オリジナル19世紀ギター (ラコート・ラベル)
フランス 1810ー30年頃
価格43万円
お気軽にご質問/お問い合わせください。


非常によく作られたオリジナル19世紀ギターです。
ラベルはルネ・ラコートのものが貼られていますが、楽器のスタイルから、またラベルそのものから見て、
おそらくは後世に貼られたものでしょう。従って、当HPでは「作者不詳のフレンチ」として扱います。
いずれにしても大変素晴らしいギターです。
製作はおそらくミルクールで1810ー30年頃の作品でしょう。
ペグヘッド、メープル裏横、薄い指板付きのスタイルです。
ボディの形は大変エレガントで、ロココ時代からラコートの初期作品にかけての流れを見ることが出来ます。

左から
マスト作:1780年頃、出展楽器、ラコート1820年代
良質の材料と着実なクラフツマンシップにて製作されたギターです。
スプルースの表面板。質の良い材料です。

表面板とロゼッタ周りには黒檀によるパーフリングがあります。

デザインは簡素ですが、非常に丁寧な細工です。
裏横板は素晴らしい木目のメープルです。プティジャンなどにも大変よく似ています。

裏板は一枚板で、割れの跡はありますが全体としては良い状態です。
もともとの材料が良く、工作精度も高かったのでしょう。
ニスは黄金色に輝くオイルニスです。ヴァイオリンの名器を彷彿とさせます。
なんというか、一種の凄みすら感じさせる仕上げです。

ネックとヒールには黒檀が巻かれています。

ヘッドも黒染めです。ペグのいくつかは交換されているようです。フィッティングは良いですね。

黒檀の指板。フレットは象牙です。

修理跡は比較的少ない楽器です。
横板と裏板にはいくつかの割れの跡がありますが綺麗に修理され、現在の状態は良く、すぐに演奏に使えます。
象牙のフレットも調整されており、弾きやすく鳴らせやすい楽器に仕上がっています。
弦長は640ミリ。この弦長はプティジャンなど19世紀初頭のミルクールのギターに多いですね。
ナットの長さは43ミリで、これもプティジャン系統の典型です。
やや長めの弦長は豊かな響きを生み、狭い弦幅、低い弦高のために左手の拡張も容易です。
軽いタッチにも敏感に反応し、深い低音に乗って高音がレガートに響いてくれます。
小さなボディにも関わらず音量もあり、一つのマスターピースと言えましょう。
このタイプのギターは、ともすれば繊細すぎるきらいもあるのですが、
この楽器はタッチにも寛容で、懐の大きいところがありますね。
このタイプの楽器は、重量は軽め、弦長は長め、弦幅は狭め、弦高は低めが特長と言え、
左手の押弦、右手の弾弦ともに演奏は大変容易で、身体の力を抜いて弦に触れるだけで楽器は音楽的に鳴ってくれます。
まるで喋るように、語るように音楽することが可能で、これはバロック時代からの撥弦楽器の理想のひとつの形と言えます。
古楽器の専門家にも、モダンのギタリストにもお勧めできる楽器です。

戻る
メイル
Appendix! 19世紀ギター「常識のウソ」
*「19世紀ギター」と呼ぶのは日本だけであり、海外では通常「ロマンティックギター」と呼ばれている・・・
いいえ、そんなことはありません。 英語でも19th
century guitar(s)と通常呼ばれています。
Romantic Guitar もしくは Guitare Romantique と呼ぶ場合もありますが、
「ロマン派時代のギター」と「ロマンティックなギター」の区別がつきにくいので、昨今では避ける傾向にあります。
*19世紀ギターはA:430に調弦するのが良い・・・
根拠はあまりありません。 A:430というのは現代の古楽器クラシカルオーケストラのピッチであり、これにも深い理由があるわけではないのです。
19世紀にはギターはソロや歌の伴奏が主であり、他の楽器のピッチに合わせることは通常はありませんでした。
このことはアグアドやソルの教本にもあきらかですが、ギターは通常は他の楽器よりも低く調弦されたことが多かったようで、
プラッテンの教本にもはっきりと「ギターはピアノよりも全音低く調弦する」と書かれています。
*ラコートには弟子の作品が多く、当人が音作りに関わっている楽器の方が素晴らしい・・・
いいえ、間違いです。 ラコートは大きな分業体制を敷いていた工房でしたから、いずれにしても製作には多くの人の手がかかっています。
またOEMも多く「ラコート本人の作」の分別は出 来ません・・・というかそもそもそんなことを考えること自体がナンセンスですね。
美術工芸品において、当人が銘を打った(ラベルを貼った)ものは真作として扱うのが常識です。
似たようなことはストラディヴァリ、アマティなどのヴァイオリン工房、パノルモやシュタウファーなどにも言えます。
(パノルモに関しては「ルイ・パノルモの真作が最上で、ジョージ・ルイス・パノルモは偽物を作った」ということを聞いたことがありますが、
現代における創作です・・・みんな想像力が豊かだなあ・・・ふう)
また、「ラコートの没後、残された材料を使って弟子が作ったギター」というのもたまに聞きますが、
ラコートの正確な没年は未だに不明なので、その説自体にあまり意味はありません。
*ラコートには偽物が多いから気を付けた方が良い。
これは間違いではないにせよ正確ではありません。むしろミスリーディングするものです。
20世紀初頭に発行された楽器事典にラコートのラベルの複製が載せられており、
それを切り貼りしてラコートに見せかけた楽器がありますが、まあ一目瞭然です。
むしろ、ラコートは異なるスペックの楽器を多く作っていますから、真作の楽器を早まって「偽物」と勘違いしないようにする方が重要でしょう。
*ラコートは19世紀ギター中の最高傑作であるがゆえに、最も高価である。
確かにラコートの楽器は素晴らしいですが、フランスに限っても、レテ、マルカール、プティジャンなど肩を並べる名工は多く居ます。
ラコートは当時を代表するギタリストの為に楽器を製作していますが、
まあこれは「ヤXXのギターファクトリーが有名なXXさんの為に特別に楽器を作った」みたいなお話しですね。
・・・で、現在何故ラコートだけがもてはやされ、また高価であるかと言うと、
ラコートは大きな工房だったので製作台数が多く 現存する楽器の数もそれなりにあり、市場における相場が形成されやすいからなのです。
*19世紀ギターはモダンギターよりも良く鳴る。
いいえ、 単に「19世紀ギターとモダンギターは鳴り方が違う」だけです。
演奏法、演奏会場、音楽の作り方は現代と19世紀では大きく異なります。
昨今よく見るのは、19世紀ギターに強い張力の弦を張ってモダンギターと同じ奏法で演奏し、
「広いホールでも音が良く響く!流石だ!」と喜んでいるモダンギター奏者ですが・・・
頭ごなしに否定するつもりはありませんが、これはたまたまそうなだけで、いわば単なる勘違いです・・・
19世紀ギターは当時の演奏法、当時の楽器のコンデション、当時の会場にて本領を発揮するのです。
*19世紀ギターを欲しいが、なかなか自分の思っている様な楽器に巡り会わない。いっそ、好みの仕様で新たに製作してもらおうと思う。
これはいちがいに間違いとは言えません。個人の考え方の問題です。
・・・しかし、「好みの仕様」とは何でしょうか?
それは多くの場合これまでの(決して広くはない)体験と、(けっして大きくはない)知識から導き出されたものです。
反対に、オリジナルの状態の良い楽器からは、非常に非常に大きな示唆と、
レプリカからは決して得られることのない素晴らしい経験を得ることが出来ます。
そして、それはその楽器とある程度真摯に付き合ってみないと、決してわからないことである場合が多いのです・・・
つまりはオリジナル楽器を弾くということは、自分自身が未知の世界に挑み、音楽の経験値を上げる行為なのですね。
その意味でも、真摯に古いギター音楽に興味を持つ方には、オリジナル楽器を(も?)持つことをお勧めします・・・