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■ 007:三野勉稔 さん (東京)・・・「バンドリン」
■楽器:バンドリン(ブラジルのマンドリン)
■製作者:三野勉稔
■仕様:
TOP : Sitka Spruce Grade-AAA
SIDE: Birdseye Maple
BACK: Birdseye Maple
NECK: Mahogany/Ebony 5ply
Rose: Traditional Bandolim Style
ScaleLength: 355mm
FingerBoard: Ebony(30mm:0-flet/40mm:12-flet)
MachineHead: Shaller MG-3(A-Type Gold)
TailPiece : Calace Classic Style
■コメント:
初めての楽器製作で取り組んだバンドリン。ボールバックのイタリアンスタイルのマンドリンも魅力ですが、フラットボディの持つ独特なレゾナンスと大きな表面板から生み出される太い音が再現できれば・・・っと思い切って挑戦してみました。
● 写真2:Modified Classical Style Bracing
バンドリンとは、ブラジルで用いられるマンドリンの事で、主にCHORO:ショーロ(音楽の1ジャンル)でソロ楽器として用いられるマンドリンです。日本では余り馴染みが無い楽器ですが、ブラジルでは100年以上の歴史を持つトラディショナルな楽器です。ショーロではいかに楽器を泣かせるかが勝負になります(ショーロの語源、chorar:ショラールとはポルトガル語で”泣く”の意)。このため、ブルーグラス等に用いられる太いゲージの絃や、クラシック・マンドリンの様に強いテンションの楽器は敬遠されます。また、曲を通してソロで奏でられることが多いため、ある程度の音量と音の太さが求められます。
● 写真3:ネックとヘッドのジョイント部
音量及び、音の太さは通常のマンドリンより大きな表面板を持つバンドリンでは実現が比較的容易です。ただ、今回、推奨絃をゲージの細いノーマルテンションのマキシマ:MAXIMAを想定し、ローテンションでのセットアップが必要とされるため、絃による表面板のドライブ能力を考え、表面板の厚さを2.3(低音側)mm〜2.6mm(高音側)と若干薄く仕上げてあります。内部のブレイシング構造はモダン・クラシックマンドリンを参考にしましたが、バンドリンは表面板が大きく、低音が響きすぎてしまうのを防ぐために、今回はファン構造を取り入れ音を引き締める様に工夫しました。
更に、ボディの厚みをテールピース側で65mm、ネックジョイント部で40mmと部分的に薄くして内容積を減らす事でブーミーになることを抑えています。
尚、スケール長は通常のモダン・クラシックマンドリン(345mm)より長い(355mm)を採用。バンドリンの形状は製作者により微妙に異なり、スタンダードと呼ばれるスタイルはありません。今回はブラジル、サン・パウロに工房を構えるJoao
Jose(ジョアン・ジョゼ)の1995年のモデル(ショーロクラブの秋岡欧さん所有)を参考に製作しました。また、ネックは経年変化による狂いを考慮し、ホンジュラス・マホガニーとエボニーをラミネイトした5プライ構造を採用。更にネックとヘッドのジョイントはクラシックギターで採用されることの多かったトラディショナルなスタイルを採用しています。
● 写真4:ロゼッタの製作1
● 写真5:ロゼッタの製作2
● 感想
2001年の絃楽器フェア出展の為に、最後はかなりの急ぎ働きになってしまい、細かい詰めも甘く、調整不足という中途半端な状態での展示となってしまいましたが、フラット系マンドリンの音を皆さんに紹介することが出来ました。ブースにお立ちより頂いた皆様からも様々なご意見、ご感想をお伺いすることが出来、有意義な2日間を過ごすことが出来ました。肝心な音作りに関しては、バンドリンの音の再現には成功したと思っています。もう少し音が暴れてしまうかと思ったのですが、思っていたよりシマっていて使い易い音です。逆に低音絃はもう少しふくよかでも良かったか・・・と考えていますので、次回はボディ体積を若干増やすなど、色々試してみようと思っています。
● 反省点
初めての楽器製作ということで、見よう見真似の部分も多く、作ったその場から反省点が出てくる等、色々とトラブルはあったものの良い製作資料になったのではないかと思っています。木工技術、楽器としての構造等、まだまだ学ばなければならないことは沢山ありますが、これからも地道に頑張っていくつもりです。
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御感想、お問い合わせ先:三野勉稔 mitsuno@ua.airnet.ne.jp
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ホームページ: MusicSalon/Workshop -WANDERLUST-
【Webmasterより】
出ました! かの「M野さん」でございます。構造といい、材料といい、音作りといい、スタイル全体にコダワリがにじみ出ています。なんたってロゼッタもコツコツ地道に作っちゃうし、ネックもエボニーラミネイトの5プライ構造! 作りだけ見てても泣けますなぁ、こりゃ。はじめての製作楽器とは思えないぐらい私も驚きました。ショーロはクラシックギター界の皆さんにはバリオスなどがよく知られていますが、バンドリンとポルトガルギターはスチールの複絃というまた別の独特な(ポルトな)世界なんですね。
三野さんのホームページはマンドリン系ではよく知られるところですが、まだ御覧になっていない方はぜび上記URLへアクセスされたし! ブックマーク!