■ ピックアップハーネス交換
● 私はウクレレやマンドリンやスチール弦の楽器もリペアをやっていますが、その中から今回は私の独断と偏見でお気に入りの楽器について取り上げてみたいと思います。そのなかの一つが......ズバリ! アーチトップ! まあ、アーチトップといっても多くの種類とメーカーがあるわけでして、大きく分けてピックアップを持たないタイプとピックアップ付きのいわばエレキギターとがあります(ボディの厚さやサイズなどはひとまずおいといて...)。ここで取り上げるのは後者のGibson ES-150 でございます。どうしてES-175とかES-335とか、ましてES-165でも135でもなくて、なんで150なのよ? と思われるかもしれませんがあくまで個人的好みでありますから深く考えなくてもヨロシイです。ES-150は御覧のとおりじっつにシンプルにできていまして、たった?1個のピックアップと1組の音量・音質調整しか装備していません。このシンプルな構成がマル! ジタバタせんで黙って弾かんかい〜〜〜っ! といういさぎよさ?を覚えるのであります。今回はこのギターのピックアップから配線、ボリウム、トーン、出力ジャックに至るすべてのハーネス、つまりピックアップを除くボリウムポッド、トーンポッド、ジャック、コンデンサを交換する作業であります。作業自体は単純なもので、初級編ですが、今から電気弦楽器の世界に足を踏み入れてみようという方には興味深いかもしれません。えっ? この歳になっていまさらエレキ弾くかって? ノ〜! ノ〜! チッ! チッ! チッ!.........アーチトップは歳いってからが似合うのよ......。
ピックアップ(PU)は伝統の名器「P-90」であります、リプロダクトではなく当時(これだと1950年頃)のオリジナル。ハウリング対策でプレーヤ泣かせと思われているフルアコの電気ギターですが、私はほとんど生音かアンプシミュレータで弾くので余計なコトは考えずに楽しんでマス。シミュレータはリバーブのパラメータを............いかんっ! はやくも脱線気味....。
まずはピックアップカバーやテールピース、ボリウムのノブなどを外します。このとき注意すべきはピックアップの取り付け方向です。オリジナルのPUであればこの写真のように矢印のテープが張られていたりするようですが、ひとまずメモをとるかマーキングしておけばよいでしょう。2弦のポールピースが低いのも目安になります。PUカバーは石鹸皿タイプで、これも取り付け方向に上下があります。
ボリウムとトーンのノブは同じES-150でも時代によっていくつかの種類(形状)があります。テールピースへのアースラインと出力ジャックを外してズルズルと外へ引きずり出します。
ワッシャやビス類を紛失しないように......。それにしてもすごいホコリ......。ホコリは湿気を持ちやすく電器回路には敬遠したいところ....。
【実態配線図】
というわけで、実態配線図を書いてみました。もともと私は高校やその後の進学・就職後も電気関係でしたので製図もココロエがありますゆえ、ここで電気回路を描こうと思ったのですが御覧になっているみなさんには実態配線図のほうが実用的かな?と思いまして、あえてこちらを掲載しておきます。厳密にはジャックのアースをさらにリード線でテールピースまで導いてあります。全体的にGND(アース)を至るところに(しつこいぐらい)とってあり、当時のノイズ対策の苦労が伺えます...。ちなみに全てのGibsonオリジナルパーツはMADE IN USA と刻印されていました。
すでに弾いてみて可変抵抗器(電気ギター界ではなぜかポットと呼ぶ)にガリがきてきることは解っていたので接点復活剤も準備しておいたのですが、なにせ古い楽器ですから50年の経過を考えるとパーツごとケーブルもすべて交換したほうが賢いでしょう。そういうわけでパーツ店で同軸ケーブル(単芯だが3C-2VとかBNCではにゃい)他のパーツを手配しておきました。前記の実態配線図で使われているボリウムの抵抗値と特性、そしてコンデンサの値は鶴田の好みでスペックを選びなおしてみました。ボリウムはオリジナルはB特性でツマミを回転させていくと急激に音量が上がる(当時はそれが多かったようです)ため、これをゆるやかな増加で音量をコントロールできるようにA特性のカーブを持つものにしました。トーンも同様でA特性のカーブを持つものにしましたがこういった可変抵抗器は民生用のものはガリがきやすく耐久性が低いので本来は避けるべきです。よくUSA製がいいとか書かれている文献やホームページもあるようですが、私なら通信機器用の樹脂シールされたもの(日本製で秋葉原などで入手可能)を使いたいところです。今回はホームページ掲載向けにリーズナブルで入手しやすいコンバットの可変抵抗器を使っていますが、いずれ通信機器用に交換するつもりでいます。コンデンサはオリジナルはGRAY TIGERの0.02μF(マイクロファラッド)ですが値を大きくして音質変化の幅を広げました。ちなみに今回使ったコンデンサはオールドタイプのオレンジドロップ418Pを使っています。容量(μF)選択の目安は、0.022μFのように値が小さいと音質の変化はひかえめですが芯のしっかりしたメリハリのある音になります。逆に0.1μFのように値が大きなキャパシティの場合は音質変化の幅は広くなるかわりにマイルドでギラつかない音になります。
・同軸ケーブル(単芯):1m ムラウチ電器 60円
・可変抵抗器(ボリウム/通称ポット):500kΩ Aタイプ特性 400円
・可変抵抗器(トーン/通称ポット):250kΩ Aタイプ特性 400円
・ジャック:モノラルタイプ 250円
・コンデンサ(トーン回路用):HUMAN GEAR 0.047μF 1200円
これらをハンダ付けして組み上げつつあるのが次の写真です。ざっと30分もあればコンバート作業を終えることができるでしょう。ハンダの臭いが懐かしい....中学の頃にゲルマニウムラジオを作ったっけ(笑).......。そういえばLuxKITのPLLチューナとかアンプとか......あれこれ作ったなぁ......(歳はいくつじゃ?)。
さあ、ハーネスのコンバートの様子を手順を追って紹介しましょう。まずはピックアップですが、オリジナルはシールド被覆にはさんであるだけですが、今回はこれをヤスリでサビを落とし、ハンダ付けしてアースをとっています。ピックアップコイルからのリード線はなるべく短く切り詰めたいところですがグッとガマンして後世のために長めのままにしておきましょう......。左が処置前、右が作業中の写真です。
次に可変抵抗器ですが、安価で楽器店にて入手しやすいパーツです。ちょっと写真がピンボケ気味.....。 コンデンサのオリジナルは極性を有するもので、なんらかの意図があっての選定だったのかもしれません。決して悪くないオリジナルのGRAY TIGERですがコンデンサという電子部品自体が50年以上経過すれば劣化するため今後のことも考えると、いずれにせよ交換です。あとで時間があるときにこのGRAY TIGERもとっかえひっかえして使ってみようかとも思っていますが、好みによっては思い切ってトーンを外してしまうというのも一案です....。
はい、そして音の出口のジャックです。それにしてもシンプルな構造.....。マルチピックアップの場合は位相を変えたり組み合わせによってステレオ出力するのも面白いのですが、今回のES-150はシングルなので素直にいきましょう。
というわけで、ひつこいぐらいに写真を掲載してきましたが最終的にはこんなカンジです。あ〜〜、シンプル・イズ・ベスト!? fホールからオレンジドロップが顔をのぞかせていて、そう.....ちょいと傾けたときにチラリと見えるように装着するのが正しいのであります(笑)。
前記の実態配線図にもあるように、これぐらい単純な回路とパーツであればわざわざショップに長期間修理で預けることなく、プレーヤー自身が日曜日にちょいと作業できるかと思います。ご参考までに......。