マーチン・フリーソン:8コース・ルネサンス・リュート(イギリス、1979年)
弦長64センチ
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貴重で素晴らしいリュートです!
製作はマーチン・フリーソン。
フリーソンは1960年代から80年代にかけてイギリスで活躍したギター/古楽器製作家です。
イギリスの本格的なクラシックギター製作家としては第1世代と言え、
ほぼ同年代の製作家としては他にルビオやロマニロスが挙げられます。
フリーソンのギターは多くのギター名器関連書籍に言及されています。

Fine Spanish Guitars

クラシックギター名器セレクション
フリーソンは50代初めに夭折したために製作数は少なく、
150本程度のクラシックギター、ごく少数のリュートとヴィウエラが残されています。
私自身、彼のリュートを見るのはこれが初めてです。
丁寧で誠実に作られ、風格のただようフリーソンの楽器は人気が高く、あのジョン・ウイリアムスもコンサートとレコーディングに使用しています。

彼のギターは日本の楽器店でもしばしば扱われていますね。価格帯としては100-120万円くらいなようです。
彼の古楽器には「マーチン・フリーソン工房」旨のラベルが貼られています。
ギターに比べてより手間のかかる古楽器は工房で弟子たちと分業していたのだと言われますが、
同時代のルビオの工房に似たシステムだったのかもしれません。

良い材料を使い、隅々まで非常に丁寧に作られた良質のリュートです。
豪奢な装飾などが施されているわけではありませんが、その造形、仕上げ共に輝く様に美しい楽器で、作り手の美意識が強く感じられます。
なんというか、個人的には「象牙色のリュート」のようなイメージです。

経年変化による歪みなどもほぼ皆無、使用による汚れや傷もほとんどなく、
もともとも材料と作りの良さ、所有者の丁寧な取り扱いなどが感じられます。
リュートの形には大きく分けて2種類、丸みの多い真珠型(ヒーバー、ヴェネーレなど)と
細長いアーモンド型(マーラー、フライなど)に分けられます。今回の楽器はマーラー系のアーモンド型のリュートです。

アーモンド型の出展楽器(左)とヒーバー型のリュート

オリジナルのマーラー作のリュートのバック(V&A博物館)
この形で、ローズが小さめのリュートは音が甘く美しいのが特徴で、今回の楽器もまさにそのように響きます。
上質のスプルースの表面板。黒染めのブリッジ。

ローズも美しく彫られています。

美しい木目のメープルの裏板。11枚はぎです。黒檀のスペーサーがあります。ニスも美しいものです。

ネックとヘッドもメープルですね。

ペグはペア-でしょうか。ヘッドには黒檀のライニングがあってアクセントを添えています。

30年以上前に製作されていますが、コンセプトとしてはモダンリュートではなく歴史的なリュートです。
弦長64センチ、ナット上の1コース〜-6コース間が47ミリとやや大きめで、造りも鳴り方もしっかりとしているリュートなので、
クラシックギターを演奏する方でも比較的容易に持ち替えが出来るでしょう。
ことに右手の爪を伸ばしている奏者がリュートを弾く場合、ブリッジ/ローズ周りの弦高(弦と表面板の距離)
が低いと爪が表面板に当たりがちですが、このリュートは6-7ミリにセッティングされており、演奏性は良好です。
コンデションは大変良く、割れは勿論、弾き傷や汚れもほとんどありません。
今回、出展に当たってはロンドンのリュート製作家スティーヴン・ゴットリーブに依頼して、
全体の調整、弦とフレットの交換などを行いました。
弦はナイルガットと銅巻き、フレットはシングルです。
弾き心地は大変良く、透明な音色で素直に良く鳴るリュートです。
飾り気のない清潔な外観と音色がマッチしています。
神経質なところもなく、おおらかで艶っぽく鳴るのはルビオなどにも似ていますね。
ギターをお弾きになる方でリュートとその音楽に真摯に興味のある方にお勧めしたい楽器です。
(ギターに比べると価格は大変安価です。)
カスタムメイドのハードケースが付属します。

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付録:ジュリアン・ブリームと使用リュートについて
今回出展のタイプのリュートは、ジュリアン・ブリームもそのキャリアの最後に弾いていました。
ジュリアンは初めはロンドンのチェンバロ製作家ゴフ作のリュートを弾いていました。
同じ製作家の作品3台を使い分けていたようです。

その後デイヴィッド・ルビオ作の楽器を長い間使います。

ゴフ作、ルビオ作どちらもブリッジサドルと金属フレットを持ち、
第1,第2コースがシングル、重量もそれなりにある「モダンリュート」でした。
80年代にブリームはより歴史的なタイプのリュートに持ち替えています。
サドルなし、ガットフレット、バスライダーのある10コース。より軽量で第1コースのみがシングルです。
ただし爪を使ったギター奏法でも大きな違和感なく弾けるように、寸法はやや大きめで、音の出方もしっかりしています。

ジュリアン・ブリームのこのリュートの演奏は以下のサイトで試聴できます。
http://www.youtube.com/watch?v=EehSTgGF6W8
今回の楽器はコース数は異なりますが、ジュリアンが最後に使っていたタイプのリュートとほぼ同じコンセプトの楽器と言えます。
ルビオ作のリュートについて詳しくは↓をクリック!
http://www.crane.gr.jp/~tarolute/edlute.htm
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