチ、イングリッシュギターとしては最も標準のサイズですね。

イングリッシュギターの調弦方式にはウォッチキイシステムと呼ばれる機械式、
およびリュートに見られるような木製ペグのものがあります。

機械式糸巻きと木製ペグ

機械式は調弦が正確に行いやすいのですが、反面、弦の装着にはコツが必要で、また機械が故障した際の修理はやっかいです。
また音響的には、木製ペグを持つ楽器はより暖かで自然な響きを持ち、音量もある場合が多いようです。
(機械式のものはややクールで透明な音を持つ場合が多いようです)

18世紀にはペグを持つ楽器が美しいとされていたようで、絵画などには多く描かれています。


今回の楽器は木製ペグ装備、大変美しいプロポーションを持っています。


スプルースの表面板。ローズは象牙と木による星形の美しいものです。


美しい虎杢の裏横板。


ネックとヘッドもメープル。


ヘッドは美しく造形されており、トップにはローズと同じデザインの星形のインレイが施されています。


イングリッシュギターは19世紀以降はほとんど使用されていないので、残されている楽器の大多数にはそれなりに痛みがありますが、
今回の楽器は驚異的なほど保存状態の良いものだと言えます。

表面板に大きな割れはありませんが、、裏板は外されて再接着の跡があります。
大きな損傷はなく、内部の力木なども健康な状態です。

おそらくペグを含む全てのパーツのオリジナルで、大変貴重な一本と言えます。
今回、出展に当たってはロンドンの古楽工房にて全てのチェックを行い、
フレットとブリッジも適正に調整され、大変弾き心地の良い楽器に仕上がっています。

こなれた暖かい音色で大変よく鳴る楽器で、すぐにでもコンサートなどに使用できます。

まさに博物館ものの貴重な一品です。

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