ヘルマン・ハウザー1世作 リュートギター/ラウテ/マンドーラ
ミュンヘン、1914年
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このページ初めてのリュートギターですね。
製作者はなんとあのヘルマン・ハウザー一世!

ハウザ一世のスペイン式ギターは、セゴヴィアやブリームなど20世紀を代表する大ギタリストたちによって使われ高い評価を受けましたが、
彼はもともとシュタウファー系のウィーン式ギターやリュートギターの名工でした。

ハウザー一世のウィーン風ギター(1911年)とリュートギター(出展楽器)

現代ではリュートギターと呼ばれることの多いこの楽器ですが、
もともとはバロック時代にドイツ語圏で愛好されたマンドーラというリュート属の楽器でした。

テクラ作のマンドーラ

マンドーラは18世紀にリュートが使われなくなってからも生き残り、
19世紀にはドイツ風リュート(ラウテ)あるいはマンドーラの名前で愛好されました。

19世紀末の楽器カタログから

20世紀初頭にドイツで国民的音楽運動が盛んになると、リュートギターは最も「ドイツ的」な楽器として脚光を浴びるようになります。
調弦がギターと同様で容易に和声が弾け、持ち運びも容易な楽器として、
野山で民謡を歌うワンダーフォーゲル運動にも良く用いられました。

また折からの古楽復興ブームにも乗り、リュートギターは「現代リュート」として
中世、ルネサンス、バロック音楽の演奏に大いに用いられました。
その立役者とも言えるのがドイツの音楽学者/ギタリストだったハンス・ダーコベルト・ブルーガーで、
彼はリュートギターの教則本/教本を出版しています。リュートの歴史や奏法にも触れられている大著です。


またブルーガーは音楽史上初の「バッハ・リュート曲全集」を編集、出版しましたが、
これもリュートギターを念頭に置いています。

ブルーガーのバッハ:リュート曲集


今回の楽器、流石にハウザーの作で、素晴らしい材料とクラフツマンシップを見ることが出来ます。
また音色や音量も大変素晴らしいものです。

スプルースの表面板、メープルの裏横板。


裏板のメープルの木目は見事です。


ロゼッタは大変美しく彫られています。


ヘッドの造形も流石です。


黒檀の指板はスケロップで押弦は容易です。


ラベルはバロック時代のそれを似せたもので、[Hermann Hauser Lautenmacher]
(ヘルマン・ハウザー リュート製作家)
と誇り高く書かれています。

やはり伝統あるドイツの弦楽器製作家の一員であるという意識の表れでしょうか。

弦長は66センチ。ハウザーのリュートギターとしては典型のサイズです。
現状では古楽器用のナイルガット/ナイロン/巻き弦を張っています。

流石にハウザーの作、非常に品位の高い音色で大変よく鳴ります。
その透明な音色はやはり一流の弦楽器製作家の手になるものです。

表面板と裏板には亀裂の跡がありますが、修理は良心的に行われています。
現在の状態は良く、すぐに演奏に使えます。

リュートギターというと、なにかアナクロ的に捉えられがちなのですが、
これはこれで歴史の生き証人として、また同時に現代にも通用する生きた楽器として考えられるべきでしょう。

特にクラシックギターを演奏される人で、ルネサンス・バロック時代の作品を弾いてみたい方には
うってつけの楽器だと言えるでしょう。
私の様な純粋?古楽器奏者もこのような名器を手にするとこの楽器をコンサートに使ってみたくなります。
(ハウザーのリュートギターは実は一台所有しています)↓


このタイプの楽器は20世紀の中頃に日本にも輸入されており、小磯良平の作品に多く描かれていますね。
私自身、神戸の小磯良平記念美術館で彼の所有していたリュートギターを見ましたが、
実に綺麗な材料とプロポーションで製作された美しい楽器でした。


また武満徹の「リュート作品」も実際はリュートギターのために書かれています。
その意味で日本の文化とも大きな関わりを持っていると言えるでしょう。


(実際、21世紀の今日、「歴史的モデル」として製作されているリュートも、
実際には現代人のニーズに合うように変更されているのが通常ですから、
今回のような楽器が「オーセンティックではない」と言われる筋合いはないのです。

いや20世紀前半に製作されたリュートギターにはガット弦/シルク上の巻き弦が張られていたことを考えると、
ナイロン/ナイロン上の巻き弦がデフォルトの現代のリュートよりもより歴史的リュートらしいとすら言えるかもしれません・・・

ミュンヘンの博物館にはハウザーの楽器のコーナーがあります。

ミュンヘン州立博物館のハウザーコーナー

またヘルマン・ハウザーが手にとって検分したとされるオリジナルのリュートや古いギターのコレクションも充実しています。


つまり、今回のリュートギターは、ハウザーがオリジナルをよく調べた上で、
時代のニーズに合わせて自分なりの解釈で製作した楽器で、相応の敬意を払われるべきものです。

その意味で、例えば現代のリュート製作家の多くがそうであるように、
オリジナルのリュートを手に取ったこともなく、歴史的な資料の知識もなく、
他の現代製作家のリュートを真似する態度とは根本的に異なります・・・)



ハウザー一世の楽器はこのところ高騰しており、状態の良いスパニッシュギターは一千万円を超えます。
ウィーン式ギターや今回のリュートギターはまだ手の届く価格ですが、そのうちにどんどんと上がってしまうのかもしれません・・・

先頃出版された[The Lute in Europe]にもほぼ同様の仕様のハウザーのリュートギターが写真付きで掲載されています。



日本での試奏が可能です。


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