CRANE 楽器ケースをつくろう! 
ヒストリカル? コフィン ケース
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 製作過程の解説-1

 

自作ケースもあれこれ作ってきたのですが、ここいらで昔ながらのスタイルを踏襲したヒストリカルなケースを目指そうではないですか。今回は19世紀ギター用のコフィンケースです。とはいっても1800年代初期から末期にわたって時代ごとのスタイル(サイズや部品や構造・形状など)の違いがあります。加えて当時のグレードによる内装や部品の違いも考えれば、非常におもしろいテーマといえましょう。まぁ、実際には「ヒストリカルなケースを作る」とうよりは「ヒストリカルなケースを目指す」というほうが正確です、けっこう妥協してます(笑)。今回は調査も兼ねているので、あれこれ調べたことを掲載してまとめ、それを今後のケース作りに反映させていきましょう。これを機会にケースの時代的傾向について調査・勉強できれば幸いなのであります。

コフィンケース自体はそれ以前の時代から多く製作されてきたわけですが今回は「19世紀前期頃」のケースを作るべくあれこれ資料を調べながらまいりたいと思います。部品関係はとくに調達が難しいところですが可能な限り近い素材や形状のものを手配します。

というわけで、まずは部品の手配。これには悩みました、だいたい当時そのままの部品というのは市販されておらず、それでも似通ったものを方々探して国内はもとよりドイツやアメリカ、スペイン、イギリスなどを探って入手しました。そう! マイナス木ネジも例外ではありません、金具の取り付けには不可欠ですしね。

 


【鍵】

最初の部品は鍵です。鍵を持たずフックのみのケースもありますが、たいていは横板に内装されるタイプの鍵を備えています。鍵穴には保護と装飾を兼ねたカバーが付いていて次の写真のような凝ったものもあります。これは19世紀前期のものでしょう。

 

次の例はしっかりできていてプレートというよりはカバード・タイプとでもいうべきでしょうか。大きな金属板がピンで固定されています。おおむねこういったスタイルの鍵は1700年代末期〜1800年代初期に多く見られるようです。このタイプの鍵のついたケースの場合はハンドルがフタの上部かまたは側面反対側に付くことになっています。

 

いちばん安価でシンプルなのが次のタイプです。ありがちですなぁ(笑)。実際、これは時代を問わず非常に多く見かけます。それでもマイナスネジ(場合によってはピン)で貼ってあるところに御注目。

 

というわけで今回は比較的よく似た鍵セットを入手しました。なんたってロック部分はもちろんですがカギ自体もカッコイイのであります。鍵穴保護・装飾プレートも含めてすべて真鍮パーツ。

 


【ハンドル】

そうです、次の悩みはハンドル。よく見かけるのはこのタイプ...... だけどこれは1800年代後期〜末期のスタイルなので今回は非採用。コフィンケースにはメーカーのラベルや刻印の残っているものもあり、19世紀末期から20世紀初頭にはコフィンケースの「復刻品」も作られていたようで、このタイプのハンドルを備えるケースは大量に残っており、ギターのボディサイズや内装材用などから判断して1900年前後のものを非常に多く見かけます。このハンドルを持つケースでは内装に紙を用いたものが多いといえます。

 

 

次のハンドルはおそらく1800年〜1830年頃かと思います。御覧のとおりじつにシンプルなデザイン。前記のハンドルもそうですが、古いケースではハンドル固定はボルトではなく割ピンでかしめてあるものも少なくありません、従って乱暴に扱うと外れて紛失しちゃうことも多かったわけです。ちなみに私が今まで入手したコフィンケースの1/4 ぐらいはハンドルが紛失しているか交換されていました。

 

探せばあるもんです。しかも以外と身近に......... これはどうですか? じつは日本家具の引き出しの取っ手です。今回はコレにしようかと思った(なかなか雰囲気がヨロシイ)のですが...... 強度的にちょっと心配。そこで、ほかにもあれこれ検討してみました。

 

はい、次はこれです、1850年〜1870年頃です。これは年代がわかりやすいのです(理由はヒミツ、今度ホッピー飲むときにつくねを献上した方だけに教えてあげましょう)。よく見ると固定軸の向きが外から内側に向かっていますね、固定金具は麦わら帽子のカタチをしておりマイナスネジ2個で固定されています。

 

 

今度のはちょっと微妙です。1850年頃でしょうか? パノルモにも使われていることがあります。これも固定金具は麦わら帽子のカタチ。ハンドルストップ機構が留め金についています、真鍮製です。よく似たタイプでストップの突起がハンドル側に付いているものをマーチン社も販売していました(1880年前後)。

 

他にも腐るほどコフィンケースの写真資料が蓄積してあるのですが、「コフィンケースちょ〜入門」コーナーになってしまいそうなのでこのくらいにして.....。今回は強度優先にしてハンドルが抜けないようにボルト固定。イケませんなぁ、妥協といいますか......... もっと似たパーツもあるかもしれませんね。

 

ハンドルはケースの顔ともいうべく、最も頻繁にユーザと接する部品ですから、悩ましいところです。モダンなハンドルをつけてしまうと恐ろしく不釣り合いに見えてしまうものです。


【留具:フック】

いかん! ついつい「ハンドル」でページを占領してしまいました。とっとと次ぎにまいりましょう。次のパーツは19世紀のケースでは一般的な留め具です。真鍮製の小さなヒートンと数字の「5」のようなフック(これもマイナス・スクリューで固定)から構成されます。フックはもっと厚いもの、あるいは板のように薄いものもあります。

 

割り箸を買うと中に爪楊枝(つまようじ)が入っていることがありますよね? 私はそれが大嫌いです(危なくてびっくりするじゃないか!)。 次のフックはまさしく、そんな「余計なお世話フック」であります。前例にオマケのツメが付いてるワケですが、だいたいこんなちっちゃなツメを使うことがあるのかぇ?

 

次のタイプもたまに見かけます。1800年前後のギターが入ったものが多いように思いますが例外もあるかもしれません。前例と比較して、板のバネ弾性を利用したもので比較的壊れにくく部品固定ピンも多いことから紛失されにくいようです。今まで見たこのタイプはほとんどが壊れず機能していました。

 

これは参考ですがフックが紛失しています。花形プレートがオシャレで私の好きなタイプです。

 

はい、そういうわけで今回は「余計なお世話フック」を採用!(笑)
固定ネジはプラスが付属していますがマイナス・スクリューに交換しましょう。フックに関してはほかにも似たような部品は現代でも広く販売されていますのでさほど入手には苦労しないでしょう。


【蝶番】

蝶番も様々なものがあります。開閉時の負荷でたいていはゆるんでいます(最初からゆるめてあるようなものも多い)。最初のこの例は非常によく見かけるもので、これはケースの外側に装着してありますが一般の家具のように内部に薄い蝶番を付けたものもあります。スクエアなケースと違って開閉軸が傾いているため取り付け角度が難しく、蝶番に関しては多くの種類の部品がみられます。昔の人も苦労したんでしょうなぁ。ちなみに内装に紙を貼ってある点に注目。

 

今回は平たい蝶番を使います。これは入手しやすいと思ったのですが板厚とネジの長さや太さ、素材などを見ているとなかなかピッタリのものが無くて、以外と探しましたよ。もちろん付属の真鍮プラスネジはマイナス・スクリューに置き換えて使います。

 


 

【構造】

ケースの構造については製作過程のなかで触れていきましょう。

 

 

つづく

 

 

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