● さて、こちらはキットによるウクレレ製作コーナーです。入門者向けに製作過程の写真と説明を記載してあります。
楽器製作というとなんとなく難しくて面倒で材料とか工具について悩んでしまいがちですが、こういったキットから始めるということは弦楽器製作を手軽に楽しむ第一歩と私(鶴田)は考えており、楽器製作が未経験の皆さんにとって非常に優れた教材になると確信しています。事実このウクレレキットは小学校の工作教材に使われることもあるのです。但し、小学生にも作れるといって材料や設計がいい加減なキットではありません、ここでは全音社のキットを使っています、合板は一切使用せずマホガニーの単板をふんだんに使った本格モノなのです。楽器店で売られている高価なウクレレでも合板の楽器はあるのです。ひとつ、このコダワリのキットで弦楽器製作の世界の楽しさを味わっていただいたいっ!!
キットは特殊な工具を必要とせず、部品や木材もひととおり揃っているので一から手配する手間が省けます。寸法もおおむね加工済みですから失敗しにくいのです。もちろん好みで改造しても楽しい。塗装に凝ってみるのもまたウレシイ....このように利点が多いのもキットの魅力なのです。
備考:この記事は1997年に公開していたものです。全音社のこのキット製品は1999年頃にパッケージの色(紺色)や取り扱い説明書、そして指板の補正などの製品仕様が一部変更されました。それに伴い2000年と2002年7月にこのページの記事を部分更新しました。1997年当時はウクレレ製作のホームページなど世界中探しても皆無に等しかったせいか、だいぶ当サイトへの訪問者も多く、その後さまざまなウクレレ製作系のホームページが国内外に登場していますので、他の関連サイトも御参考にどうぞ。ここの記事は1995年に製作しながらアナログカメラ(フィルム)で撮影した写真をテレビ投影機に出力してパソコンに取り込んだ画像です、従って写真がキタナイものもあります。解像度も当時はこれがせいいっぱいだったのです(涙)。
全音社のこだわりを感じるでしょう。材料の名称がパッケージに貼ってあります。この写真では分かりづらいかもしれませんが、ボディの成形治具が入っていましてこれがすぐれものなのです。ネックもここまで加工してあるのは非常に良心的だと思います。接着剤が入っていますが、こだわりを追求される方はニカワでどうぞ....。あ、そうだ......もし、接着に失敗しても楽器にタオルを巻き、スチームアイロンでじわじわやるとはがすことができます。
あらかじめ全ての材料を付属の紙ヤスリで軽くこすっといたほうが良いでしょう。このくねったライニング材を4本(表面板側2本、裏板側2本)接着しますので、長さを合わせてカッターかノコギリでつめておきます。なおここから当分のあいだはボディの成形治具を付けたままにして作業を進めます。
接着剤を塗布し、洗濯バサミではさんで固定します(はみ出した接着剤は絞ったタオルなどでふき取っておいてください)。できれば多くの洗濯ばさみを使って固定します。写真のようにミニクランプを使ってもいいでしょう。今回はキットに忠実?に木工用ボンドを使っていますので乾燥まで5時間ぐらい置いておきます。(室内の温度や湿度にもよりますが...)乾くまでのあいだに別の部品の加工・接着にとりかかってください。
注釈:弦楽器の木材の接着には「タイトボンド」がオススメです。東急ハンズなどで販売されています。アメリカのフランクリン社の接着剤で世界中の弦楽器製作家も使っています。ニカワは画材店などで入手できますが棒状または玉ツブ状のものを多くみかけるでしょう。本格的な楽器製作ではウサギの骨と皮のニカワなどを使います(2002年説明文更新)。
拡大写真です。ギターやリュートなどを作って感じたことは、ここに写っているバネ式のクリップ(中央)が非常に重宝するということです。
力木の裏と板側にはそれぞれ番号をスタンプしてありますので間違えることは無いでしょう。:1996年現在。
注1:1998年現在のキットでは表面と裏の板、及び力木には線も数字も表記されていませんが、おおむね中央であれば問題ありません。このコーナーの以下の写真を参考にエンピツで線を書き込めばいいでしょう。
注2:1998年現在のキットでは力木の長さは全て同じになっています。適当にあてがってみて長いようであればカッターか彫刻刀で削って長さを調整しましょう。
裏板の場合と同様です。接着剤を塗って雑誌などで加重し、乾くのを待ちます。
ここではジャムのビンなどを載せて加重していますが、雑誌のほうがいいかもしれません。こうやって接着剤が乾くまでのあいだに表面板のほうを作業すればはかどりますね。
さあ、ある程度時間が経過して接着剤が乾くとこうなります。ライニング材が側面板からはみ出していれば、その部分を彫刻刀あるいはカッターで削ります。刃物の取り扱いが危ないと思われる方やお子さまは紙ヤスリでどうぞ(次の次の写真を参考に)。
エッジの面に平行に小刀をあてて削ります。(指を切るのは刃物の前方に支える手がある場合です。注意!)あらかじめ洗濯バサミではさむときにぎりぎりまで側面板のエッジに合わせれば小刀を使わなくてすみます。
こちらのほうが安全です。紙ヤスリも付属していますし。
これらを互いに接着します。接着剤を塗る前に「仮組み」して具合をみてください。場合によっては力木がボディからはみ出すこともありますので、そのようなときはカッターでつめてやります。だいたいここまでできたら3つのパーツを仮に重ねてみてください。なんとなくゆがんでいるようなら力木の長さを切り詰めて調整すればいいでしょう。ボディの成形治具は、まだ付けたまま作業するのですよ。
では、接着剤を塗布します。こんなにいっぱい付けなくてもいいんですけど。
雑誌や重たいもので加重して放置します。ギター月刊誌のバックナンバーがうってつけでしょう。インターネットマガジンも効果的です。邪魔にならない場所に置いておかないとぶつけて思わぬトラブルを生じます。
そうです、ラベル製作です。
これが乾燥後の写真です。まずまずの仕上がりでしょうかね? ちなみに力木はサイドの補強板にピッタリくっついていればベストです。
わたしはMacintosh(MacDrawPro)で描き、カラーのコピー紙にDeskWriterで印刷しました。そしてカッターで切り抜いて貼るだけですからね。ご覧の通りです。
注釈:1998年以降は私はもっぱら Illustrator
を楽器製作では使っています(2002年説明文更新)。
今回は当ホームページタイトルのCRANE(クレーン)をデザインしてみましたぁ〜〜〜っ!
裏板の場合も表面板と同様、接着剤を塗る前に「仮組み」して具合の悪い箇所は修正します。このあと接着剤を塗り、雑誌で加重して乾かします。
裏板の場合も表面板と同様です。ボディ成形用の治具は付けたままです。
接着したらボディのカーブに沿ってはみ出した部分を彫刻刀で削っていきます。木目の方向に気をつけて削りましょう。ここまできて、ようやくボディ成形用の治具が外れます。表面板のサウンドホールはマスキングテープでふさいでおいたほうがいいでしょう。
付属の紙ヤスリで充分ですが、何らかの木片に巻き付けて使うか、このような道具(サンディングブロック)を使ってもよいでしょう。ちなみにここの写真では新聞紙の上で作業していますが、これだと新聞のインクがウクレレのボディに付着することもありますので、上質紙の広告紙を敷いたほうがよいでしょう。
これにヤスリをかけて丸みを付けます。そのまえに、仮に糸巻き(ペグ)を取り付けてみました。
150番の紙ヤスリでネックの角を削ってなめらかにしていきます。ネックのヒールの部分は彫刻刀かノミでもっときつく削って細くしておいたほうがボデイとの接合面を小さくできるので、完成時によく鳴ります。
ダボをネックに接着し、ボディとネックを接着します。接着剤は一面に隙間無く塗ってください、そうしないとネックがはがれる原因になります。
乾いたらこうなります。楽器らしくなってきました。裏のヒールのはみ出た部分を削り取っておきます。
すでにフィンガーボードにフレットを打ってあります。12フレット分の長さを計ってみました。
接着剤をやや少なめに塗ってください。そして12フレットをボディとネックの継ぎ目に並ぶように置きます。これを輪ゴムかクランパで張り合わせて固定し、圧力をかけると接着剤がはみ出してきますので絞ったタオルなどで拭き取りましょう。あとは乾くのを待ちます。
上駒(ナット)と下駒とブリッジの各パーツです。ここで木ネジをご覧になって違和感を持たれる方もいらっしゃるでしょう。じつはこれはPL法を意識してのことなのです。弦を張ると、ある程度の張力が作用しますので下駒が外れてケガでもしたら製造者の責任を問われる場合があるからです。(ちなみに右側のダボはすでにネックとボディの接着で使用しました。)
接着剤を塗ってテープで固定して乾かします。その後、このように木ネジを埋め込みます。この部分は後から木片でふさいでやればよいでしょう。下駒の位置は下式を参考にしてください。実際には押さえたときの弦の張りの強さが微少に増加することによって弾いた音が高めになります。そのため、まえもってブリッジ位置は若干下げて接着(ウクレレだと2mm程度)したほうがいいのです....。
・理論値 ナットから12フレットまでの長さ = ブリッジから12フレットまでの長さ
・現 実 ナットから12フレットまでの長さ =< ブリッジから12フレットまでの長さ
弦楽器の正確なフレット位置を簡単にチェックするには次のような方法があります。ひとつの弦の開放ハーモニクス音と12フレット(1オクターブ上)音を比較すれば良いわけで、これをオクターブピッチといいます。オクターブピッチが正確に合っていれば次のような音になります。
12フレット位置のハーモニックス音 = 12フレットを押さえて弾いた音
参考:もし、楽器が完成し、弾いてみて調律がうまくいかないとか、ちゃんと調律したハズなのにコードを押さえると音程がおかしい.....などといく場合はたいていこの下駒の位置が適切でないことが原因です。下駒は絞ったタオルをかぶせておいて、スチームアイロンでジューッとやればはがすことができます。
基本的にはこれでほぼ完成なのです。糸巻き(ペグ)を取り付けて付属の弦を張ります。オリジナルの4弦目にはナイロン弦を張るのが普通です。私はギター調弦に近い Low G にして弾きます。
調弦は高い音から低い音まで順に A(1弦) E(2弦) C(3弦) G(4弦) です。4弦目にはギターのD(つまり巻弦の細いやつ)を使えば音域が広がります。ソロ向けですな。
余談ではありますが、このキットには塗料も付属する予定だったそうです。しかし、PL法の問題から同梱されていません。そういうことなら...と思って今回私は害の少ない水性塗料でチャレンジしてみました。学校とかで教材に使う場合などは安全のためこの「ワシン水溶性ニス」がよいでしょう。うすめ液は必ずしも必要ではありません、ハケは乾かないうちに水で洗えばよいのです。
注釈:ちなみにエコロジーへの配慮は世界中の弦楽器製作家でも意識が年々高まっており、ウオーターベース/水性塗料 などの塗料を用いる製作家が増えています(2002年説明文更新)。
側面が若干ケバだっていてもとりあえず塗装します。この1回目の塗装が乾いた後に、ヤスリをかけてやるとなめらかになります。この水溶性塗料のよいところは15分ぐらいで乾くことでしょうね。せっかちな方にはうってつけ?
手早くささーっと塗るのが基本です。塗りにくいときはうすめ液を少し加えればよいでしょう。1回塗ったら充分に乾かすことです!そしてヤスリをかけます。そしてまた塗っては乾かしヤスリかけ....これを繰り返せばよいのですが、あまり塗装が厚くなると楽器としての鳴りが悪くなりますからほどほどに。
付属の紙ヤスリは150番と240番です。あとは400番などを必要に応じてかけます。光沢仕上げを好まれる場合は800番以上の耐水ペーパで水研ぎしてコンパウンドで仕上げればよいでしょう。
いやあ、こんなもんですか? サウンドホールのまわりに口輪(ロゼッタ)の飾りがほしいところですね。
注釈:ヌネスやカマカのウクレレは多くの場合、口輪(ロゼッタ)がありませんので、このままでもモチロンOKであります(2002年説明文更新)。
● ここの記事は指板を調整して音程を正確に...という記事ですが、1999年以降の全音社のキットは補正がなされているので現在では読み飛ばしていただいて結構です。1997年〜1998年には当サイトへの訪問者からたくさんのお問い合わせをいただいたためにこうやって調整方法(対処法)を記事として掲載していたわけなんですよ....(ああ、懐かしい)。
これはなかなか良いキットですね。単板の材料がいいです!ぜひお薦めします!。ちょっと気になったのはフレットと弦長についてですかね?フレッチングを再検討したほうが良いかもしれません。私のは狂っていましたので2.5mm指板を切り詰めました(下記参照)。
やたら調弦しずらいとか、フレットを押さえて弾いた場合に音程がおかしいと思ったら修正してみてください。
すでに指板を接着していてもノコギリと彫刻刀で切り取ればよいでしょう。指板も家庭のスチームアイロンでじっくりスチームをかけながら温めれば、はがすことができます。
指板の補正
ウクレレは思ったよりチューニングはシビアなんですよね。糸巻きにご不満な方は楽器店で本格的なものが入手できます。トルク調整もコインでできるようになっており、スプリングワッシャにも工夫が見られます。
● ウクレレを弾こう!
タブ譜による曲集でスバラシイものをご紹介しましょう。1995年秋に出版されたものです。
(注記:1998年以降は様々なウクレレ独奏譜が出版されるようになりました)
・「ウクレレ・ソロの世界 Vol.1」(クラシックコレクション)津田昭治 2575円
・「ウクレレ・ソロの世界 Vol.2」(ポップスコレクション)津田昭治 2575円
この2冊はそれぞれCD準拠となっております。CDではステレオ録音で、左右にメロディと伴奏がなんとなく分かれて録音されていますので、練習にもいいですよ!。おすすめはVol.2に収録されている「サマータイム」など、ジャズのスタンダードナンバーですね。
あと、ソロの曲集としては豊富な楽譜(タブ譜つき)がうれしいこの一冊を挙げておきましょう。
「ウクレレ・ソロ 永遠のベストメロディー」1〜4巻 五十嵐有爾 1545円 東京音楽書院
そして、ウクレレ・ソロの草分け的な存在としてはハーブ・オオタ氏を忘れてはいけません。こちらのCD(なんと50枚以上をリリース)も聴いてみてください。ウクレレ入門書やビデオなども豊富です。おそらく、これらのCDを始めて耳にされる方々はウクレレに対する見方が一転すること請け合いです!
● どうですか? 弦楽器製作の楽しみをちょっとだけでも感じていただけたでしょうか? このキットは改造の楽しみ(可能性)もふんだんにありますね。弦の数を6弦にするとか、表面板をカエデにしてみるとか、装飾を凝ってみるとか、カッタウエイをつけるとか....... あなたなりのウクレレライフを楽しんでください。
1997年 Makoto Tsuruta / CRANE
◆ 製作期間 ◆ 95年12月31日〜96年1月2日 (3日間)
◆ 費 用 ◆ 全音楽譜出版社 ウクレレキット
◆ 記事の公開と更新
◆ 1997年7月、10月と1998年8月に説明文を更新。2000年3月、2002年7月更新。
◆ キットの入手法 ◆ 全国有名楽器店で入手可能。私は東京都内ではお茶の水「下倉楽器」さんで購入しました(1998年8月の時点で4800円でした。)。2002年7月に同「下倉楽器」にて5500円でした。