● 喉頭蓋炎
東北関東大震災でドタバタして疲れが貯まっていたのか、3月中旬頃から体調を崩して喉頭蓋炎(コウトウガイエン)なる病気にかかり、1週間ほど入院しちゃいました。
しかし、喉(のど)の痛みなんて、しょっちゅう起こるわけで、まさか今回のように窒息死の二歩手前まで行くとは思っておらず、私も正直ビックリ。それで、今後の用心と今までの不摂生を反省すべく、備忘録としてコトの顛末を記録に残すことにしました。以下参考までに。
ついでに、症状が軽い段階で、こうしておけば入院せずにずんだかも、あるいは、早く退院できたかも、といったようなことも書いておくことにします。但し、以下の記事はあくまで私感です。医学的根拠はありませんので、念のため。
● この病気について
喉の奥にある弁(食べ物と空気を振り分ける役目)が細菌などによって腫れ上がる病気。なぁ〜〜んだ。それだけ?
私は花粉症もあるし、たまにはカゼもひくので、のどが痛いとか、微熱とか、そんなのは日常的だったのです。ちなみに、私の症状は、最初はわずかな喉の痛みのみでした。その後、数時間ごとに症状がだんだん重くなり...
・首のリンパ節が痛い(手で触れられないほど)
・とにかくのどが痛い!
・だえき(つば)を飲み込むとのどが痛い!
・うまくしゃべれない
・微熱がある
・口を大きく開けることが難しい(痛い)
まずは内科に行ってみました。カゼとあっさり診断され、注射を打たれて風邪薬を処方されました。しかし、その注射も風邪薬もまったく効きません。おかしいと思ったのは、ふだん飲んでいる頭痛薬が効かないこと(これは絶対おかしいと思った)。そして時間はいたずらに過ぎて、気がつけば物が食べられないどころか唾液も飲み込めず、睡眠もとれないほど痛みが増していったのでありました..... 。 コレ、極度な花粉症なのかな? それとも他の病気? 明日は耳鼻咽喉科へ行ってみよう..... 。 寝不足、加えて2日間ぐらい喉の痛みでマトモに食事をとっていないので、すでにフラフラ...
【急性喉頭蓋炎】
(きゅうせいこうとうがいえん、英: acute epiglottitis)は、喉頭蓋の細菌感染による上気道疾患である。重症例では急速に進行し、予期せぬ窒息を来たすことがある。なお、単に喉頭蓋炎と言った場合もほとんどはこの急性喉頭蓋炎を指す。感冒(カゼ)との鑑別が困難なことが多い。- Wikipediaより引用 -
このテの病気を扱うサイトも当然ながら数多く有るわけで、それらを照合すると、じつはとても怖い病気であることがわかってきます。
そもそも私自身、最初は完全にカゼだと思ってました。でも、急激に症状は悪化して痛みは極限に達し、たまりかねて近所の耳鼻咽喉科へ駆け込みました。私は過去の苦い経験から、病院や医者は一人を信用せず、必ず複数箇所を使う主義。今回2つの病院(耳鼻咽喉科)で診察を受けたところ、どのお医者さんも私の状態を見て異口同音に「こりゃイカン。急いだほうがいい!」。
え〜〜〜っ!?そんなタイヘンなことなの?
・発病からわずかな時間で急激に悪化するため、最悪の場合、半日で死に至ることもある。
・内科では発見が難しく、風邪か扁桃腺が腫れている、程度の判断が多い(内科医の診察ミスを巡って裁判になったこともある)。
・喉頭蓋は口を開けただけでは見ることが出来ず、奥にあるので耳鼻咽喉科でないと発見が難しい。
・風邪で喉が激しく痛んだら、耳鼻咽喉科の受診を。
近所の病院は小さい開業医ばかりなので、ファイバースコープのある病院は1つのみ。結局そのお医者さんに大学病院の紹介状を書いてもらって「いますぐ、この足で救急入院するように! 時を争う。」と指示を受けたのでした。大学へ電話をかけて救急扱いで手配してくださいました。私もとるものもとりあえず、自宅へ寄ることなく大学病院へタクシーで直行、そこでも手早くファイバースコープを鼻からグリグリ入れて状態を確認、気がつけばベッドの上で点滴を受けていました。
● 喉頭蓋炎のレントゲン写真
はい、このX線写真が私です。歯の治療痕がけっこうあります(笑)。喉頭蓋が腫れてふくらんでいる様子がわかりますね。この写真は大学病院に着いてすぐのレントゲンですが、じつはこのあと夜中にかけてさらに腫れが大きくなっていったのです。
● 喉頭蓋炎の治療は?
原則、点滴で1週間ぐらいかけて治療するものだそうです。入院中の診察でとある医師に尋ねてみたのです、腫れてふくらんで呼吸を妨げて苦しんでいるのなら切ったり、レーザで焼いたりとか手早くできないものでしょうか? 答えは「点滴以外の方法はありません」とのこと。そうです、この痛みと苦しみはその場で一気に解決しないのです。腫れがひかず呼吸が困難な場合は、のどを切開して呼吸させるそうです。
【薬】
飲み薬もあるようですが、原則は点滴で治療。点滴といってもどんな薬を使うのでしょうか? 基本は抗生物質でしょうね。私の受けた点滴を記憶を頼りに以下に挙げてみました。
・フルマリン:フロモキセフナトリウム/オキサセフェム系抗生物質。殺菌剤らしい....
・リンデロン:腫れを抑えるステロイド剤らしい(花粉症の特効薬でもある?)
・ビタミン類:2種類ほど見かけた
・ウィーンD:ブドウ糖やNa, K+, Ca など。食事の代わりでもある。
・ビーフリード:牛の手綱ぢゃないよ。ビタミンB1,糖, 電解液,アミノ酸など。これも食事の代わりでもある。
あと、点滴以外にも吸引用のネブライザーを一日6回ほど。
それなら、こういった点滴を始めればすぐに痛みもひくだろうって?
いえ、私の場合はそうでもなかったのです。
【禁止事項】
・発声禁止:しゃべっちゃダメ。 筆談用パネル(看護婦のSさんが描いてくれました)
意外にも「ささやき声」はとくに喉に悪いらしい。
・飲食禁止:とにかく喉を安静に保つ
・つばの飲み込み禁止:とにかく唾液は出す! 容器を枕元に常備
入院したその夜、言いつけを守っておとなしく点滴を受けていたので、喉の痛みはひきはじめ、ウトウトしてました。ところが明け方3時半頃、なんだかとても息苦しい。のどの奥に小さいめんたいこが詰まってるような感触。喉頭蓋は腫れてふくらむと柔らかく、身体の姿勢によってその形状も微妙にゆがむようです。重力には勝てないということでしょう。体をあおむけに寝るとどうなるか? 想像できます? その夜、喉頭蓋は縮まって小さくなるどころか、膨らむ感触がありました。ベッドで横になると「ウプッ!」と吐き気をもよおす始末。いわば、指をのどに突っ込んでオエッ!とくる感じです。こりゃイカン!死ぬ〜! 時計を見たら朝の3時半。いくらなんでも夜勤の看護師の皆さんたちを呼ぶのは迷惑だよなぁ.... でもなんか、このまま呼ばずに翌朝ベッドの上に冷たくなった弦楽器製作家がいるのも迷惑だよなぁ.... 。朝まで待つべきか? イマスグ呼ぶべきか? さんざん悩んで、ナースコール。看護婦さんが5人ぐらい処置室へ集結。脈をみたり酸素摂取率をみたりすれど私は落ち着かず苦しい.... ファイバースコープを鼻から入れるのですが、喉頭蓋がふくらんで喉を塞ぎかけているのでなかなか入らず、先端のカメラ部分をグイグイ押し込んでの撮影。痛い!痛い!痛い! ゲ〜!ゲ〜!と胃液だけを吐きつつ、涙を流しながらそれに耐える私... 拷問ですな(笑)。
ひとまず、まだ気道は確保できていて、呼吸もすぐには詰まらないということがわかり、スタッフの一人が医師に電話。朝4時です。お医者さんってたいへんな職業ですなぁ。すんませんなぁ。お医者さんが電話で状態を確認して最後に一言、「 I V使おう」..... たしかそう聞こえました。私は苦しいなかで目はかすみ、意識はうつろ..... 看護婦さんの一人が IVらしき注射器を手にして深刻な表情、周囲の看護婦さんたちもみんなその注射器に注目。まるで象を殺すような薬を今から投与する構え。
「そ、そんなアブナイ薬なのかい!!」
その薬、わずか20mgを点滴に混入。すると数分後..... 呼吸が急激に楽になりました。どうしたんでしょう!?
おそらく炎症を抑えるステロイド系の薬物なのでしょう。恐ろしく良く効きました。やっと一段落。私は病室に戻り、それでも横にはなれず、ベッドを立てたまま寄りかかって眠れぬ夜をウトウトと明かしたのでした... もはや、このさい、呼吸できるだけでもアリガタイ。
● 治療を受けるにあたり
象をも殺す?その薬が効をなしたのか、徐々に息苦しさや痛みはやわらいでいきました。どうやら峠は越えた模様。数日経過して気付いたのですが、入院した日は首のリンパ節の腫れが痛くて、喉に氷嚢を充分にあてらられず、しっかり冷やせなかったのが良くなかったようです。多少ガマンしてでも「炎症」なので冷やすのは鉄則なのでしょう。点滴を過信していた感がありました。
あと、ベッドを立てたまま(頭を起こした状態)で点滴を受けると喉まで薬が効きにくいように感じます。3日目以降は氷嚢をしっかり首にあて、ベッドを平たくしてひざを曲げて点滴を受けたところ、一気に腫れがひきました。あとはもう、数時間ごとにどんどん腫れが小さくなり、採血の結果も劇的に正常値へ近づいていったのです。
入院した日とその翌日までは、数え切れないぐらい何本も何種類も点滴を受けたのですが、あまり効果が認められず、私も医師も看護師さんたちも「おかしいなぁ...」と感じていました。しかし、こういった「ちゃんと冷やす」とか「薬を効くような姿勢」といった地道で些細なことが重要なのだと3日目以降〜退院までは思い知らされていったのです。
・ちゃんと冷やすべし
・点滴はベッドを平たく(ひざは立てて)
・鼻づまりは花粉症の薬は避け、こまめにかむ
● その後
4日目ぐらいで喉頭蓋の腫れは半分程度まで治まりました。写真の喉頭蓋の奥に見えるのが声帯です。まだ喉の奥でイガイガ感や違和感があります。点滴は入院中ずっと続くのでスタンドをゴロゴロひいて移動します。時々内出血して腕がかゆくなります。私も過去に何度も入院しましたが、近年は進んでいます。いちど点滴用の針とチューブを腕の血管に刺すと、テープで留めて退院まではそのまま。チューブ元にバルブがついていて、点滴はそこで脱着して行うしくみです。何度も針を抜き差しせず、患者への負担が少ないと。ちなみに、金属の針が腕(血管)に刺さっているわけではなく、柔らかく細いチューブが血管に刺さっています。そっかぁ、金属の針ぢゃないんだぁ..... 。
この病院、建物が古いらしく、地震の爪痕が至る所に見られました。タイルがはげ落ちたり、壁に亀裂があったり.... たいへんな時期に入院したものです。しかも今回は私のクレーンホームページで震災チャリティオークションを企画したものが、入院中に終了するので、ちょっと焦りました。落札された方はいずれも常連さんといいますか、協力的な方々であったので、助かりました。
入院して5日目で食事も点滴から流動食/重湯になりました。6日目は食事もおかゆ(全粥)へ昇進。発声も許可されました。診察では採血結果の経緯など含めて全体的な相談。そしてお医者さんいわく「はい!明日にでも退院!」
をぉ! そんな急に。いいのかな? まだ少し痛みも違和感もあるけど。あとで看護婦さんたちとも相談したところ明後日には11名が入院してくるとか。耳鼻咽喉科に入院している患者さんは思いのほか「めまい」が多いことに気付きました。喉頭蓋炎は私だけです。ともあれ、後が押しているなら出ましょう。そこそこ元気になったのでもういいでしょう。そういえば過去の入院でも新たな入院患者のためにベッドを空けるべく退院したことが多かったなぁ.... 。もう一日だけ点滴してちょうど1週間で退院することになりました。その最後の一日も成果が大きく、退院直前の診察でも腫れがさらにひいたことがスコープで確認されました。しばらくは自宅で養生。本調子に戻るまでは食事にきをつけると.....
・大声や長時間の発声はひかえる
・アルコールはひかえる
・炭酸飲料はひかえる
・タバコは禁止(元々私は吸いませんが)
・柑橘系はひかえる
・揚げ物はひかえる
・刺激物は避ける
たんにノドが痛いってのを甘くみてはイカン、というお話でした。
あと、ふだんから炎症はとにかく冷やす、といった習慣をつけておけば悪化せず入院することなく治まったかもしれません。
2011年3月23日夕方入院
御見舞の花束を撮影してヒマをつぶす
2011年3月31日午前11時退院
記事:2011.4.1