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クレーンホームページの 私的素敵頁 / Shiteki Suteki Pay のコーナー(#備忘録ともいふね)。
地味に好評なのがこの、めんどくさくて楽しい鉄カメラシリーズです。今回はカメラの改造のお話です。
■フィルムの端っこの穴まで写るカメラが欲しい
フィルムカメラの全盛期、遠足とか修学旅行で写真を撮ってはみたものの、「あれ?端っこが欠けて写ってない!」なんてことありませんでした?
私は何度もあります。一眼レフが買えない時代は、たいていレンジファインダー機かビューファインダー機なので、カメラから覗いたとおりに写ることはむしろ稀。
そんなとき、フィルムの端っこがもうちょとだけ広ければ .... それがフィルムフォーマット拡張の発想なのです。
で、今まで何台の拡張改造をしたのか自分でも覚えていないぐらい作業したのですが ... いちおう手元に写真データなどが残っているものを備忘録的にホームページに掲載しておくことにしました。いろんなメーカーのカメラが何台もあるので順次紹介。
まぁ、... コロナ騒動もまだしばらく続くようですから、気長に掲載すれば写真好きな方々にはひつまぶしになるでしょう(#あぁ、ひまつぶしのことね)。
誰にも頼まれていないのに勝手にシリーズ化します。拡張カメラを作ろうシリーズです。
OLYMPUS PEN EE-2 28mm F3.5 テッサー型レンズ。米谷 美久(まいたに よしひさ)氏の開発した世界に誇る歴史的名機。国民機ですな。
様々なPENシリーズのうち、EE-2やEE-3はとにかくシャッター押すだけで写る。マニュアル撮影もできる。
暗すぎた場合などは赤ベロが出てシャッターを押せない工夫もあり。ハーフ判だからいっぱい撮れる。言わずと知れた昭和のベストセラー。
EE-2は中古市場では100円ぐらいから売られており、整備されて状態の良いものは5000円ぐらいでしょうか。
PENシリーズは他にも何台か拡張改造したのですが、EEのシリーズは、たしか3台か4台か5台作ったように記憶しています。
作例の「車に注意」と「茶室の門塀」でノーマルのEE-2と改造機を比較してみました。 ゼンゼン違うでしょ?
改造作業はベース機を入手するところから始まります。
リコーオートハーフのようにスプロケット位置やガイドの構造によっては拡張できないモデルもたくさんあるので要注意。PENは改造しやすいです。
いったん分解して軽く整備して、汚れた光学系をクリーニングします(#基本機能はしっかりしておかないとね)。
マスキングを完璧にして切り子がカメラ内部に混入しないように注意。
そして金属用の平ヤスリでゴシゴシ削ります ... ひたすらゴシゴシ ....
今回は自動露出機能を無効にしています。ですから、シャッター速度は 1/30秒に固定して、あとは絞りを変えて撮ります。こうすることで赤ベロに邪魔されずにサクサク撮れます。初心者には自動露出は重宝しますが、ある程度撮れるようになると環境光に応じて露出の設定はおおむねわかるものです。かえって「暗いからシャッター押せないようにする」という機能は邪魔に感じることもあるのです。
マニュアル専用機に改造したので EE (自動露出)の表記を墨抜きして消します。同じく、リング周囲の自動撮影に関する刻印類も無効にするので見えないようにします。
削ったあとはフィルムをあてがってサイズ調整します。ガイドを磨いて送り幅の確認。そして切削部分を反射しにくい黒で塗装。
拡張カメラづくりを始めた頃はヤスリを周辺にガチガチあてて、傷がいくつも付いたものですが、近年は上達してめったにあてません。
間違っても、その奥にあるレンズにだけは触れないように ....
試写して自分で現像して、スキャンして撮影結果の状態を確認して必要に応じて修正作業。そうやって仕上げていきます。
フィルムは fomapn を使えばフィルム型番やコマ数や製品コード類の焼き込みが無いのでチェックには最適です。
パーフォレーションを含むフィルムのギリギリまでしっかり写ってます。完成!
左がPEN EE-2の改造1号機の試写。右側が PEN EE-2 改造2号機の試写例です。
【フィルムフォーマット】
一般のライカ判と呼ばれる35mmフィルム(135フィルム)は、幅がその名のとおり35mm。実際に写る面積はタテ・ヨコが 24x36mm 程度。ハーフ判は 24x18mm です。
そして今回の拡張改造機の場合は 34 x 17mm で写ります(幅をさらに拡張したこともあり、それは 34 x 18mm でした)。上下は0.5mmづつ残しました。
そう! そう! 宗兄弟! タテ方向に約1cmもお徳なサイズになりますた〜〜!
■つなげて作品にするもよし
ハーフ判の上下が拡張されるので、やたら縦長に写るところが面白いのですが、もちろん横向きで撮るもよし。
作例「天上の証明」や「ガラスのロビー」のように、
新たな発見として、複数コマを並べて写して組み写真とするのもまた楽しいことに気付きます。
フィルムの露光開口部の左右をギリギリまで削ればコマの境目がなくなるので合体します。35x35mmのスクエアフォーマットと錯覚します。
これも使い方次第では面白いと思います。
オリンパスPENの場合は、カド部分に少し光量落ちが見られるので、イメージサークルがだいぶ小さいのがわかります。
このテの改造ではフィルムの平面度がどうのこうのと意見されることがありますが、実際に撮ってみるとオリジナルとまったく変わりません。
固定焦点で3.2m位置にピントは固定ですが、私の場合はISO400のフィルムを入れて絞って使います。
開放F値が 3.5 であることも手伝って、思いのほか活発に撮影することができます。
● 今日のPAY
PENのシリーズは恐ろしく大量に現存します。ゼイタクいわなければ300円でも実用機が入手できます。3台で1000円のような売り方もあったりします。
しかし、私の場合は、今回はレンズが綺麗であること、外観も茶色く変色していない綺麗な個体という前提で探します。数が多いので選べますが根気良く気長に探します。
最近はヘタにいじられた個体が増えてきて、それらを見分けるのがむしろ厄介。
セレンとメーターが生きているかどうかもベース機選びでは重要なポイントです(マニュアル機として使うならセレンが死んでいてもOK)。
結果、使えるベース機を選ぶと少し値段も上がってしまいます。それでも、完成して持つ喜び、使う喜びという点では大満足です。
OLYMPUS PEN EE-2 ヤフオクにて 送料別 ¥2300
ちなみに、完成品は比較的最近のものが 7000円で売れました。新たなオーナーにはかなり喜んでもらえたようです。
● あとがき
古いフィルム時代のカメラは段ボール箱に詰めて投げ売りしている今日この頃。
根気良く探せば状態の良いものもまだまだありますし、予算が許せばお店が修理・整備した状態の良い個体も手に入ります。
フィルムもまだまだ各種売られており、インターネットで現像とスキャンとDVD焼きもやってくれます。自家現像もまた楽し。思えば恵まれた時代。
そんななか、手に入らないカメラ。売っていないカメラ。そういうのが欲しいのよ ... 。
こんなカメラがあったら面白いのになぁ?
そこで、自分で部品を集めて作る、もしくは既存のモデルを改造するという選択肢があるのです。
ウチは弦楽器工房ですが、金属加工の道具もいくつかありますし、木工用ツールが流用できるものもあります。
拡張カメラを作ろうシリーズ、次回は奇妙な巻上レバーを備える35mmカメラ Ricoh 35 DeLuxe の予定です。
記事:2020年6月1日 世間はコロナ騒動
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