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■ 016:Mr.Nunokawa作品集
■楽器名:BANJO-LELE, COCONUTS-LELE, GUITER, ZENON-01
■製作者:布川 慶(Kay Nunokawa)
【BANJO-LELE】
写真(全体像) 写真1 写真2 写真3 写真4 写真5 写真6
製作のきっかけは、もともとバンジョーの明るい音色が好きでしたが、本物に対してはプレッシャーを感じていました。しかしウクレレの事を調べていくうちに、バンジョーウクレレなるものがあることを知り、しかも1920年代から存在するれっきとした楽器であること、チューニングのできるタンバリンキットがHOSCOから販売されていることから、製作に踏み切りました。
まず写真などから、レイアウトを設計し、CADで各部品の図面を起こして、製作しました。スケール380ミリです。材料は身近に手に入るもので、ネックはラワンとアガチスの5ピース、指板は黒檀に、ヒノキでバインディング、リゾネータは100均のサラダボール等です。
インレイはこれまた100均で入手したアクセサリー用のトルコ石(樹脂製)の部品をスライスして、サイコロ風に仕上げました。肝心の音は、最初クラシックギター用の弦を張ったのですが、音の輪郭がはっきりせず、次にエレキギター弦に張り替えました。しかし、ウクレレというより、完全なバンジョーになってしまい、現在はダダリオのブラックナイロンLOW-Gセットででかい音量だし、かなりいい感じになりました。トップのテンションしだいで音色に変化を出せるなど、かなり楽しい楽器ができました。かわいらしいかんじで、娘用に仕上げました。
【鶴田より】
恐るべきヒャッキン....... タンバリンの流用が素晴らしい! タンバなウクレレ、名付けて丹波哲郎レレですなぁ.....(謎)。じつは私の加入している製作家のアーティクル「のみのみ-ML」の仲間内でも一度は百円均一の材料だけでウクレレ大会やってみようかという意見も出ていたのです。私の住む東京・多摩地区には至るところに映画ダイナソー....ぢゃなくてダイナブックでもなく、だいじそうでもなく「ダ●ソー」なるひゃっきんショップが進出しています。たまに寄るととんでもないものが100円だったりします。お店によって品揃えが違うのですが確かに木材を置いてある店舗も見かけますね。身近なものから楽器を作って楽しむ。しかもそれがウクレレだったりすると楽しさは倍増! 布川さんの製作されたこの楽器、堂々とした仕上がりですね。音色の調整もバンジョー系楽器の楽しいところ。娘さんはそんな頼もしいお父さんを見て成長されるのでしょうねぇ....(ほのぼのモード)。
【COCONUTS-LELE】
これは本当に偶然、というか、めぐり逢いでした。ある日、昆虫の大好きな9歳の息子と公園めぐりをしていて、草原を歩いていると、息子が偶然ココナッツの殻を見つけました。その瞬間、二人で顔を見合わせ、「これでウクレレをつくろう!」と思い立ちました。少し汚れていましたが、痛みはまったく無く、側面に空けられた飾りの穴は、そのままサウンドホールのかわりになりそうでした。
さて、デザインをおこし、CADで製図にはいります。ココナッツの直径が130ミリほどしかないので、バランスを考え、ヘッドは下に、弦はヘッドから裏通しにしました。また、デザイン的に機械的な糸巻きは似合わないので、木ぺグにしました。テーパーを手持ちの工作用リーマーに合わせたので、チューニングが結構シビアになってしまい、息子がチューニングするのは難しいようです。
トップはブラジリアンコアと言うのを、東急ハンズで見つけ、アーチトップにして、音量が期待できないので、裏面に圧電(ピエゾ)マイクをつけました。つまみは真鍮を旋盤で削りましたが、ちょっとミスマッチ。今後木製に変更しようと思います。スケール300ミリ、細いネック、完全なラウンドバックなどで、おとなは演奏しずらいですが、息子は大喜び。これでいいんです。
【鶴田より】
いんです! ウクレレはそれでいいんです! 天からの授かりモノ、材料を買いにいくまでもなく向こうからやってくるとは....これはヒャッキンより強力ですねぇ......。南洋の島国では今でもココナツやヤシの実などで弦楽器を作りますがここまで凝ったものはありませんね。ピックアップも面白いアイディアだと思います。サウンドホールとしての穴もオシャレです。ヒョウタンウクレレに並んでウクレレ界に「ココナツエレウケ」を新たなカテゴリーとして確立しましょう。将来息子さんはココナツレレ製作の大家として世界に名を轟かすのです。
【GUITAR】
これは初めて製作した楽器です。当初、夜中でも弾けるサイレントギターを計画していましたが、デザインするうちにだんだんとこり始めてしまい、写真のようになってしまいました。ボディーはパドゥーク(ホローボディー)、トップは染みがあるからと激安で入手した、ちょいフレームのメイプル、ネックもメイプルに花梨の指板、貝のインレイにトラスロッドも溶接で自作しました。
部品もなるべく自作すべくプリアンプの基盤から、つまみやスイッチ(カーステレオの流用品、押すと出て来るあれ)など、できるだけ自作しました。ボディーのくりぬきには大変苦労しましたが、それでもまだ重く、パドゥークの重量には閉口しています。しかし、サスティーンは素晴らしく、体にびんびん響きます。最大の難関は塗装でした。ペーパーがけで下地の着色を剥がすわ、パドゥークははじくはで、いまだに納得行きません。
しかし、世界にひとつだけのギターはその出来栄えを差し引いても、お気に入りの一本に仕上がました。現在はフロントピックアップは無視して、ナイロン弦を張ってブリッジ内臓のフィッシュマンピエゾで出力しています。
【鶴田より】
細部までコダワリがにじみ出ている力作ですね。色遣いも渋い! まるで英国のクラフツマンシップによる曲線と色合い、ノスタルジックな味わいすら覚えます。ロータス・エラン・ギターとして新たなカテゴリーを確立しましょう。ピエゾ出力となるとサイレントギターみたいになったのでしょうか、音が気になります。プリアンプの基盤から自作するとなると本格派。量産メーカーでは成し得ない細部までのワガママ仕様がちゃんとまとまっているところが素晴らしいと思います。
【ZENON-01】
ウクレレ製作のきっかけになったキットです。内容はすでにみなさんが紹介されているので、触れませんが、基礎の勉強という意味でも、入りやすい楽しいキットでした。トップを1.3ミリまで落とした効果か、輪郭のはっきりしたきれいな音がします。家族で買いに行ったこと、ブリッジぶっ飛び事件や、その後のウクレレ製作などにきっかけを与えてくれたことを考えると、思い出の一本として、大切ににしていきたいと思います。
【鶴田より】
そうなんです。クレーンホームページでも再三にわたって述べているようにZENONウクレレキットは製作入門者の登竜門であり、その得られる経験からしてもまさにバイブルと呼ぶにふさわしいといえましょう(全音社さん、ワシに何かくれ!)。
思えば1997年に「ウクレレ製作入門(キット編)」を公開して以来、訪問者をことごとく人の道から突き外し、製作の道へとそそのかしながら魅了しつづけてきたZENONウクレレキット.......(全音社さん、ワシに何かくれ!)。
私や布川さんがそうであるように、多くの方がZENONウクレレキットをきっかけに2本目、3本目にとりくみ、それはやがてオリジナルデザインの芽生えとスクラッチモデルという技術的向上をみるのです。 え? 1本作ったら懲りたって? まぁ、そんな方も秋の夜長にもう1本いかが?!
● 感想など
しばらくぶりに「自作弦楽器自慢大会」に寄稿がありまして新しい仲間を御紹介しました。布川さんのユニークで個性的なこれらの作風に影響される方も多いことでしょう。最近の傾向として、当クレーンにお寄せいただくメールの内容が一層濃く、かつ多様化しているような気がします。しかもビギナーと自称される方々も独自のノウハウをもっておられたりして非常にやりとりが楽しいです。つい先週にも女性の方から昔のギターの糸巻きの補修と調整、ウクレレのサドルの交換で経験したことなどをメールでいただきましたが、立派な対処をされてましたよ(御婦人方の熱心なことも特筆すべき傾向でしょう)。また、数日前にもテナーウクレレのオリジナルモデルの仕様についての相談メールがあったり、あるいは国内だけでなく海外からも濃い質問が届いたりと、寄せられるメールの数自体も確実に増えています。みなさん熱心ですねぇ......。じつは最近のメールの増加でまじめに返事を書いているといつのまにか時間は過ぎて私自分のサイトの更新がとどこおり気味だったりします......(^_^)
今年(2005年)はそんなかんだの理由やら、過去10年間の蓄積資料の整理やら、企業への技術供与やら、工房の拡充計画なども重なって自身の新作楽器が作れずにいます。当分は新作情報などはクレーンホームページに掲載できずにいますので御理解ください。ちょっと忙しいモード....。
さて、なんだかんだいいながらも引き続き皆様の投稿をお待ちしています。
技量を競うもよし、ジョークに走るもよし、思い込みとコダワリで勝負するもまたよし!
そろそろ正統派マーチンコピーとかトーレス忠実コピー.... なぁ〜〜〜んていう方向の投稿もいいかもしれませんねぇ?